第三十二話:更なる依頼2
※今回、短めです。
「ホイホイ依頼を引き受けるのはいいが、少しは危機感を持て」
夕方。時計店が閉店した後で私と琥珀は依頼主が待っているという場所に向かうことにした。その道中、唐突に琥珀がそんなことをいい出した。危機感?魔術師の仕事が危険な仕事であることは理解しているつもりだ。そんなに油断しているように見えるのだろうか。琥珀が発した言葉の意図を計りかねて、私は思わず小首を傾げる。すると、琥珀はこれみよがしに盛大な溜息を吐き出した。
「あの一戦で間違いなくお前は九条家に目をつけられている」
「まぁ……そうだろうね」
「そうだろうねってお前な……」
「根本的な部分で相容れない以上、遅かれ早かれ私と九条真琴は対立してたと思うよ」
「それはそうだが……」
今日の琥珀はなんだか歯切れが悪い。私を心配してくれているのだろう。
「それに、あれだけの力の持ち主で、なおかつ強欲な当主なんだとしたら、有り得るかもしれないって思ったの。だから彼と接点を持つのことはなにも、悪いことばかりじゃないと思って」
「有り得る、とはなんの話だ」
「九条真琴が兄貴の死に関わっているかもしれないってこと」
私がそういえば、琥珀は小さな猫の目を限界まで大きく広げた。どうやら、私の発言に驚いているようだ。
まさか私がそんなことを考えているとは想像もしていなかったに違いない。
「……確かに可能性がないとはいえない。だが、危険を承知で調べるつもりか」
「最初に九条真琴が怪しいっていったのは琥珀じゃない。反対なの?」
そう問いかけると、琥珀は首を左右に振った。
「まさか。お前は暁人の家族で、真実を知る権利がある。暁人の死は謎に包まれたままだからな。それに」
「それに?」
「お前は私の唯一の主だ。とことん付き合おう」
にっと快活な笑みを浮かべた琥珀を見ながら、目線を合わせるためにしゃがみ込む。
「ありがとう……琥珀」
精一杯の謝意を込めてそういいながら、私は琥珀の頭を撫でたのだった。
※次回更新は明日になります。
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