第二十五話:人と妖が住まう村5
※続きです。
「なにが目的だ?」
臨戦態勢のまま、琥珀が唸るように問う。
「琥珀か。良かったな。新たな主に恵まれて。最も、主が弱い魔術師じゃ、また活動ができたとしても強力な妖であるお前にとっては宝の持ち腐れだろうが」
「質問に答えろ」
「まぁ、いい。話したところでなにもできないだろうから話して聞かせてやる。この村は土地神の力を失い、危機に瀕している。ここまで溝が広がってしまった以上、和解するのは難しいだろう。元々はかつて人間がこの地に住まう妖を助けたことで繁栄した村だ。その所有権は人間に渡るべきだろう」
九条がにやりと不気味な笑みを見せる。
琥珀や未玖さんから聞いていた情報も相まって、彼の真意が読めた気がした。
「ツキミ様は近い内に力を失い、姿を消す。そのタイミングであなたが人間側につき、妖を討伐すれば人間はこの土地を手に入れることができ、あなたは多大な魔力を得ることができる」
私の言葉に九条はほぅ、と感心したように呟いた。しかし、その顔には依然、余裕を伺わせる不敵な笑みを浮かべていた。
「……あなたのやり方は許容できません。あなたの好きにはさせませんよ」
真っ直ぐに彼を見つめながらそういえば、九条は私を小馬鹿にするように鼻で笑った。
「はっ。弱いお前になにができる」
「やってみなくちゃ分からない」
「まぁ、せいぜい頑張るんだな」
それだけいい残し、九条は音もなく姿を消した。
九条真琴は姿を消した後、私は人間の領地に向かった。
人間側の長は田端新三という、最初に出会った中年の男性だった。
「俺達人間は、ずっと妖と共存してきた。でも、ツキミ様の力が失われ今じゃ食うのにも困る毎日だ。覇権争いが生まれても仕方ないだろう」
「でも、争いを起こさずにすめばそれに越したことはない?」
「それは……」
田端さんの表情が曇る。どうやら、人間達もむやみに争いを引き起こしたい訳ではないようだ。
「俺達だって、戦争を起こしたい訳じゃない。だけど、長として民は守らなきゃならない。万が一、戦争になれば戦わざるを得なくなる」
苦悩は見せつつも、田端さんは強い口調ではっきりとそう告げる。どうやら、事はかなり深刻のようだ。「仲裁」ではなく、「解決」すること以外にこの村の者達が穏やかに暮らす術はないのだから。
※ギルド任務編、もう少し続きます。
次回更新は明日です。
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