久しぶりの自由時間
「静かだなー…でも……」
オーリスはぐっと縮まり込む。
そして…
「最高かよ!!!!」
両の手の拳を高らかに点に向け叫ぶ。
そして、椅子に座り1枚1枚ページをめくりながらオーリスは自由時間を満喫する。
ロイス領には魔族はオーリス1人。
誰かに何かを頼まれるわけでもなく、仕事をする必要もなく、文句も言われず無駄な時間を貪りつくし、かと言って自分から何かをしようなんてやる気も起こる訳でもないオーリスはそれでも幸せを噛み締める!
「コレだよ、コレ!俺がしたかったのはコレなんだ!!」
こんなにのんびり贅沢な時間を過ごすのはいつぶりだろうか。
「数年このまま俺をほっといてくれないかなー…切実に」
オーリスがダラダラ過ごしているこの時、密かに運ばれている荷物の中にさらに静かにひっそりと何者かが潜みロイス領に侵入する。
「よし。侵入は成功だ」
「あぁ、そうみたいだな」
「この荷物の量はなんだ?食糧?コレは…酒?」
「こっちのは玉???魔族の考えることは理解できないわ」
「しっ!…静かに」
外の様子を伺う侵入者。
「荷物は後いくつだ」
「はっ、コレと同じ量が20ほど残っております」
「迅速に運び準備がすみ次第、速やかに立ち去る様、皆に伝えておけ」
「はっ」
「……」
外での話し声が消えてから数時間。
ポツ…ポツポツ……。
ザーーーッ!!
荷物を運ぶような音が消え、雨と風の音がそれ以外の全ての音をかき消す。
いまが好機と潜伏者達は動き出す。
ガコッ
「この雨は神の意志なのかな」
「いいから行くぞ。フードを被れ」
「この命を捨ててでも必ず魔王をこの手で…」
「ラライア様の為、エルアルディ聖王国の為、そして我々の未来の為に」
4つの人影が音を立てずに素早くオーリスがだらける部屋を目指し、最短、最速で突き進む。
「しかし、本当に気配が何一つない」
「情報屋の言う通りか」
「罠って可能性は?」
「それでも向かうしかない。周囲の警戒は怠るなよ」
「わかってるって」
路地を走り抜け、屋根を駆け、塀を飛び越え、辿り着いく。
「これが魔王城か…」
「さすがに風格あるな」
「ここまできてビビってんじゃないわよ!」
ピカッ!
ゴロゴロッ!
周囲の雨と風は更に勢いを増し、落雷まで鳴り始めていた。
4人は扉を開けゆっくりと城に侵入する。
「こんな堂々と侵入していいのか?」
「ここまできたら何処から侵入しても一緒でしょ」
「確かに…しかし、でけー」
「静かに。周囲を警戒しろ」
「…すまない」
「魔王ってどこにいんだよ…」
「知らないわよ」
階段を登りゆっくり部屋の扉を開け中を1つ1つ確認する。
「膨大な魔力の塊みたいなのが奥にいるな…」
侵入者の手足が勝手に震えだす。
「震えが止まらない…」
「気にするな、俺もだ」
「私も」
「同じく…」
侵入者は意を決して扉を開けると一気に目標に向かって駆け出す。
「覚悟を決めろ。先手必勝…行くぞ!」
正面の椅子に座る影に短剣を投げ込み、剣で斬りつけ、槍を突き刺す。
2人が影から離れるとその場に火柱が渦を巻いた。
「やったか!?」
椅子は黒焦げになり消えた。
「そっちの手応えは?」
「まったく」
「こちらも無かった」
「なんですか突然。街に誰も居ないからって強盗ですか?やりたい放題ですか?こっちは何もしないでいたいのに何しに来たんですか?」
「こいつが魔王オーリス・ロイスか…ヤバいな…」
「気をつけろ他にも誰かいるかもしれない!」
真っ赤に充血した瞳で人間を見下ろすオーリス。
「はい、可愛い子は危険だからさよーなら!」
後方にいた1人の姿が一瞬で消えた。
「おい!勝手に消すな!」
「さすがに見殺しには出来ないからね!」
「いや…殺す気とかないない」
「リアンに何をした…。俺の仲間をどこにやった!!」
侵入者の男が大声を上げオーリスに斬りかかる。
「危ないって」
振り下ろされた剣を直接掴み握りつぶす。
「…」
潰せなかった。
握り潰すどころかオーリスの掌に浅くではあったが切り傷がつけられ血が滴る。
「へー、まじか」
オーリスの瞳孔がフワッと広がる。
「おいおいマジかよ…魔を払う聖者の剣に触れてあの傷程度って…」
「でも、相手を切る事はできた」
「リアンはどうする?」
「アイツも賢者の端くれ、そう簡単にはやられてないはず。今は目の前の相手に集中しよう」
「わかった…援護は任せろ」
「こらこら、勝手に話進めないでくれる?」
突然、短剣がオーリスの頭上から襲いかかる。
しかし、短剣はオーリスに触れる事なく吸い込まれた。
「溶けた!?」
「いや、消えた!気をつけろ!」
「なんだあれは!?」
「ガス?いや、影だ!辺な影が魔王の周りを守っているのか!?」
「はい!君もさよなら!」
また1人、侵入者の姿が消える。
「またか!?」
「クソッなんだよコイツら!」
「ちなみに、2人はどこへ?」
「さー?」
「おいおい…リア。さーって。勝手に出てきて勝手なことして知りませんじゃ俺が困るんだけど…」
「分からないものは分からないは!諦めなさい人間、ちょっと遠くに飛ばしただけだから死んではいないはず!多分数キロ圏内のどこかに居るはずよ!」
「魔王の手先がこんなにやっかいなんて聞いてないぞ」
「え?魔王の手先って…」
少しリアは凹む。
「私、帰るわ…」
「お、おう…」
リアはふらふらしながら窓を開け嵐の中に消えた。
「あいつ何しに出てきたんだよ…!まさか出番が少なかったから…ってそんな訳ないか。さて残り2人。コレからどうするんだ?殺るなら殺りあって構わないけど個人的に殺り合うとかそんな不毛な事はしたくないんだけど」
「仲間が殺られたとは言え、我々の使命は魔王オーリスの抹殺」
「だから殺ってねーよ!」
「信じられるか!」
「まぁ…そうか」
「どうする…」
「リアンとポールセンを助けに行くか?」
「しかし、相手が魔王だけのこのチャンス、2度あるかどうか…」
「おい!2人を見捨てるのか!?」
「居場所がわからないのにどこを探しに行けと」
「確かに…けど、後方支援無しはキツくないか…」
「ご相談中悪いけどその2人の居場所が分かればここから消えてくれたりします?」
「居場所?やはり知っているのか!!」
「いや、だからもし!もしだよ!もし居場所教えたら帰ってくれるのかなって!!」
「教えてくれるのか?」
「…罠かもしてないぞ。むしろ罠じゃないか?」
「聞こえてるけど、罠じゃないから安心してくれ」
「2人はどこだ」
「ちょっと待て」
オーリスは遠くを探る。
「いたいた」
「いたのか?」
「問題なく無事だ。ここから北北西に4キロ行ったとかかな?廃墟になった村にいるぞ。ちなみにあそこら辺はアンデット族がよく徘徊するから早く行かないと1人で相手するにはきついぞ。もう1人もその近くで何かと戦闘中みたいだ」
「くそっ」
「どうする!?マクスター!!」
「…2人を救出に行くに決まってんだろ!リアンみたいな信者がなんて言うか知らないが私は神より仲間を選ぶ!」
「また出たよ、神様。場所は教えたから早く城から出てってくれ。俺は寝たい…。久々に読書したら寝る事忘れてさ。それじゃ侵入者さん方、おやすみなさい」
オーリスは2人の間を通り抜ける。
侵入者2人はオーリスが通り抜けるまで指ひとつ動かす事は出来ず通り過ぎて初めて自分の真横を魔王が横切った事実を理解すると汗が一気に身体中から噴き出した。
お久しぶりです。
そろそろ仕事辞めようか真剣に悩み中です。
嘘つきな猫です。
これからオーリス達は急展開して行く予定なので宜しくお願いします!
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