ロイス領陥落
お久しぶりですよ。
「今が好機!魔族どもの群勢が引き始めたぞ!」
ロイス領を守っていた群勢が素早く引いていく。
「マルダ様!今が攻め時です!」
「何かおかしい…」
「マルダ様?」
作戦を立てている後方で陣取っていた誰もが歓喜し鼻息を荒くしている中、マルダだけは違った。
マルダは額に手を当て状況を整理し始め答えを探す。
何かスッキリとしない違和感の正体を。
罠?いや、こちらが劣勢だった事は確か。悔しいがそれは事実。そんな自軍有利な状況で罠を仕掛けるはずがない。それならなぜ魔族どもは引いた?しかも後退ではなく撤退とも言える引きの早さ。考えられるのは2つ。
我々を誘っているか、魔族側に何らかの問題が生じたかのどちらか。
どちらだ…。
この選択は外せない。
最大のチャンスにして最大のミスとなる場面。
判断を誤れば全滅もあり得るのだから。
罠ならばこちらの軍はほぼ壊滅。
しかし、ここにきて唯一の勝利への道でもある。
千載一遇のチャンス。
これを逃しては負けはあっても勝ちはない。
「大将はいるか?」
「無礼者!マルダ様になんて口の利き方だ!」
「はい、はい」
雇われ傭兵アルベルト・ノーズが耳穴をほじりながら返事をする。
「こいつの事はきにするな。昔からこういう奴だ。それよりアルベルトお前がここにいるという事はさっきの魔族は退治したみたいだな」
「いや、殺されかけたさ。けれど突然引いてくれたおかげでこうしてまだ生き延びられた。仲間たちもな」
あの魔族も引いたのか。
私の首を持っていくと宣言したにもかかわらず。
やはり何かおかしい。
「アルベルト。その魔族は何か言っていなかったか?」
「あの殺戮魔族がか?」
「そうだ」
「いやー、こっちも命がけだったから相手の話を聞いていられるほど余裕なかったからな」
「そうか」
「ただ…あいつの上にはハミロンって主人がいるとは言ってたな」
「ハミロン?」
「まてよ!あいつが引く間際確かに何か言った」
「なんだ!なんて言ったんだ!」
マルダはアルベルトの襟首を掴み揺すった。
「まてまて!今思いだすから!確か…すぐに。そう!すぐにと言って引いていった」
「すぐにか…」
マルダの答えに辿り着くためのヒントにはならなかった。
マルダが悩んでいる中、人間達はロイス領への進軍準備が整える。
「マルダ様、魔族領内に入る準備が出来ました!いつでも合図を!」
「迷っていても仕方ない突撃だ!魔族を殲滅しろ!」
ブォ〜ォ〜。
マルダの号令は笛の音として最前線の兵達に伝わった。
「進め!進めーっ!!」
ロイス領内を囲む壁を爆破、粉砕し大穴を開け街中に人間達が雪崩れ込んでいく。
全速力で突入した兵達が徐々にその足を動かすのやめ辺りを見回す。
「…誰もいない?」
「………」
「魔族どもはどこに消えた!」
「慌てるなお前ら!警戒を怠らず陣を組みつつ探せ!1匹たりとも魔族を逃すなよ!見つけ次第殺せ!子供であっても奴らに慈悲なんて与えるな!」
人間達は家一軒一軒慎重に探し回ったが子供1人見つけることはできなかった。
「マルダ様!領内を探して回ってはいますが魔族はどこにも…」
「そうか。面倒な仕事が1つ減って助かるが…何万もいたであろう魔族はどこに消えた」
「街中以外も捜索しますか?」
「いや、藪蛇が出てきたらこちらの被害がどれ程になるかわからない。周りの捜索はアイツらに任せておけ」
「はっ!」
マルダ軍は気持ち悪いくらいあっさりとオーリー領を占領した。
ように見えた。
「いたぞ!魔族が1人いたぞ!」
マルダ軍が中央広場に集まりだす。
「あー…疲れた…」
ボロボロな服を着た魔族が1人兵達に向かってゆっくりと歩き向かって行く。
「なんだこいつ!?」
魔族は群がる人間達なんて気にもせず進む。
兵達は武器を構えたまま向かってくる魔族から距離を取る。
どっかの誰かが杖を掲げ海を割ったように兵達が魔族に道を開けた。
「久々に来たけどここってこんなに静かだったかな?それはどうでもいいけど、オーリス君居るかな…?」
魔族はオーリスの城を目指しひたすら歩く。
歩いて…あれ?
休んだ。
「疲れたー…あともう少し…」
また歩き始め、歩いて…。
また休む。
珍しいほど体力がない魔族なようだ。
「なんだ!?我々を無視して休みながら歩いているだと!?」
「馬鹿にしやがって!俺様がぶっ殺してやる!」
1人の兵士が単独で大きな斧を振りかぶり魔族に振り下ろす…まではいかなかった。
振り下ろす前に人間と斧は煙をあげながらドロドロに溶けて地面に広がった。
「消えた…のか?」
「いや!地面に何か…まさかっ!?溶けたのか!?」
「魔族!何をした!」
「…もう少しで。頑張れ自分…」
魔族には人間の声は届いていなかった。
「あの魔族には近づくな!得体の知れない魔法か呪いか何か我々の知らない力を使ってくるぞ!」
「弓だ!それか離れて魔法を放て!」
盾兵が地面に盾を突き立てしゃがみ込むとその後ろに隠れるように弓兵が魔族に狙いを定め矢を放った。
「ん…。煩わしいなぁ…やっちゃって」
「…」
「あ゛ぁー!」
「なんだっ!?どうした!?」
弓兵が次々と溶けて消えていく。
「なんだ!?どういう事っ!」
兵士達は混乱した。
さっきまで居た隣の仲間が数秒後には溶けてしまっているのだから。
いつ自分が溶かされてもおかしくない状況で冷静でいられる人間なんてそういない。
兵士達は魔族に差を向け逃げ出した。
「待てっ!命令違反だぞ!」
兵士達を指揮していた者が声をかけてあげ静止させようとしたが自分の命惜しさに逃げてだすような相手が命令違反と言われて引き返すわけもなかった。
「くそっ!マルダ軍に栄光あ…」
「食べ終わった?いくよ」
最後までこの場に留まり魔族に剣を向けた勇気ある指揮官はこの世界の水分となって蒸発した。
「本当いつもオーリス君の周りは忙しいと言うか賑やかと言うか…退屈しないね」
「グプゥッ」
「お疲れ様。ゆっくりお休み」
魔族は空中を撫でるように手を動かしまたゆっくりと歩き始めた。
そんなロイス領内の状況を何も知らない魔王オーリスは目の前の黒い四足歩行の相手と戦っていた。
「嘘をつくな」
「嘘じゃないって」
「エリザはいる」
「だからもーいないって。知ってるだろ」
「いや、いる。旅に出ているだけだ」
「黒騎士さん。もとい元黒騎士さん。攻撃をやめてこちらの話を聞けよ!」
「エリザとの約束は果たした。お前の命令に従う義理はない。それに私には大切なアルと言う名前がある。2度と黒騎士なんてよぶんじゃない」
元黒騎士は昔の姿に戻りオーリスを襲う。
「だからなんで俺を襲う!?」
「お前は嘘をついた…」
「ついてねーよっ!」
攻撃を避けてばかりいたオーリスがアルの顔面をぶん殴った。
そして首元を締め上げると腹に膝を入れ蹴り飛ばししまいには魔法までぶっ放した。
「えっ…それはやりすぎては…」
「阿保か。アイツにこれくらいやらないとこっちがやられるだろ」
「そうゆう事では無くて…」
オーリスにはイースの言いたい事は全く伝わらない。
えぐれた地面にアルは死んだように倒れている。
しかし、よく見るとどこも傷1つない。
倒れながらアルの眼から涙が溢れる。
痛みは痛みでも殴られ蹴られ魔法を受けたから泣いているのではないことは誰でも分かる。
「泣くなよ。それくらいで…」
分からない相手もたまにはいるようだ。
空気の読めないオーリス。
イースはオーリスに呆れた。
「わかっている。わかっていた。けれどそれを認めてしまっては私の存在意義がなくなってしまう。そうなればあの人はきっと悲しんでしまう」
アルは声をあげ泣いた。
「それだけ思っていたならきっと母さんも満足してるさ。それにそんなお前を見たら存在価値なんて誰かが決めていいもんでも無いってきっとお前に言うだろな」
「…そうなのか?」
「多分だけど」
「そうか。なら私はこれからどうしたらいいと思う」
「自分で決めろよ!面倒くさいなっ!」
「…。」
「する事ないなら俺を楽させろ」
「えっ?」
イースが再び呆れる。
こんな感動する場面でよくそんな事を平然と言えるなと。
「なんだ?イース」
「オーリスさんには感情と言うものがあるのでしょうか?」
「当たり前だろ!何言ってんだ!」
何言ってんだはこちらのセリフだと言い掛けたがイースは諦めた。
「お前を助けろと言われたしそれもまたありか」
「ありなんですか!?こんな男を助けてあなたに何の得があるんですか!?よく考えて下さい!あなたにはきっと何かあるはずですよ!!」
「あるのかそんな事?」
「あるに違い…っ」
イースの首をトンッと手刀で1撃を与えるオーリス。
「あるのか?」
「ないない。コイツの言うことに騙されるな」
「ないのか?」
「ないない。お前には何にもない」
「ないのか…。それなら仕方ないか」
アルがそう呟くと飛散して消えた。
「ふぅー。危なかった…」
オーリスは額の汗を拭いた。
意識が薄れる中でイースはオーリスを軽蔑しながら落ちたのだった。
「と言うか俺らってなにしてたっけ?」
イースを抱えてオーリスはアオスの元に戻るのだった。
忘れられた存在。
嘘つきな猫です。
離れすぎてて話の内容忘れました笑
しかし、身勝手に書き続けます笑
お付き合いしてくれたら幸いです!
次回「思惑と理解」




