残りの4分の3
「今ここには魔王はいない!我々にとってこれほど都合のよい日はないだろう!これも神の使徒様がもたらした幸運!ならば我々は神の為!人間の平和と安寧のためやるべき事は1つ!それはなんだ!!」
「「「魔族の殲滅!!!」」」
「そーだ!この地を浄化し神の使徒様から我が国の国王、エイダン・ノア・マーシャル国王が授かったお言葉のため死を恐れず戦い抜くのだ!!」
ロイス領からおよそ1キロほど離れたひらけた土地に人間達が集まって陣取っていた。
後方からは次々と兵が合流して規模が日に日に増していく。
現在その数およそ10万人弱。
「マルダ様!兵が揃いつつあります」
「そーか」
20歳にも満たない少年のような無邪気さが残る若者が歴戦の猛者たちの中心にいた。
その者の名をマルダ・ノア・マーシャル。
王位継承権第1位の座にいる者で、エイダン・ノア・マーシャルの指示の元、この兵達の命を預かる優秀な指揮官である。
王都軍立士官学校を飛び級、更に首席で卒業した未来の王は剣術、体術に秀で誰からも慕われる優しさの中にも腹黒さとしたたかさを併せ持った王に成るべくして生まれた人間。
そんな人間でも得体の知れない魔族には少なからず恐ろしさを感じる。
「こちらの兵力はおよそ10万に届いたか…で、偵察部隊はまだ戻って来ていないのか?」
「はっ。まだ偵察に行かせた者達はまだなようでして」
「そうか。あちらの戦力が分からない以上皆に無駄な血を流させる訳にはいかないな」
「何をおっしゃいますかマルダ様!我々は国の為、王の為、マルダ様の為ならば死をも恐れはしませんぞ!」
「そうです!これだけの兵が集まっているのです!それに神の使徒様からの加護もあります!今すぐにでも戦争を起こしても全く問題はありません!」
「そうか…」
マルダは集まった騎士達を無視して考える。
確かに偵察に行かせた者達が無事に帰ってくる保証はないうえ、長く留まっていては兵の士気も下がってしまう。
補給もタダではない。
兵が多ければ多いほど皆を養う補給が必要になりそれもどこまで持つか正直わからない状況。
それに1番懸念すべきは偵察部隊が捕らえられ時の事。
こちらの状況を把握されたうえで奇襲をかけられでもしたら被害はかなり大きいはず。
それよりもマルダには気になっていることがある。
それは魔王がここに居ない事だ。
なぜ自分の領地にいない。
これは罠なのか。
それより神の使徒とやらはなぜそんな事まで知っている。
答えの出ない問いを繰り返す。
そして最良の決断を模索した。
機を待つべきかそれとも今すぐにでも奇襲をかけるべきかマルダはしばらくしてようやく答えを出した。
「わかった。偵察部隊が今夜までに戻って来ない場合は早朝、こちらから奇襲をかけ一気に魔族の殲滅を開始する事とする」
「もちろんです!」
「そうと決まればすぐにでも戦争支度を始めさせろ!マルダ様が決断されたと皆につたえるのだ!」
集まった騎士達は剣を掲げ叫ぶ。
「我らの未来の王の栄誉と国の繁栄のために、勝利を!!!」
叫び終わるとマルダに一礼してからテントを出て行った。
その頃ロイス領でも大きな力が動き始める。
「た…すけ…すけ…て…て…」
「さっさと話せば気持ちよくあの世に行けたのに。まぁー楽しみがいはありましたけどね。では、この子にもう用はありません。後は好きになさい」
「う゛ぅぅぅ…」
「約束がちがうぞ!!!」
「やめ…やめろ…ろ…」
「人間ごときとの約束を守る義理は残念ながら私にはありませんので失礼」
捕らえられた偵察隊の人間達は地面に這いつくばり生きたまま数匹の魔物に喰われ生き絶えた。
「お疲れ様でした。ハミロン様」
「私はちょっと出かけて来ます」
「ギアン様がお呼びですが」
「どーせ見合いの相談でしょ。お父様には私は忙しいと伝えておいて」
「わかりました。それでは行ってらっしゃいませ」
ロイス領の四大貴族の一つ、マール家次期当主ハミロン・マールはとあるロイス領のはずれにある古びた大聖堂に向かった。
大聖堂の地下ではハミロンの到着を待つ者達が紅茶を飲みながら優雅に待つ。
「ようやく来たのですか。まったく」
「いい女ほどまたせるものよ」
2人を待たせハミロンが合流した。
「そんなの男には通じても私らには通じないから」
「そこまで言うなら貴女が人間から情報を吐かせてみては?」
「嫌だよ。人間と会話するだけでも吐き気がするし、どうせ楽しんできたんでしょ」
「貴女の下品な拷問に耐えられる男がこの世にいそうにないですしそういったことはハミロンお任せしましょ」
「下品?それは貴女の顔だけにして頂けますか?」
「なにか言いましたか!?」
「まぁーまぁーお二人とも少しは落ち着きなよ」
「お子様は黙っててもらえますか?」
「そーだ!口を挟むな!処女がぁ!!」
四大貴族の一つ、エピト家次期当主のクアラー・エピトの口調が変わる。
「なんだとゴラァ!誰にでも股を開くようなお前らに言われる筋合いない!!」
更に2人に比べるとまだまだ幼さが残る四大貴族の一つ、ロー家次期当主のウィン・ローもヒートアップした。
「まぁー下品な言葉だこと」
「なんだ殺るかぁ?」
「先に喧嘩を売られたのわたしですよ」
「ババァは黙ってろ!!」
「それより今回もあの男は不在か」
「まったくいつまで経っても四大貴族の自覚のない男だな」
「きっと今頃女の尻でも追いかけてる最中だよ」
全くもってその通りだった。
「面積少なめの紐は俺の心を震わせるな!」
ファウスは常にファウスだった。
そんな奴を放って置いて円卓の4つある椅子の3つが埋まり女達の醜い言い争いは続いた。
「クアラー様がババァでは私は何になるのでしょうかね」
言い争いをしていた者達がその言葉を聞くとすぐに立ち上がり部屋に入ってきた相手に深々と一礼する。
「お久しぶりです。マザー・フフル」
「四大貴族の次期当主とあろう方がこんな老いぼれにその様な態度を取る必要はありませんよ」
「なにをおっしゃいますか!」
「お元気なようでなによりです」
「貴女達はまったく成長していないようですね」
「申し訳ありません…」
フフルに頭を下げる3名。
「それで私をこんな所に呼び出した理由をお聞かせ願いますか?」
「もちろんです。少し話が長くなりそうなのでこちらの席にお座りください」
「いえ、結構です。私も色々と忙しいので手短にお願いします」
「それでは私が人間から吐かせた情報から」
ハミロンはフフルとクアラー、ウィンへ捕らえた人間が吐いた事を順序よく話しは始めた。
「アーリ様が不在の時に面倒な事になりましたね」
「オーリス様のお手を煩わせる必要はありません。マザー・フフル様。よければ我ら四大貴族で処理させて頂きますが、いかがでしょうか?」
「申し訳ありませんが、私にはなんの権限もありません…
が、オーリス様の性格は皆様ご存知ですよね?」
「このクアラー・エピトにお任せ下さい。人間どもを抹殺したあかつきには…オーリス様との間を是非」
「マザー・フフルに取り入って抜け駆けしようとするなんてはしたない。そんな女より私にはお任せ下さい。マール家の誇りにかけて私が必ずや期待に応えて見せます!」
「いやいや。戦闘に関して言えばこの私、ウィン・ローの右に出る者はいません。オーリス様との優秀な子を産むに相応しいのはこの私しかおりません。どこぞの領主の子を向かい入れるなんてナンセンスです」
3名はフフルに詰め寄る。
「その件に関してはそちらで自由にしていただいて構いません。それとオーリス様が望むならあなた方の誰かをロイス家に向かい入れたとしても私は反対する理由が無いのでご安心下さい」
それを聞いた3名はキャッキャ騒ぎ出した。
「それから先に言っておきますが、万が一にでもロイス家と私の家族に何かあった場合は私が先頭に立って害なす者達を1人残らず消します。その時は誰であろうと私の邪魔だけはしませんようお気をつけ下さい」
そう言い残しフフルはロイス家に帰って行った。
騒いでいた3名はその言葉を聞くと静まり返り、フフルの背後すがたが見えなくなるまで頭を下げ見送った。
「ちょっとー。どこいくのよー」
「悪いけど続きはまた今度な」
「なんかお顔が怖いんですけどー」
「そんな事ないって!すぐ戻ってくるからさ」
「絶対だよー!」
女を残して残りの1人が動き出した。
おまたせしました。
朝一授業の満員電車が辛いです。
嘘つきな猫です。
何とか早めに?投稿できました笑
先に言っておきますが多分この章は長くなると思いますので許して下さい!
コアラと元主任補佐もそのうち投稿します!
感想、評価をよろしくお願いします!
ブックマ後6人で100人達成なのでそちらもよろしければ笑




