どこから出て、どこに消える
昼夜逆転生活!
最高ーー!!
カーデンが杖に魔力を込める。
黒騎士は動かない。
「剣すらも構えないとは…余裕だなっ!!」
カーデンが闇魔法を放つ。
いくつかの黒い球体が高速で回転しながら黒騎士めがけて飛んでいった。
「それには触れない方がいいぞ。触れた瞬間喰われたくなかったら」
黒騎士に向かって自信ありげにカーデンは忠告する。
黒い球体が近づいてきているが黒騎士はそれでも動かなかった。
「馬鹿めっ!忠告を聞いて入ればよかったと後悔するがいぃっ!」
カーデンは確信し、ゲイバルトは肩の力を抜いた。
「あれっ?あれれっ!?」
カーデンの様子がおかしくなり始める。
「どーしたガーデン王。ぱっと見特に変化は無いようだが…これで勝負はついたのか?」
「そのはずなんですが…いつもは球体に触れた部分が噛み切られたように削がれ、相手がのたうち回るはずなんですけど…」
「相手は微動だにしていないじゃないか?球体だって消えてしまったようだが?どこに行った?」
ゲイバルトの言う通り、球体は黒騎士の体へと消えていった。
「あ、あなたは一体何をしたのだっ!?」
黒騎士はその問いに答える事はなかった。
黒騎士の異変にオーリスも気づいてはいたがこちらはこちらで楽しんでいるのでとりあえず無視をしている。
オーリスが呆れた顔で崩れた家に座り高い位置から下衆を見下ろしていた。
「どーしたんだい?早く選んでくれないとオーリス様が飽きてしまうだろっ!それとももっとキツイお仕置きをして欲しいのぉ?下衆王さんは欲張りさんめっ!」
「ふぁってくたはいっ!とーか!はたしのいのしたけは!」
きわどい衣装の女性が真っ赤に燃える鞭を打ち鳴らしながら下衆王こと、サブロイを虐めていたのだった。
ラバブ王にオーリスではない者が勝手に下衆王と命名した。
サブロイは自国の兵士に捕らわれ1本づつ歯を抜かれ、1枚1枚爪を剥がれながら鞭によるお仕置きをされている最中だった。
「あぁ…あぁ…」
血と涙と尿を撒き散らし自国の兵に捕らわれている姿はまさにお似合いだった。
「えーっと…もーそろそろ次に行きたいんだけど…」
オーリスは話しかける。
誰に?
目の前の女に。
誰その女?と思った方に紹介しよう。
その女の衣装は、ほぼ尻が全開で見え、背中部分もほとんど覆う物はなく、胸は薄い羽衣のような物で何とか隠され見えそうで見えない、谷間以外の上半身。
そして下半身はと言うと、光る真っ黒なブーツと脚には真っ黒でありながら光沢のある漆黒のタイツ。
そして1番重要な部分は角度のあるこれもまた漆黒のTの下着が覆っていた。
1番しっかりと隠れていたのは蝶々の仮面を身につけた顔。
そして、その手には鞭を持ち、鞭を振るいながら自分の体も震わせている。
「這い蹲りなさいっ!後悔なさいっ!そしてオーリス様を崇拝し!そして喘ぎなさいっ!」
「いや…こんな相手に崇拝されたくないんだけど…それよりこっちが恥ずかしくなってきた…」
オーリス両手で顔覆って後悔した。
突然のシーンなので、ちょっと時を戻してみる。
雑魚兵を駆逐して回るオーリスは曲がり角を2度曲がると、目の前にサブロイは現れた。
真周りには大勢の護衛兵。
「やっと雰囲気がある相手に会えたな」
サブロイの視界にも当然オーリスがいた。
「おっ。魔族がなぜ?まーいいか。今度はお前で何をして遊ぼうかー」
長ヒゲを手で触りながらサブロイは考える。
その態度はすでに勝者そのものだった。
「そーだ。さっきの姉妹に魔族の種付けでもして、どんな半魔が産まれるか予想するのも一興。それに育ててみるのも一興か」
サブロイの眼は完全に飛んでいた。
オーリスは出会ってまだ間も無い、名すら知らない相手だったが確信する。
こいつもグラム同様の下衆だと。
「そこの魔族よ。名を名乗ることを許そう。名は何という?」
「名か…正直会話するだけでも反吐が出そうだ。名前なんて教えて知り合いにでもなったら本気で嘔吐するかもな」
「ふんっ。粗悪な魔族ごときが偉そうに。礼儀というものがなっとらん!」
「そんな事言われても、魔族に身分はあっても粗悪も良質もないけどな」
冷ややかな目でオーリスはサブロイを見つめた。
「空飛んでた時の感覚で歩いて思ったけど、この国って以外と広いんだよな。1人だと効率悪いし…まぁーこんな場面で頼るほどじゃないけど。相手するの面倒だしまーいいか」
「何の話しだ?」
サブロイの質問には答えず、オーリスは空に光の輪を浮かべる。
現れた光の輪が空間を割き、そこから綺麗な蝶が大量に舞出てきた。
その中に1匹だけ他よりも一回り大きく、真っ赤に燃えているような蝶が最後に顔だす。
「なっなんだこの虫はっ!?」
大量の蝶が空を覆い風に乗せて細かな鱗粉を人間達に浴びせた。
「今度はなんだっ!?この粉はいったい!?」
一瞬どよめく人間達だったが、それはすぐに静まり返った。
蝶は真っ赤な蝶を中心に集まり始め形を成していく。
「我が名はアゲハ・オーリル…」
「えっ!?あなたは誰?俺の知ってアゲハは…。もーなんか突っ込みどころ多すぎて気が抜けたんだけど…。事情は後から聞くから、さっさとやっちゃってくれ」
「かしこまりました。我が主人様」
布面積がほとんどない背中から真っ赤に燃える炎の羽を左右2枚づつ広げ、アゲハひ高く飛び上がる。
「主人の命により汝らは罰せられる。己の罪を受け入れ、制裁を受けいれ、代償を受け入れそして我を受け入れよっ!」
鱗粉が渦を巻き飛散した。
すると兵士達が次々と構えていた剣から手を放し、盾を捨てた。
「お前達!?どーしたのだっ!?」
サブロイもその異変に気がつく。
人間達はすでに自分の意思ではなく、違う誰かの意思によって操られている事に。
兵士が一斉に焦点が合っていない虚ろな目でサブロイを見る。
危険を察知したサブロイはその場から逃げようと後方へ跳ぼうとしたが、跳んだ瞬間に空中で1人の兵士の手がサブロイの足首をガッシリと力強く握る。
その握力は通常の成人男性をはるかに超えた力だった。
サブロイは足首が潰され、そして背中から地面に落ち仰向けになる。
地面に落ちると足首を握った手を素早く魔法で切断し、その場から逃れようとしたが次から次にあらゆる方角から手が伸びてくる。
その数、兵士の数×2本。
襲いくる兵士の腕ごと魔法で切り落としていくが、両腕を無くしても口を開けサブロイに噛み付く兵士達。
流石に魔法を使えど全ての兵士の手から逃れることが出来ず、数十人を殺し、数十本の腕を切り落としたところで全身を取り押さえられ身動きできなくなった。
「離せっ!私を誰だっと思っているっ!!お前達の王にこんな事をしていーと思っているのかっ!!!」
「さぁー皆の者。我の言葉を聞きなさい。決して殺してはなりません。しかし、その者に制裁を加えなさい。そして代償を払わせなさい。」
その言葉が合図となり兵士達はサブロイからあらゆる場所を剥ぎ取り始めた。
「めっちゃえぐい事させてるけど…格好とかもそーだけど、お前そんなキャラだったか?」
「キャラって言わないで下さいっ!不本意ではあるけれど魔王側になってしまった以上は私も魔族を習って!」
「どんな魔族だよそれっ!ただの変態痴女じゃねーか!」
「実体化したのなんて久しぶりだから張り切って派手に登場したのにっ!もー私は身も心も魔族として生きる事に決めたのですっ!」
「もー勝手にしてくれ…」
「おほんっ。それでは続きを…。あぁーー…。罰せられながらもがき苦しみながら自分の罪を自分の身体で支払うこの瞬間にこそ生の価値を見出せるのですっ!」
アゲハ震える自分体を自分の腕で抱きしめ高揚していた。
本気なのか、演技なのかは本人のみ知るところではある。
「変化の高低差ありすぎて耳がキーンするレベルだよっ!凄くいろんな意味で怖いんですけどっ!!」
オーリスは色々突っ込みたかった。
「これこそが愛っ!!」
「何が愛だ!その愛にむしろ違和感しか感じない!!」
「オーリス様にもこれからみっちりと教えてア・ゲ・ル♡」
ボソリと呟いたアゲハの言葉はオーリスの届きはしなかったが、オーリスは再び身を震わせたのだった。
オーリスの苦難は続く。
地元満喫中です。
嘘つきな猫です。
もー少しで人国編を終わらせたいと思ってはいます。多分、予定では(°_°)
投稿したつもりがされてなかったみたいで申し訳ありませんでした!
ちゃんと投稿するので今後ともオーリスとアゲハ共々よろしく!