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そのおっさん、異世界で二周目プレイを満喫中 作者:月夜 涙(るい)

二章:おっさんは上り詰める

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第一話:おっさんは高級レストランでデートする

 エビ肉(並)収集のクエスト報酬の副賞である招待券をもらった。
 これがあれば高級レストランで食事ができる。
 さっそく、招待券を使うと決めて、ルーナとティル、そしてフィルの四人でレストランに向かった。

「高い店らしいがドレスコードは気にしないでいいのか?」
「はい、大丈夫です。この街でお金を持っている人の多くは冒険者なので、高級店でもドレスコードなんて言ってられないみたいですね」

 助かった。
 上位冒険者ともなると公の場にでることも多く、そういった事態に備えてきちんとした服も魔法袋に用意してあり、俺もそうしていた。
 だが、ルーナとティルの分がない。
 あったとしても、二人とも嫌がるだろうな。キツネとエルフ、自由と自然を愛して堅苦しいものを嫌う。

「じゅるり、今日はご馳走。きっと大きなお肉とかがある」
「私は美味しい果物があるといいなぁ、食べたことがないやつ」

 ルーナとティルは二人で、あれが食べたい、これが食べたいと騒いでいた。
 子供らしくて元気でいいことだ。
 俺とフィルはそんな二人を見て微笑ましい気分になっていた。

「さて、ついたぞ」

 店の名前はシャーロットというらしい。
 見るからに高そうで上品な店だ。もし上流階級の人たちが集まるような店なら、二人に大人しくするように言わないとな。
 そんなことを考えながら店の中に入った。

 ◇

 店の中は落ち着いた内装で、調度品にも金がかけられている。
 ムードを作り出すために、ピアノの生演奏が鳴り響いていた。
 店の作り自体は非常に上品で高級だ。

「……まあ、冒険者の街ならこうなるよな」

 ある程度予想はしていたが、そんな店の雰囲気をぶち壊しにするほど冒険者たちが騒いでいた。

「ユーヤはこういう店は嫌いですか?」
「嫌いではないが、内装に金と手間をかけて上品で高級な店を演出しているのに、客がこれではもったいないとは思うな」

 どうせ、ムードがぶち壊されるなら、ムードを作る必要もない。
 もっと安い調度品で手を抜いてもいいだろう。

「そうでもないんです。ある程度稼ぐことができるようになった冒険者さんたちにとって、上品で高級な店に来るのは憧れなんです。このお店は冒険者さんたちにはけっこう人気がありますよ」
「深いな」

 言われてみれば、騒げる高級店というのは冒険者にとっては最高かもしれない。
 こういう店に来れたということだけで価値がある。
 特別感があるのだ。

「それに、ちゃんとムードと雰囲気を楽しみたい人は二階に行きますね。そっちは、追加料金が必要ですが、その分わかっている人しか来ません。今日もできれば上が良かったのですが。予約がいっぱいでだめでした」
「飛び込みで来たんだ。仕方ない」

 それだけじゃなく、ルーナとティルがいるので騒いでOKな一回のほうが気が楽だ。
 気を取り直して料理を楽しませてもらおうか。

 ◇

「ユーヤ、このエビ美味しい!!」
「ぷりっぷりだね。それにすっごくボリュームがあるよ!」

 ルーナとティルが口にソースをべったりと付けて、今日のメインディッシュを楽しんでいた。
 それはエビ料理だった。
 ステーキのように分厚く切って、フライパンで焼いている。

 焼き加減がレアなおかげで甘みが強く、噛みしめると旨味の汁と飛び出してくる。
 ソースもいい、卵と酢とオイルで作った力強いソースがエビとよく合う。
 普通のエビを使っていては絶対に提供できない料理だ。
 巨大な二キロを超えるエビ肉の塊があるからこそエビの分厚いステーキなんてありえない料理が出せる。

「フィル、いい店だな。料理も酒も一流だ。これだけうまいと今度は上でゆっくり楽しみたくなる」
「ですね。想像以上でした。メインもすっごく美味しいですが、前菜もどれも凝っていて。こんなお店があったことに何年も気付かなかったなんて不覚です」

 グラスを傾ける。いい酒だ。さすがにこういう店なので、好物のエールは頼まずにワインを楽しんでいるが、俺でもいい酒ということはわかる。

「楽しんでいただけましたかな?」

 恰幅がいい、白髪交じりのコックがやってきた。

「ああ、うまかった。旅で世界中の店を回ったが、これほどの店はなかなかなかった」
「ありがたいお言葉です。あなたのおかげで、うちの看板メニューを出し続けられました。まずは感謝を」
「それが仕事だ。よくこの料理を看板にできるな。ルンブルクじゃ海底ダンジョンにあまり冒険者が向かわない。あそこに行くような冒険者は、たいてい他の街に拠点を移すしな。エビ肉(並)の仕入れが安定しないだろ」

 この街の最上位のダンジョンが海底洞窟。
 だが、そこに行けるということはこの街でのレベル上げが厳しくなったということだ。
 先を目指すのであれば別の街に行く。

「いつもは別の街から仕入れております。そちらでは海辺のダンジョンが人気で、エビ肉(並)が余っているのです。おかげで輸送費込みでも手頃な値段で仕入れられるのです。……ですが、街道が何者かに潰されたようで、いつも仕入れているルートが使えなくなりこまってしました」

 街道が?
 この近くで海辺のダンジョンの探索が活発に行われていると言えばシーマリナだ。俺が次の拠点に考えている街の近く。
 何か、怪しい匂いがする。

「俺が納品した40キロじゃ、そう長くもたないぞ」

 魔物のドロップした肉は非常に腐りにくい。
 数か月は持つが、この店の規模なら一人前200gとしても、一日で50食出ると考えて十キロを消費する。
 おそらく、四日程度しかもたない。

「そちらは大丈夫です。街道のほうがあと三日で復旧しますので。納品していただいた分で、急場は凌げます。おかげで看板メニューを欠品にしないで済みそうです」
「そういうわけか。良かった。これだけうまいものを食わせてもらったんだ。ダメそうなら、また潜らないといけないと思っていた」

 俺とシェフは笑いあう。
 そんなときだった。

「リチャードに勧められて来てみたら、なんだこの店は。食事を楽しむ以前の問題だ! 動物園で飯が食えるか!」

 一人の男性がこぶしをテーブルに叩きつけて立ち上がる。
 身なりからしてかなり裕福そうだ。
 彼は、そのまま出口に向かう。

「待ってください叔父様! 店員さん、料金はこちらにおいておくわ!」

 銀色の髪をした少女が店員たちに頭を下げて、男を追いかけていった。
 気品のある少女だ。立ち振る舞いもそうだが、雰囲気が一般人とは違う。おそらく貴族なのだろう。

 少女と目が合った。彼女は俺の顔を見て目を見開く。……それは一瞬で、あっという間に去っていった。
 その後ろを二人の青年が追う。身のこなしからしてプロ。おそらく少女の護衛だろう。
 どこか見覚えがあるが思い出せない。

「シェフ、ああいう客が多いのか」
「たまにいますね。そういうお客様には二階をおすすめします。しかし、今日は満員で。あらかじめ一階は騒がしいと忠告はしたのですが。ルンブルクで商売する以上避けられないリスクですね」

 シェフは落ち着いている。さすがに年季が入っているだけある。
 そのあと、しばらく話して別れた。

「ユーヤ、驚きましたね。今、店を出ていた子はラルズール王国のお姫様ですよ。叔父様って呼ばれていたほうはおそらく宰相。昔、クエストの依頼を受けたときに会ったことがあります。お忍びみたいですが、何かあったのでしょうか?」
「……思い出した。フィルたちと旅をしていたころにラルズール王国でクエストを受けたな。あの小さなお姫様があんなに大きくなっているとはな」

 俺たちはかなり名のあるパーティだった。
 別の街を拠点にして活動していたのだが、重要なクエストだということで名指しで使命を受けてラルズール王国に向かった。
 あのクエストはやばかった。本気で死を覚悟した。

「ユーヤが次に向かうのはグリーンウッドですよね。あそこはラルズール王国の街だったはずです」
「そのつもりだ。あそこは今の俺たちにとって一番稼ぎやすい。それに、あそこでしか得られないものがある。きな臭いからと言って避けるわけにはいかないさ」
「ああ、あれですか。当時の私たちですら諦めたじゃないですか。手に入れられるんですか?」
「なんとかしてみせるさ」

 使い魔という要素がゲームにはあった。
 使い魔はパーティ枠を圧迫せずに数々の支援をしてくれるので非常に有用だ。
 そして、使い魔を得られるのは俺の知る限りグリーンウッドだけだ。
 なんとしてでも手に入れておきたい。

「なら、気を付けたほうがいいですね」

 あの街の近くの街道の封鎖。
 お忍びで、わざわざ宰相と姫がこの街に来たこと。
 何かが起こっていることは間違いない。

「気を付けよう。……だけど、そういう話は後にしようか。今はこの時間を楽しもう。フィルとのデートを楽しみたい」
「そういうことを言われると照れてしまいますね」

 フィルとグラスをぶつけ合う。
 横目でお子様二人を見る。ルーナとティルは追加注文したご馳走に夢中だった。

 ルンブルクを出る日は決まった。
 今日のクエストで、またレベルがあがり、グリーンウッドへ向かうキャラバンが来るのは四日後。
 それを伸ばすと次のキャラバンがやってくるのは二週間だ。
 レナードのことがある。一分一秒を無駄にできない。
 そのため、四日後にはルンブルクを出ると決めた。

 そうなれば、フィルとしばしの別れだ。
 だからこそ、フィルとの一分一秒を楽しむ。
 そう、今この時も。

 ◇

 食事が終わる。
 店を出るとき、フィルが寂しそうな顔をしていた。
 もっと一緒にいたい。そう顔に書いてある。
 ……一芝居打とうか。

「ルーナ、ティル、先に帰ってもらっていいか? 明日の探索について少しフィルと話をしたい」
「わかった」
「ぷぷっ、そんな見え見えの嘘を言って。ユーヤもお姉ちゃんもがんばってね。朝帰りでいいよ!」

 ルーナとティルが今日のレストランの感想を言いながら帰っていく。
 からかわれたフィルが顔を赤くしていた。

「もう、あの子は。どこでああいうことを覚えるんでしょうか」
「はは、だが今回は図星だ。フィル、今からおまえの部屋に行っていいか。……そういう気分なんだ」
「……ユーヤはしょうがないですね。エッチなんですから」

 言葉は裏腹にフィルは嬉しそうに腕を絡ませてくる。

「もうすぐ、ユーヤとお別れですね」
「一か月でギルドをなんとかして合流するんだろう? 少しの我慢だ」
「自分で言い出したことですが、一か月は長いし寂しいです。……ユーヤ、エルフは一夫多妻制なのであんまり浮気をどうこう言うつもりはありませんが、ほどほどにしてくださいね」
「あの子たちの世話で精一杯だ。そんな余裕はないさ」

 ルーナもティルもまだまだ子供で、冒険者としても未熟。
 今が一番手がかかる時期であり、毎日がてんやわんやで女に手を出す余裕がない。

「そのルーナちゃんとティルが一番危ないんです」
「あの子たちは子供だぞ? 愛だの恋だのはまだ早い」
「今はそうですね。でも、いいことを教えてあげます。ユーヤが思っているよりずっと女の子は早く成長します。……私もそうでしたから。気が付いたらユーヤがお兄ちゃんじゃなくて好きな人になっていたんです」

 それだけ言うと、ひと際強く体重を預けてきた。
 フィルはそう言うが、やっぱりルーナやティルがそういうことをするとは思えなかった。
 きっと、離れ離れになることで不安になっているだろう。

「フィル」

 抱き寄せて口づけを交わす。フィルとの口づけはいつも甘い。
 今日はフィルが不安を忘れられるようにたっぷりと可愛がってやろう。
 そうして、俺たちはフィルの部屋へと向かった。
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