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そのおっさん、異世界で二周目プレイを満喫中 作者:月夜 涙(るい)

二章:おっさんは上り詰める

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プロローグ:おっさんは楽しんでいる

今日から二章になります。
 ステータスというのは運で決まる。
 レベルアップの際に各パラメーターが1~3のランダムで上昇するからだ。
 俺には運がなかった。ほとんど1を引き続けたまま、レベル上限まで到達した。
 つまるところ、俺のステータスは弱いまま完成してしまった。
 しかし、ステータスが低いというだけで最強を諦められなかった。ステータス以外の強さを死に物狂いで積み重ね続けた。
 そして……。

「むにゃむにゃ、ユーヤ、お代わり」
「ふふ、もっと褒めてもいいんだよ」

 目を覚ますと美少女二人に抱き着かれていた。
 一人はキツネ耳とキツネ尻尾をもったルーナだ。記憶喪失だったこともあり、拾って面倒を見ている。
 もう一人はエルフのティル。冒険者になるためエルフの村を飛び出した家出娘。いろいろとあってパーティに加えることになった。
 今は冒険者にとっての始まりの街ルンブルクの宿にいる。
 ここが俺たちの拠点だ。
 それはいいのだが……。

「ルーナ、ティル、起きろ。なぜ、俺のベッドにいる?」

 幸せそうに眠る二人の鼻を摘まむ。
 すると表情が歪んで、飛び起きた。

「ユーヤ、ひどい」
「もっと優しく起こしてよ!」

 二人が恨めしそうな顔で見ている。

「俺のベッドに入り込むなって前も言っただろう」
「ティルが羨ましくて、がまんできなかった」
「一度、味わうと癖になっちゃった!」

 それぞれ、とんでもない理由を話す。
 ルーナとティルは祭りで、どちらのほうが美味しいものを買ってこられるかという勝負をしていた。
 そして、勝者であるティルは俺との添い寝を要求してきた。
 そもそも、二人の勝負で俺が景品なこと自体がおかしいが、ティルが故郷から離れて寂しいと涙目でおねだりしていたこともあり受け入れた。

「いいか、男は危険な生き物なんだ。少しは用心しろ」

 二人は首を傾げる。
 ティルに至っては笑っている。

「ユーヤは危なくない。くっついてると安心する」
「だね。だいたいユーヤはいつも自分で言ってるじゃん。俺はロリコンじゃないって。だから大丈夫だよ!」

 二人がベッドの上でくっついてくる。
 二人は13、14ぐらいでまだまだ子供だ。俺は子供には劣情を催さない。
 ただ就寝時の薄着で、ここまで密着されたり、ベッドにもぐりこまれるとさすがにいつか間違いを起こしかねない。

「次にベッドにもぐりこんだら、しばらく酒場では日替わり定食以外は頼まない。昼も一番安い黒パンとチーズだけにするからな」
「ユーヤ、ずるい」
「横暴だ! ルンブルクを出る前に美味しいものを食べつくす予定なのに」

 二人は食いしん坊だ。
 食べ物を盾にすれば言うことを聞く。
 しばらく唸っていたが、ようやく折れてくれた。

 ……それにしても、ベッドに忍び込まれても気付かないなんて、冒険者としての勘が鈍ってしまったのか?
 冒険者は危険なダンジョンで一夜を明かすことが多い。
 たとえ眠っていても意識の一部で周囲を警戒する習慣がついているはずなのに。

「朝食を食べたら朝の鍛錬だ。気合を入れていくぞ」
「わかった」
「がんばるね!」

 素直な返事を聞いて、なんとなく理由がわかった。
 この子たちに邪気がないからだ。無意識にこの子たちを受け入れてしまい、警戒心が働かないのだろう。

 ◇

 朝の鍛錬を終えてからギルドに来ていた。
 ステータスという存在から、武術や鍛錬は軽視されがちだ。
 しかし、俺は理解している。ステータスだけですべてが決まるわけじゃない。

 鍛えた技と高いステータスには相乗効果がある。それが一流と二流をわける。
 技だけでも、ステータスだけでもダメだ。両方があって初めて一流となる。
 ルーナやティルはそれを理解して、厳しい鍛錬も手を抜かずに打ち込んでくれている。
 最近はこの子たちの成長が何よりも楽しみだった。

 いつものように、フィルのいる受付に向かう。
 フィルは俺のもとパーティメンバーで、ルンブルクで一番人気の受付嬢だ。見た目は十代後半の美少女だが、実年齢は二十代半ばのエルフだ。

「ユーヤ、いいクエストがありますよ。海底洞窟のクエストでロングアーム・シュプリの肉の収集です。緊急のクエストなので相場の三割増しで肉を買い取っていただけますよ」
「それはいいな。海底洞窟ならレベル上げの効率もいい」

 ロングアーム・シュプリは子供ほどのサイズのエビの魔物だ。
 あいつのドロップする肉と言えば、エビ肉(並)。
 ぷりっぷりで甘いエビ。
 しかもドロップ品はひと固まりで二キロほどあるうえに、二か月は野ざらしにしようが品質が劣化しないため、飲食店では本物のエビよりも重宝される。

「それだけじゃありません。クエストを達成したら依頼主のレストランで四名様までOKの無料招待券がもらえます。エビ料理を看板にしているお店で、いつもの仕入れ先が急にダメになって困っているみたいですね」

 フィルから書類を受け取り、クエスト内容を確認する。
 普段から買い取り額の高いエビ肉(並)を相場の三割ましの値段で買ってもらえるのは美味しい。
 必要エビ肉(並)の量は20。おおよそ40キロ。かなりの量だがなんとかなるだろう。

「わかった、受けよう」
「期限は明後日まで。絶対に失敗しちゃダメなクエストですからね。がんばってください」
「任せておけ。……ギルドは大変なようだな」
「はい、まだまだ前と同じようにとはいきません。ギルド長があんなことになりましたし。でも、だからこそがんばらないと」

 フィルが笑う。
 俺と別れる前より彼女は強くなった。

 今、ギルドはかなりまずい状況だ。
 ギルド長自らが何者かの手引きで、テロを引き起こした。
 未遂には終わったものの、ギルドの権威は失墜しているし、職員も冒険者たちにも混乱が広がっている。

 そんななか、フィルは自分の仕事を完璧にこなしつつ、周りのサポートもしている。ギルドが最低限の機能を果たしているのはフィルによるところが大きい。

 助けてやりたいと思う。
 そのためにも、完璧に依頼を終わらせてギルドに貢献しよう。

「ユーヤ、お願いがあります」
「なんだ?」
「おまけの無料招待券。私も連れて行ってください。高いお店で、こういう機会でもないといけないんです」
「任せておけ。絶対にフィルを連れていく」

 たぶん、フィルの今の言葉は照れ隠しだろう。
 フィルの冒険者時代の貯金と人気受付嬢の収入を考えればどんな店でも好きに行けるはずだ。
 本心は俺と一緒に楽しく食事をしたいだけ。
 そして、それは俺も同じ気持ちだった。

 ◇

 魔法の扉をくぐって海底洞窟のダンジョンに来ていた。
 天井が透明な海の底にあるダンジョンだ。
 海洋生物の魔物が多く出現する。

「今日はごちそう!」
「そのためには、いっぱいエビを倒さないとね!」

 ルーナがキツネ尻尾を揺らしながら、ティルがエルフ耳をピンとしてやる気を出している。
 二人は高級レストランへの招待と聞いた途端、いつも以上のやる気を見せていた。

「やっぱり、魔法袋があると便利だね。弓も矢もかさばっちゃうから、街じゃ持ち歩きにくくて困ってたんだ」

 ティルが魔法袋から長弓と矢筒を取り出す。

「ルーナの【お宝感知】には感謝だな」
「ん。ルーナは役立つ。今日もお宝を見つける!」

 ルーナは【アサシンエッジ】以外は攻撃スキルを取らず、すべて探索スキルに回している。
 おかげで俺たちは快適に旅ができていた。

「ユーヤ、ティル、もうすぐ曲がり角から敵が飛び出してくる。大きなエビ」
「さっそくか」

 真っ先に動いたのはティルだ。
 素早く矢を番える。
 エルフ特有の翡翠色の眼が輝いた。
 そして、後ろ歩きをする人間の子供ほどのサイズの深紅のエビが飛び出してくる。ロングアーム・シュプリだ。

 攻撃力はさほどではないが、甲殻類特有の防御力の高さが厄介な魔物。
 距離は百メートルほどあった。
 ロングアーム・シュプリはこちらに気付いてすらいない、そんな相手に矢の雨が降り注いだ。
 防御力が高いとはいえ、十を超える矢を絶え間なく受けては耐えきれない。
 ティルの遠距離精密連続射撃。スキルではだけ成しえない。子供のころから弓と共にあった彼女の技量がなしえる技だ。

「ユーヤの言った通りだね。【矢生成】で作る矢がどんどん強くになってる! 今でこれならレベル50になったらどうなるかな!」

 ティルが興奮した様子で問いかけてくる。
【矢生成】スキル。
 それは弓使いにとって必須のスキルだ。魔力を消費してレベルとステータスに比例した強さの矢を作れる。
 これがあれば、矢の作り置きができるし、矢が切れても即座に補充できる。
 さらに、レベル20を超えたあたりから市販では作れない強さの矢が作れるのだ

「それはレベルが上がってからのお楽しみだ。さあ、次に行くぞ。フィルは二日でクリアしろと言ったが、俺たちなら今日中にクリア可能だ」
「ん。任せて、どんどん敵を見つける。あっ」
「どうした。ルーナ」
「そっちの壁、宝箱の匂いがする」

 今日も、ルーナは【お宝感知】で隠し宝箱を見つけたようだ。
 財布が潤う。

「せっかくだ。頂いて行こう」

 ルーナもティルもまだまだ冒険者としては未熟だが、それぞれに明確な強みがある。
 俺たちは冒険者になってから半月程度の新米パーティ。
 だが、すでに中堅と言われるほどの稼ぎと強さを手に入れつつあった。

 ◇

 ギルドに戻るクエストの完了報告と素材売却を行っていた。

「……ユーヤたちならもしかしてと思いましたが。まさか、一日で集めきっちゃうなんて」

 フィルが呆れた顔で完了手続きを始める。

「ちょっとしたズルを使ったんだ」

 狩りを初めて数時間は正攻法で狩りをしていた。
 しかし、再配置からだいぶ日数がたっており、魔物がほとんど狩られてしまった後でクエストの達成は難しい状況だった。
 なので、ぐるっと海底洞窟を一周し、隠し宝箱を回収し終わったあとは、ズルをした。

 海底ダンジョン何には、ハーミット・クラブという非常に厄介な魔物がいる。
 冒険者は死神と恐れられるそいつを避けるため、ハーミット・クラブだけは再配置から時間が経っても残っている。

 そのハーミット・クラブを利用した。
 奴には、取り巻きを召喚する能力がある。
 普段は厄介極まりない能力だが、ティルの遠距離狙撃と、俺のカスタムマジック【超電導弾】の二つで遠距離から取り巻きだけを倒す。

 すると、ハーミット・クラブは取り巻きを能力で補充するのだ。
 その中には俺たちのターゲット、ロングアーム・シュプリもいる、ひたすらそれを繰り返し山のようにドロップアイテムが積まれてから、ハーミット・クラブを始末した。
 ゲームのときには割と有名な狩りの方法だが、まっとうな冒険者はこの方法に気付けない。

「では、報酬の支払いをしますね。あっ、そうだ。ユーヤ。レストランにはいつ行きますか?」
「今日だ。……ルーナとティルがさっきからごちそう、ごちそうとうるさい」
「ユーヤ、早く食べにいこう!」
「もう、お腹ぺこぺこだよ!」

 ルーナとティルが俺の後ろから顔を出した。
 そんな二人を見て、フィルが苦笑する。

「わかりました。手続きを急ぎます。あと一時間ほどでお仕事が終わるので、酒場で時間を潰してください。ルーナちゃん、ティル、代金は私が持ちますので好きなものを頼んでいいですよ」
「やった! ユーヤ、先に行ってる。パフェを食べる」
「私はミックスジュース」

 二人がギルド内に酒場に向かって走っていく。
 そんな二人の様子が微笑ましくて笑みがもれる。

 今日の冒険も順調だ。
 来週にはキャラバンがルンブルクから出発する、それに同乗して次の街へと向かう予定だ。
 残された時間はわずか。
 残された時間で、少しでもフィルと居られる時間とルンブルクの街を満喫しよう。
 俺は改めてそう決めていた。
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