第十三話:【希少種《レア》】ゴブリンと痛い妄想
声がしたほうに向かったスケルトンは、四名ほどの集団を発見した。
(おっ!人間がいる!よし、さっそく声をかけ……いや、今声出せないんだった)
声を出したらいちいちカラカラをつけないといけないのでやめてください。
(てかこれ声を出せる出せないの問題じゃないな。今出たら真っ先に討伐されて経験値コースだ)
『この位置だと声を出す出さない関係なく見つかります』
(おっといけねえ!見つかる前に木の裏にでも隠れねえと)
スケルトンは木の裏に隠れて四名ほどの様子をうかがうことにした。
四人組の特徴は金髪ロングヘアーに青い眼の生意気そうな顔をした14歳くらいの子供と、それに付き従うように歩く茶髪に銀色の目をした16歳くらいの少年が二人。容姿から双子だと推定される。
もう一人はその三人の陰に隠れていてよくわからない。
「フハハハハ。スケルトンごとき、この私の前ではゴミ同然よ」
金髪ロングヘアーが偉そうに高笑いする。
「さすがです、坊ちゃん。お強い」
「しかし、このあたりはもうファイタースケルトンが出てくるんじゃないですか?いくら坊ちゃんでも勝てるかどうか……」
双子Aが称賛し、双子Bが心配事を相談する。
実はこの三人、勘づいた人もいるかもしれないが貴族である。まあ、平民は普通フハハハハとか偉そうな高笑いはしない。
「な~に、心配するな。スケルトンもファイタースケルトンも大して変わらん。それに、いざとなればこのゴミを囮にすればいい」
「「それもそうですね」」
(最後のセリフはもった。さすが双子)
スケルトンは妙なところで感心しながら、四人組について考察する。
(上下関係としてはあの金髪がトップで、二人がそれに従って、最後のやつが底辺ってことか)
おそらくそれは正解。珍しく賢いスケルトン。
(けど底辺だからって囮にすんのはやりすぎ……っておい!あの四人目……)
三人の位置がずれて認識できるようになった四人目の姿は、小学生ほどの体躯、緑色の肌、とがった耳、子の特徴にあてはまるものは……
(ゴブリンだ!!)
そう!ファンタジーには外せない最弱でエロくて主人公のやられ役、そのくせ無駄に数の多い魔物。
こうして説明していると本当にいいところがない。
(あれ?でも微妙に違う。角が生えてる。それに顔だって思ったより不細工じゃない)
なんとそのゴブリンには肌と同じ色の角が生えていた。そして顔については、髪がないしお世辞にもかっこいいとは言えないが、テンプレ通りのブサ面でもなかった。
(叡智さん、この世界のゴブリンってみんな角生えてるの?)
『いいえ。生えていません。おそらくあのゴブリンは【希少種】なのでしょう』
(【希少種】?)
『稀にほかの同族とは違う身体的特徴を持って生まれるもののことです。魔物だけでなく、極小格率ですが人間や亜人にも生まれます』
(ふ~ん、そういうのって、他のやつより見た目以外何か変わってたりすんの?)
『はい。他の個体より強かったり、何らかの特殊能力を持っていたりします』
スケルトンはそういう話に聞き覚えがあった。地球にも二つの頭を持つ蛇、足が八本のヤギなど、数々の突然変異種の例が存在するからである。
人間や亜人にもいるのは驚いたが、まあ異世界だしそんなこともあるだろうと納得する。
スケルトンはふと、気になったことをたずねる。
(そういう奴の扱いってどうなんの?人間や亜人、魔物も含めて)
『人間や亜人の場合は殺すか売るかの二択です。魔物の場合はある程度知能がある場合は群れを追い出される程度です。知能が無い場合は特に扱いは変わりません』
(えげつなッ!!)
スケルトンの予想をはるかに上回る不遇の扱いだった。
スケルトンが悪いほうに想像したのはせいぜい学校のいじめレベル。いいほうの想像はむしろ珍しがられてモテモテだと思っていた。
人間や亜人のそれに比べて魔物は大したことはないと思う人もいるだろうが、群れを追い出されるというのは相当やばい。
弱肉強食の野生のルールの中で生きる魔物にとって、弱者は狩られる側。
では、狩られないためにどうするかというと…………群れる。
つまり、群れを作る魔物というのは弱いものがほとんどだ。そしてその群れを追い出されることは弱者にとって死刑宣告に等しい。
……人間に例えると、ろくに装備なしでサバンナを一人で歩けと言っているようなものである。
もしそうなったら飢え死にかライオンに食べられて死ぬか……どちらにしろえげつない。
(じゃあ、あのブサイクともイケメンとも取れない顔は【希少種】だからで、他はブサイクだったりすんの?ゴブリンって?)
『いいえ。ゴブリンは固体によても顔の美醜はバラバラです。すべてが不細工というわけではありません』
(テンプレ通りのようでそうじゃないなぁこの世界)
スケルトン的には、ゴブリンがブサイクという設定は外せないと思っている。
まあ確かに、イケメンのゴブリンがいたら自分から攫われにいく人も出てきそうだ。
(あ~あ。この世界がテンプレ通りだったら俺は今頃…………)
ースケルトンの妄想ー
とある森のとあるゴブリンの巣。ひしめくゴブリンの中心には一人の女の子が襲われかけていた。
「キャーーーー!誰か助けてーーーー!!」
「ああ、まかせろッ!」
そんなヒロインの声にかっこよく答える主人公《白骨三途》。
主人公はものすごいジャンプで一気にヒロインの元へ着地する。
「大丈夫かい?レディ」
そこには転生して何やかんやのご都合主義で前世よりイケメンになった白骨三途が!
イケメンでもこのセリフはちょっとキザ過ぎて痛い。
ポッッ
そんな痛いセリフでも頬を赤らめるヒロイン…………もといチョロイン。
「待っててくれ。俺が今からあいつらを倒して君を守る!」
「お願いします」
「「「「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!」」」」
このやり取りが終わるまで襲いかからず待っていてくれたゴブリンたちは、ついに一斉攻撃を始めた。
それに対し主人公は…………
「フッッ!」
正拳突きだけで数体のゴブリンを吹き飛ばし、他にも蹴り、投げ技を使って千切っては投げ、千切っては投げを繰り返す。
それでもなかなか数が減らないゴブリン。
「フンッ、しょうがない。貴様らには特別に見せてやろう」
『万物を焼却する紅蓮の炎よ。我が手に集い、我の意のままに動き、我が敵を滅ぼさんとする炎よ。今こそ我が手から放たれ、大地を焦土と化せ』
【炎最上級魔法・地獄の炎】
その無駄に長く痛い詠唱から放たれた魔法は、見事ゴブリンたちを焼き尽くした。
「フッ、またつまらぬものを燃やしてしまった」
某十三代目泥棒侍のパクリ。
「あっ、あの……」
「ん?」
何やらもじもじとしながら声をかけるヒロイン。
「た、助けてくれてありがとうございました!こここ、これはほんのお礼です」
と、恥じらいながらも主人公の頬に軽く触れるだけのキスをする。
ー現実ー
(って感じになっただろうになぁあああ)
『それは無いです』
さすがにここまでのご都合主義はもうあり得ない。気持ち悪い。
『多対一の状況での長文詠唱はお勧めしません。一人なら動きも把握出来たでしょうが、あれはどの数だと死角をつかれてやられます。そして、森林での大規模な炎魔法は大火災の原因にもなりますので厳禁です』
(いや、あの、妄想なんでもうちょっとお手柔らかに……ってか真面目に返されるとこっちも反応が困るんだけど!……いや、叡智さんにノリツッコミを求めるわけじゃないけど……)
まあ、スケルトンとしては真面目な意見より罵倒やツッコミのほうが返しやすかっただろう。だが、叡智には冗談が通じない。
いつか冗談が通じる人を異世界で見つけてほしい。今んとこでできたの輪廻神しかいないから。
(まっ、無い物ねだりをしてもしょうがねぇ。今はとにかく、あのゴブリンを助けるか。あの三人は特に善人にも見えねぇしな)
問題は、三対一でどう相手をするか……
スケルトンは、頭の中で必死にプランを立てていた。
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