【45】アリスター、騎士爵を得る
「よくがんばりましたね」
「……どう致しまして」
ロバートに勝利したあと。なぜかアルスが率先して私のそばに来て『奇跡』を行使する。
疲労回復、かしら? なんだか疲れていた分が少し楽になった気がする。
それ、わざわざする必要ある? いいけど。
「お気になさらず、これは優勝者への労いのようなものですから」
「ええ、気にしておりませんわ」
吹っ飛ばされたロバートにかけなさいよ、と思ったけど、ロバートの方にも『奇跡』持ちがついている。普通に女子生徒。教会の人員じゃないのね、そこ。
「この後。3位決定戦があります。それが終わったら表彰式。王弟サラザール殿下より、優勝者に褒賞がありますよ」
「サラザール王弟殿下と……褒賞?」
「おや、ご存知ではありませんでしたか」
「ええ、まぁ」
鍛錬にばかり気を取られていたので。
「まぁ、確かに今回からの試みですからね。それに急に決定されたそうですよ」
「そうなんですのね」
それを知っている貴方はなんなのかしら、と言いたいけど。
最近の私は公爵令嬢としての情報収集をしていない。
生徒会で告知されたならいざ知らず、高位貴族間での日々のやり取りからの情報は、得られない環境で生きているからね。
「では、楽しみにしておりますわ」
「まぁ、アリスター様が喜ばれる褒賞ではないと思いますけどね」
「はぁ?」
内容を知っているみたいね。ま、いいわ。聞かないでおく。あとのお楽しみってところね。
私は会場から下がる。あえて私に向けられる視線に意識は向けずに。
レイドリック殿下やロバート、他にもなんとなく意識を向けられている気はする。
レーミルも含めてだ。
でも、視線を合わせて私からの情報を与えることはしない。
彼らからの嫉妬やら何やらの感情を叩きつけられることも。
『アリスター』の私が疎まれるのは規定路線だから。
今は誰のことも歯牙にもかけない態度を貫く。
3位決定戦は呆けないほど簡単に決着がついた。当然、レイドリック殿下が3位だ。
優勝は私、準優勝がロバート、3位がレイドリック殿下となる。
少しの準備時間を挟んでの表彰式が始まり、私は招かれるままに中央舞台へ。
声高らかに3位の者からその実力を褒め称えられ、勲章のようなものが贈られる。
王弟殿下サラザール・ウィクター様が出てきて、労いの言葉と共に。
「よくやったな、レイドリック。鍛錬は怠っていない様子で何よりだ」
「……はい、ありがとうございます、叔父上」
納得いってなーい感じの生返事をするレイドリック殿下には銅で作られた勲章が送られた。
メダルじゃないわよ。勲章ね。
「よくやった。十分な実力を示したな。これからは実戦的な経験を積むといい。君には才能がある。一度の敗北などで腐らずに精進するように」
「……はい。お言葉、感謝致します。サラザール殿下」
「うん」
ロバートには銀の勲章が与えられる。次に用意されたのは金の勲章だ。
私の名が読み上げられ、優勝者として宣告される。
ちゃんと拍手を送られているわよ? 悪役令嬢としては広まっていないみたい。
学園に通っていて、明らかに冷遇される姿を見られていたら、そこから悪評が囁かれていたはず。
まだ皆、私たちの関係を見極める段階から先へ進めていないのよ。ふふ。
「剣技大会優勝者、アリスター・シェルベル。彼女には王家より『騎士爵』を叙勲する」
「……はい?」
騎士爵ですって? まさかの褒賞に私は唖然とした。
騎士爵とは文字通り、騎士に与えられる爵位だ。
五爵よりは下の爵位であるものの、貴族の一員として認められる。
男爵より下、準男爵のその下、文官爵と同列の爵位が騎士爵よ。
これは確かに私が与えられても微妙かもしれない。
ついでに言うと『アリス・セイベル』は子爵位をお父様から引き継ぐ手続きが済んでいる。
たとえ、私が殿下の婚約者でなくなったとしても爵位はあるのだ。
だけど、褒章として与えられるなら私が実力で得た爵位でもあるのね。
「君の未来に必要なものかはわからない。もったいないかもしれない爵位だけどね」
サラザール殿下がそう微笑む。
『王弟』サラザール殿下。彼は五人目のメインヒーローだ。
そう、彼も攻略対象である。
年齢は二十代ということだけわかっている。レイドリック殿下と同じ金髪に青い瞳。
どうしてこの褒章を与える場に出てきたかというと、彼は学園の理事長を務めているから。
年上枠で、成人済みのヒーローというわけだ。
「そうですわね。でも今大会で私、女騎士を目指すのも悪くないのでは、と。そう思いましたの。ですから素直に嬉しいですわ」
「おやおや、危ない発言をする」
「ふふ。だって強かったでしょう? 他意なく、そう思ってしまいますわ。実は舞い上がっていますのよ、これでも」
「そうか、ではアリスター卿。これから貴方が誰に剣を捧げることになるか、楽しみにしていようか」
「まぁ! ふふ、ありがとう存じます。王弟殿下」
シェルベル卿でもいいけど、アリスター卿ね。『卿』は騎士を呼ぶ際につけるものよ。
「改めて、優勝おめでとう、アリスター卿」
「はい、ありがとう存じます」
こうして私は新たな爵位と、実績を得て、一大イベントを終えることができた。
うん、上出来ね!
内容が重複していた分、修正します。
※2026年6月24日に改稿しました。




