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勇者になろう  作者: パラヂン
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第39話 修業


強くなりたい気持ちは男の子なら誰もが持ってる……と思います。


――姉さん事件です。いや姉なんていないけども。




朝早く、オレ――坂神裕也は苦悩していた。



先日ある程度お金が貯まったので、数日間ずっと図書館に行って魔法について調べていた(興味が十割)ころに、それはやって来た。


オレは第三部隊とやらに所属しているわけだが、訓練その他諸々全て自主参加なので一度も行っていない。

まぁ自分は凄腕魔法使いみたいに思われているので、わざわざボロを出して降格させられるのは望むところでは無いのだ。


しかし、その日に伝えられたのは『コロッセオ』……つまり所謂『闘技場』……あれ?闘技場って会場の名前?まぁ伝わればOKってことで。


とにかく、そのコロッセオについてを通知されたのだ。

二週間後に開催らしい。そこまでは何の問題も無い。そこまでは。



「……強制参加……だと…?」



その文字を見た瞬間、脳裏に浮かんだのは『腹痛』『怪我』『用事』


次の瞬間に浮かんだのは『食べ過ぎたので』『昨日戦闘で負傷』『……用事は無しだな、選択肢から外そう』


そして最後に『一度も訓練に参加してないだけでアレなのにこれじゃますます怪しまれる』


――それじゃ、出るとみせかけて棄権?


全く解決策になっていない。



通知を見てフリーズした坂神をどう思ったのか、ネイスが話しかけてくる。

他二人はリビングでダレている。

あれ、よく考えれば女性の割合75%じゃないか。いつの間にこんな状況が、ってこれ考えたの何回目だよと。



「どうしたんだ?何かあるのか?」


「珍しく早起きした結果がこれだよ。みたいな」


「その『珍しく』ってあたしのことか?」


「オレのことってことでどうか一つ」


「よろしい」



そうした他愛もないやりとりをして、やはり追求の意を示すネイス。追求されて困ることは無いけど。



「んで、なんかあるの?」


「あぁ、これこれ」


「ん?」



コロッセオについて書かれた用紙を渡す。


それを見たネイスはしばらく文字と悪戦苦闘して、読み終えたころには目がキラッキラに輝いていた。

 

 

分かり易すぎるよ。


そして彼女は『読め!』とばかりにその用紙を突き出して言う。


――オレもしっかり読んだから、そんな突き出されても困る。少し落ち着け。



「出たいっ!」



まさかこんなに直球でくるとは思わなかった。

ダラけていた二人も首をこっちに向けている。

この人達は出ないだろうなぁ、と予想した。



「え……いいよ、うん。」



――これは全くオレの一存で決めることじゃない、というかそんな権利無いし自分で決めろよ。


などとネイスが坂神に許可を求めてきたことに若干混乱してから、三人に聞いてみる。



「なぁ、この中で戦いの指導できる人っている?」



名付けて、『本当に強くなってしまえば無問題』作戦。

ここにいるのは全員強いし、なら効率的に強くなれるのではないか、と。

それにいつまでも守られっぱなしなのはどうにかしたい。女性に戦いを学ぶってのも不甲斐ないけど。


その問いに初めに答えたのはネイスだった。



「一回死んで生き返ったら超常の力をだね」「却下」


「ぶっちゃけアタシに指導を求めるのは無謀」


「了解」



――うーん、あと二人。


次にファウストが怠そうに右手を上げて言う。



「あー…剣は教えれないぞ?身体鍛えるのはいいけど。魔法も教えれないことは無いけど……お前には無駄だろう?」


「そっか、そういえばファウストは手刀メインだったな。じゃあ鍛えるのは任せてもいいか?」


「スパルタだからな」


「………」



――あれ?悪寒がする。


次にフィリスが上半身を起こして右手を上げる。



「私が教えることはもう何も無い……」


「あぁそっか。フィリスも魔法主体だったな」


「魔法使いですからね」


――ん?


「僧侶、とかじゃないのか?そんな印象なんだが……」


「いえ、魔法使いですよ。ああ、魔術師でもいいですけど」


「魔法使いと魔術師の違いって確か、魔法を主に使うか魔術を主に使うか、だったか?」


「まぁ最終的には感覚的なもので判断するものだと思ってるんですけど……」


魔法は口頭で、魔術は術式――つまり文字や形――で発現する……まぁそんな感じだったはず。

伊達に図書館に入り浸っていたわけじゃないやい。


そこでファウストが左手を上げて抗議する。



「じゃあ強化魔法を主に使うのは魔法使いか?」


「「………あれ?」」



深く考えなかった二人は虚を突かれて混乱する。

確かにその場合、魔法使いとは言わなさそうだ。



「いや、曖昧でも別に全然いいけど」


「あ、それじゃアタシはどうなるの?」



唐突にネイスが言う。

他三人は各々考え、それぞれの答えを口にする。



「異質女魔法使い兼戦士」


「そういえばオレ、ネイスが戦ってるところ見たこと無い」


「その他」



上から順にフィリス、坂神、ファウストである。



「あ、確かに坂神の前で戦ったこと無いかも」


「てか、フィリスの長いな」


「ファウストさん、その他って……」


「それか例外だな。コイツの戦い方はまだよく分からん……あ、未定か」


「ファウスト……なんかあんたの台詞には侮蔑が混じってる気がするわ!」


「これは失敬、出来るだけ抑えたつもりなんだが」


「とりゃーーーーーー!!」



飛び掛かったネイスの両肩をファウストがつかみ、右足を腹にいれて一気に後ろに投げ飛ばす。所謂巴投げというやつだ。


――てかここリビングなんだけど


そんな他愛もない『遊び』をしていると、不意にフィリスが何かに気付いた。



「あ、心当たりありますよ」


「ん?何が?」


「坂神さんの剣の指導できる……と思う人に――ちょっと面倒臭いですけど」


「お!?誰?」


「元剣士のクリス・リーティンという僧侶なんですけど……」


「僧侶?」


「はい、僧侶だそうです。今日中には交渉してみますよ」


「いや、オレも行くよ。オレが行かないでフィリスを行かせるなんて、失礼すぎるだろ」



そこでフェイントの掛け合いをしていた二人が割り込む。

部屋ではあまり暴れれないので、フェイントで相手の裏をついたほうが勝ちという極めて安全で安心な勝負だ。



「アタシも行くー……ぴぎゃ!」


「私も行くぞ。暇だしな……甘い!」


「おっと!」

「ぐっ!とみせかけて!」

「アタシはそのさらに上を行く!」

「だがしかし!」

「まだまだ!」

「だがしかし!」

「まだまだ!」

 ………


ネイスが額を小突かれた……とみせかけて背後に回っていたのをファウストが察知しさらにネイスの背後に回り、しかしそのネイスは残像で実はファウストの後ろに……なんてやっている。

正直、壮観だ。

二人がたくさんいる。


――人間離れしすぎだろ、オイ。



「まぁ、いいですけど……」





とにかく、四人で行くことになった。

話を早く進めたい、けど進めれない。


矛盾ってイガイガします。

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