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夢見る時間は異世界へ。  作者: 雪愛。
黒獅子ジャックスと少年魔術師
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暴れ瓜にはご用心

カナメ、ヨム、リオの3人がチュートリアルを終えてから1週間が過ぎた。

ベアウルフから町を救った事、ロンダルから誉れを貰った事をきっかけに住人から3人に対する『信頼度』が上がったらしく、ギルドでクエストを受注する他に町の住人から『頼まれごと』をされるようになった。

「うちの猫をさがして!」からはじまり、宵月の森の推奨レベルに到達してからは「森に出かけたお婆ちゃんが心配だから連れて帰ってきて!」というものやベアウルフの集落では毛の生え換わり時期の為か「ブラッシングのお手伝い」なんていうのも頼まれた。

一見、戦闘とは関係のなさそうな頼まれごとであったが、経験値を貰えるらしく、簡単なモンスター討伐クエストと宵月の森の探索と並行していたらこの1週間でレベル3から20に上がり、Fランククエスト卒業間近なのでは?と思える程クエストも楽にクリア出来るようになってきた。

しかし、宵月の森を探索し、カナメの地図製作スキルを使っても、ヨムの目星やオラクルを使ってもロンダルの居場所を見つける事は出来なかった。

森の王と再び会うにはまだ条件が必要なのかもしれない。そう結論を出した3人は今日も「頼まれごと」に精を出す。

今日の頼まれごとは『暴れ瓜の討伐』この世界では大気が満ちるように魔力の元が細やかに満ちている。その魔力の元と自身の魔力を精霊が結びつけて魔法を発動するのだが、魔力の元が満ちている故に時折困った事も起こる。

 今回の暴れ瓜の討伐もその困った事、の一つだった。

 畑で育つ野菜の中には土の中の魔力に反応し、僅かではあるがモンスター化する事がある。それ故に農家や園芸家と呼ばれる者達はある程度戦いの心得、なるものがあり、自身が解決するのが殆どなのだが。

 この町の若者の多くは出稼ぎや冒険者家業に転向し、残された僅かな子供と老人がベアウルフ族に助けられながら自給自足の生活をしていた。

 普段はベアウルフ達が対処する問題なのだが、彼らの住む森に巨大なモンスターの出現情報が寄せられ、討伐が終わるまでは人を割く事ができないのだという。

 「対して強くもないモンスターだから代わりに倒してくれないか」との口添えもあり「それじゃあ代わりに倒しますよ」と軽々しく引き受けてしまった3人は目の前のカボチャ型モンスターを見てほんの少しだけ後悔していた。

 目の前にはまるまると実ったオレンジ色のカボチャがあり、そのうちの幾つかが『ケケケケケケケケ』と何が面白いのかしきりに笑っている。

 ただそれだけなのだ。ただの笑うカボチャなら子供でも退治できただろうに……対して強くもないから代わりに倒してくれないか。なんて頼まれたら「相手は強いモンスターなのかもしれないな」と思ってしまうじゃないか。

 「ねぇぇ……カボチャが笑ってるよぉ……何か怖いよぉ……」

 カボチャを興味深そうに観察するヨムとほんの少し拍子抜けしているカナメの後ろからリオはコッソリとカボチャを覗いては2人の影に隠れる。を繰り返している。

 「リオのおカブと対して変わらないじゃん~」

 「私のおカブちゃんの方が可愛いんだから!!一緒にしないでよ!」

 確かにデフォルメされたカボチャなら可愛らしいとも思えるが、大きなカボチャが笑っているのは正直シュールだ。せめて可愛らしい顔でもあれば良かったのだが、もう少し近付いてみないとどれが暴れ瓜なのか解らない。ただ笑っているだけなら近付いても大丈夫だろうか。蔓さえ切ってしまえばそのまま弱って枯れていくのでは?とも思う。


 『ぎゃむぎゃっ』

 太い四脚でしっかりと大地を踏みしめていたオニキスが胸を張るように一歩前へ踏み出した。

 「任せてもらおうか」と言いたげな仕草だ。

 カナメ達同様にオニキスも体は小さいが立派に敵と達向かうまでに成長していた。

 「オニキスいく?行ってみる?」

 『むぎゃっ』

 ヨムの問いに「任せといて!!」と言うように気合いの入った返事をするとオニキスは畑へと駆けだし、『ケケケ』と笑い続けるカボチャを勢いよく踏みつけた。


 パキャッと乾いた硬い殻が割れる音がし、笑い声が1つぶん減った。残りの声でまだ4、5個ぶんほど残っては居るのが確認できたが、これは思っていたよりも楽に討伐出来そうだ。

 オニキス1匹でどうにかできるかもしれない。


 「っていうかスライム倒すよりも簡単なんじゃ……」

 畑で縦横無尽に駆け回るオニキスにカナメは安堵した。

 しかし、背後では未だにリオは「なんかこわい」と震えている。生来の臆病さ故か?と思ったが、どうも様子がおかしい。

 「ねぇ、リオ。どうしたの?何かあったの?」

 「カナさん……何か来るよ」

 言葉が足りない。のはいつもの事だが抽象的すぎて何が来るのか解らない。

 「何か、って……何?」

 「解らない、解らないけど……ねぇ、ヨム、早くオニキスを戻してあげて!何だかこの畑ちょっとおかしい気がするの」


 『ギャン!!』



 リオの言葉が終えると同時に鋭く短いオニキスの悲鳴が3人の耳に届いた。







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