-42- 命
勇者興業の社長室に戻った俺とスズを待っていたのは、死体になったリゼとジークとマリア、そして俺を回復した女の4人だった。
「戻ったよ」
スズの晴れやかな表情を見れば事の顛末は聞かなくても分かる。彼らは質問をすることなく、黙って拳を握った。
「さあ、ルシフ君。履行してもらうか」
「言われるまでもない」
俺はジークとマリアを近くに呼び、彼らの首を掴んだ。
「お前らのお陰で助けられた。利息をつけて能力を返そう」
生殺与奪を発動する。
「指定、【生殺与奪】を除く全ての能力を彼らに」
俺はこれまで奪い返してきた能力の全てをジークとマリアに割り振った。戦闘系のスキルはジークへ、補助系のスキルはマリアへと分配すると、俺に残った能力は【生殺与奪】のみとなった。
「確認しろ」
スズは2人にステータスを確認するように指示を出した。それに従ってステータスを開いた彼らは、驚嘆の声を上げながら俺に視線を移した。
「感謝することはない、これは取引だ。受け取ったからにはお前たちにも履行してもらうぞ」
俺の発言の意図が分からずに首を傾げる2人。その意味を分かっているのは俺とスズだけだった。
代償を支払った俺はリゼの下へ歩みを進める。
綺麗な死に顔だった。ただでさえ色白のお前がこれ以上白くなってどうする。
今にでも起き上がり、ヤリエスを殺したことを褒めてくれるのではないかと期待してしまうが、そんなことは起こりえない。
俺はリゼの首に手を這わせた。脈のない冷たい肌。改めてリゼの死を実感させられる。
「㈱勇者興業取締役社長スズ・ヤナギよ。敵である俺の取引を受けてくれたこと、心から礼を言う」
「敵? 知らないなあ。君は㈱魔王の勇者ルシフ・テスタロッサだろう」
ジークとマリアは俺の正体を知らない。それを知れば、俺に向けていた感情の種類が少なからず変わる。スズはあくまで俺を勇者として扱うらしい。
「リゼを頼むぞ」
俺の向けた笑みに、頷きを返すスズ。
俺ではなくお前が生きろ。
「生殺与奪。指定、ルシフ・テスタロッサの命」




