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『ハズレスキル』と捨てられた荒野

「アルト、今日限りでこのパーティーを抜けてもらう」


王都にある冒険者ギルドの片隅。

パーティーリーダーであり『才能の剣士』と呼ばれる男・グラハムが、冷酷な声で言い放った。


「お前のスキルは【土いじり】だ。戦闘じゃ何ひとつ役に立たない。野営のときに地面を平らにするくらいしか能がないゴミスキルを、いつまでも養っておけるほど俺たちは甘くないんだよ」


グラハムの背後に控える仲間たちも、あざ笑うように肩を揺らす。

周囲にいた他の冒険者たちからも「まあ、【土いじり】じゃあな」「冒険者になったのが間違いだろ」と嘲笑が漏れた。


「荷物をまとめろ」

革袋を足元に投げつけられたアルトだったが、落ち込むどころか、ぱぁっと顔を輝かせた。


「えっ!本当ですか!?」


「ああ?なんだその反応は。ショックで頭でもおかしくなったか?」


「いえ、ありがとうございます!これで気兼ねなく畑仕事ができます!」


アルトは心の底から満面の笑みを浮かべ、深々と頭を下げた。


実は、無理やりダンジョンへ連れ回され、泥まみれになりながら剣を振り回す毎日に嫌気がさしていたのだ。

何よりアルトの望みはただひとつ。静かな場所で、思いっきり土と戯れ、自分が作った美味しい野菜を食べて暮らすスローライフを送ることだった。


追放を言い渡されたアルトは、跳ねるような足取りでギルドを飛び出していった。

茫然と見送るグラハムたちの視線など、今の彼には微塵も関係がなかった。


---


王都を遠く離れ、アルトがやってきたのは王国最果ての地——通称『死の魔境(カルナック荒野)』の入口だった。


凶暴な魔物が蠢き、大地は古代の毒と狂気的な魔力によって枯れ果ててい絶望の土地。空にはどよりとした暗雲が垂れ込め、普通なら立ち入るだけで死を覚悟するような場所だ。


しかし、<危険!立ち入り禁止>の立て札を事もなげに通り抜けたアルトは、どこまでも広がる荒地を見渡して感嘆の声を上げた。


「うわぁ、広いし日当たりも風通しも最高じゃないか!」


アルトの目には、恐ろしい魔境などではなく、「手付かずの広大な農地」としか映っていない。

毒で赤黒く変色した土も、ゴツゴツとした岩場も、彼にとってはただの「耕しがいのある最高の大地」だった。


「よし、このあたりを僕のマイホーム兼、自家製農園にしよう!」


アルトは背負ってきたボロボロのクワを、愛おしそうに力強く握りしめた。


「まずは土を解して、空気をたっぷり含ませたふかふかの状態にしないとね!」


掛け声とともに、アルトは気合を込めてクワを地面へと振り下ろした。


カツン!


その瞬間、異変が起きた。


アルト自身は「固い土を少しほぐそう」と思っているだけだったが、クワの先から黄金色の温かな光が溢れ出し、波紋のように荒野全体を駆け抜けたのだ。


【土いじり】——それは、世間が思っているような単なる雑用スキルではない。

大地の記憶を読み取り、万物の根源である土壌を『神聖な初期状態』へと再構築する、神級の権能だった。


クワをひと振るいするごとに、何百年も蓄積していた古代の汚染と毒が一瞬で浄化されていく。

枯れ果てていた赤黒い大地は、水分と滋養をたっぷり含んだ極上の黒土へと塗り替えられ、どんよりとしていた空気は瑞々しく澄み切った清涼な気配へと一変した。

さらに、ゴツゴツとした岩場の隙間からは、絶滅したはずの古代草が可愛らしい芽を覗かせる。


「うんうん!すごくいい土だ。やっぱり土は愛してあげないと応えてくれないよね」


アルトが額の汗を拭いながら満足そうに頷く頃には、彼を中心とした半径数十メートルが、満ち溢れる聖なる魔力で輝く『奇跡の聖域』へと変貌を遂げていた。


「やっぱり、採れたての新鮮な野菜をその場でかじるのが夢だったんだよなぁ。もぎたての甘いトマトとか、シャキシャキのレタスとか……楽しみすぎる!」


周囲の景色が一瞬で緑豊かな天国へと変わったことにもまったく気づかず、アルトはワクワクした表情でリュックから種袋を取り出した。


「よし、まずは基本のトマトの種から蒔いてみよう!」


その遥か遠く、魔境の最深部——。

何百年も眠りについていた伝説の赤竜が、恐ろしい目を見開いた。


『……な、何だこの気配は!?枯れ果てたはずの魔境に、神話の時代のような巨大な聖気が満ちていく……!?』


---

アルト

「よーし、ふかふかの土にトマトの種を植え終わったぞ!明日芽が出るのが楽しみだなぁ!」


ポチ(最深部のドラゴンの巣にて)

『ん……?何だこの心地よい魔力と美味そうな気配は……!?我も気になるぞ!

読者様よ、アルトの開拓をもっと見たいなら、最新話ページ下部の【小説の関連情報を見る】より【☆で称える】や【作品フォロー】を押すのだ!』

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