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第四話

おはようございます。第四話のお届けです。高校演劇連盟祭開幕!立村槇が舞台上を駆ける!お楽しみに。


 「続高校珈琲」

        (第四話)



         堀川士朗



¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶


昔、槇とともに共演した他校のハナゴンや前原、斎藤兄妹、スタッフの青木君の存在も僕は思い出していた。

みんな顔の造りはかなり曖昧模糊とした感じだった。

30年が経過している。無理からぬ事だ。

みんな高校生だった。

あの日。

高校演劇連盟祭の本番中の事だ。

槇は光っていた。

思いを馳せる。


¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶


開演。


幕が上がり、いきなり七人の黒沢ひろあき監督の格好をした俺たちが車座になって現れたので客席がどよめいた。

映画監督の大巨匠、日本の映画史を変えた黒沢ひろあきだ!

延々と、ああでもないこうでもない野伏せり退治の会議シーンが続く。

前原のセリフミスが二カ所あった。セリフが飛んで真っ白になっていたのでその都度俺が、


「しかし黒沢どの。そうは申されましても……」


と巻き戻してつじつまを合わせた。

二回目の訂正はお客さんにもバレて笑いが起きた。

前原め、こいつ殺してやる。

絵コンテと演出プランとカメラワークとロケハンが決まり、いよいよ野伏せり退治を決意し、トレードマークのグラサンを一斉に外してカバゴンをリーダーとする七人の黒沢ひろあきたちは野伏せり軍団と闘う。

戦闘シーン。

ブランゲットジェットシッティ―ンズの曲が大爆音で流れる。

運動神経のいい立村槙が見せ場を作る。

まるで美しい牝鹿のように躍動して流麗な殺陣を披露する。

俺は演技しつつもポォ~ッと見つめてしまっていた。

いかんいかん。

あ、俺の殺される番だ。


「生きれッ!」

「ドですか!デムッ!」

「赤ヒゲ危機一髪!」


と叫びながら次々に黒沢ひろあきたちは討たれていく。

合戦は終わった。

野伏せりは撃退され去って行った。

最後まで生き残った三人の黒沢ひろあき(樺山、斉藤兄、前原)は疲れ切って立ち尽くす。


「俺たち黒沢ひろあきは負けた。勝ったのはお百姓さんだ!」


とリーダー的な役どころの黒沢ひろあき役のカバゴンこと樺山が言ってシメる。

拍手が湧き起こる。


幕が降りて「七人の黒沢ひろあき1992」は終演した。

終焉した。

燃え尽きた。

夏から取り組んできたんだ。

やったよ。

俺たちは舞台上で円陣を組んで、


「お疲れーっ!!!」


と叫んだ。

スタッフの青木くんが調光室から駆けてきた。

血相を変えて袖から右手をグルグル回している。嬉しそうに笑顔でパニクっている。なんだろう。

幕の向こう側では拍手が鳴り止まない。

また緞帳(どんちょう)が開いた。


スタンディングオベーションだ!

総立ち!

800人のお客さんみんな笑顔!

勝った!

俺たちは勝ったんだ!

全員で一列になり手を繋ぎ深々と一礼した。

拍手が鳴り止まない。

下げた背中に拍手の振動が伝わった。

友情で青春っぽい。

でもこの友情で青春っぽいのは、一回こっきりでいいやとも思った。


¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶


           つづく



ご覧頂きありがとうございました。また来週土曜日にお会いしましょう。

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