世界から弾かれた男
ザーザー。
行ったり来たり。波が音を奏でる。サラサラとした微細な砂。上空では鳥達が奇妙な鳴き声で空の飛行を楽しんでいる。
そう、ここは海。時刻は午後の5時15分。
先程まで数百人の人々で賑わっていたその場所にはは今はただ独りの男がいるだけだった。その男の名は上村宥生。潮の臭いと爽やかな風を楽しみながら真っ正面の広大な海面に目を向けている。いつもの歪んだ微笑ではなくどこか寂しげな表情で。海面を眺めていた。
上村は知っていた。もうすぐ成宮達がここにやって来ることは。だからこの場を選んだのだ。誰にも迷惑をかけないこの場所を。
上村はなにも警官の心得を忘れた訳じゃないのだ。人を四人殺したのも仕方無く殺ったのだ。そして上村は最後に必ず笑みを顔に刻み暗殺を実行する。それは死んでくれてありがとう。と感謝の思いからの行為だった。
狂っている。上村自身もとっくの昔に気付いていた。自分は死んでるな。と身体ではなく精神が。だから、もう全てがどうでもよくなった。
誰を殺そうが。誰に恨まれようと。自分がいつ死んでも。世界を滅ぼそうとも。なんでもよかった。だから、上村は先程一人の女性を殺した。力を得るために。
勿論 この海の周りにはあっちの世界の力を持った者しか入れないように結界を張ってある。
だから、その女性の死は誰にも知られることなくこの世を去ったのだ。その女性は今はこの広大な海の深海を旅しているであろう。
上村の体にはだから鮮明な赤い血がベットリと付着していた。手にはサバイバルナイフを赤色に染めながらたずさえている。
そして、そのナイフを捨てた。綺麗な海に。ポチャンッ。と音がしてナイフは海に消えた。
そして、数秒海を相変わらずの表情で眺め終え指を一回鳴らす。すると何もない地面から二本の巨角を頭上に生やしたロックブレスホーンが黒い穴から出てきた。
数秒後空から二名の来訪者が訪れた。




