5-6 腐った宝
足元から地に向かって雷鳴が轟く。
今は黒雷のホヴィーに乗せてもらい、彼の雷の技を見せてもらっているところだ。上空から下に落ちる雷を見ることができるとは貴重な体験である。雷神様の気持ちとはこんな感じなのだろうか。
キファランガが乗るエアーバイクもいいが、帝国ギルドがよく使っているホバーヴィークル、略してホヴィーはかなりの高度まで上がることができる。その分値段もなかなかのものらしいが。五人全員が乗れるこのサイズの物はめったにお目にかかれないとザバックが言っていた。
雷の光と音というのは、本能的に怖さを感じる部分もあるが、自然の神秘に触れる高揚感もある。肚に響く、和太鼓のような轟音が気に入った。何度も無意味に雷を落としてもらう。下にいる魔物にとってはいい迷惑だろう。あちらこちらで逃げまどっている。
「あ! シオン! ピンクナマズが飛んでるよ!! 前話してた魔物だよ」
ゴーシュが下を指さして叫ぶ。落ちそうだ。
まあいい機会なので獲ってくることにする。
「おい、シオン! いくらお前でも無茶なことをするな。急に飛び降りるから驚いたぞ」
ピンクナマズを獲って戻ってくると、ザバックから問い詰められた。相変わらず心配性だ。
「魔法もないのに飛び降りたのですか? 無茶苦茶だ」と笑いそうもない黒雷が腹を抱えて笑っていた。
「ねえシオン。さっきのは前に言っていた木龍?」
キファランガはいい子だ。俺が指笛で呼び寄せた木製龍に興味を示してくれたようだ。
さすがに俺でもこの高さから落ちれば死ぬことくらいわかっている。木龍に飛び乗る練習も何千回もしている。先ほどはこの木龍にホヴィーから飛び移っただけだというのに、ザバックに驚かれてしまったのだ。そろそろ俺の行動に慣れて欲しい。
当然ゴーシュはそんなことは気にせず、ピンクナマズのお絵描きに熱中している。
ピンクナマズはその名の通りピンクのナマズなのだが、ヌメヌメの体になぜかふわふわのダチョウのような羽がはえており、その組み合わせが不気味だ。おまけに顎がしゃくれているのでフォルムが良いとは言い難い。そして不器用に空を飛ぶ。親雷性魔物らしく、黒雷の雷に誘われてきたのだろう。
鳩くらいのサイズなので少し難儀したが、滅多に姿を現さないのでこの機会に捕獲できてよかった。
遊びはほどほどにして、俺たちは地に降り立つ。目の前には巨大な暗闇が。今回の目的地は洞窟だ。ここで素材を回収すれば粗方の素材回収が終わる。むしろここが本丸とも言える。
「うわ~シオン、ここ懐かしいね」
ゴーシュの言うように、ここは俺たちにとって懐かしの場所だ。ここは初期の町、三十六支部にほど近い山間部。大量に低ランク魔物を狩り続けていた場所。魔物の素材の投げ捨て場。
生態系を崩すのではないかという勢いで当時は狩りをしていたわけだが、魔物はあふれ出し続けるのか一向に減る気配がなかった。そこで都合がいいと、延々とゴーシュに言われるがまま狩りをしていたのだが、その素材は持ち帰る必要もなかったのでそのままにしていた。
ゴーシュは生きたままの魔物を描きたいと言っていたのだが、どんなに調整してもうまくいかず倒してしまうことも多かったのだ。当時はまだ技術が身についていなかったと反省する。
魔物の素材をそこらへんに放置していくのもはばかられ、とりあえず穴に埋めていたがそれも限度がある。途方に暮れていたところ、おあつらえ向きな穴、洞穴があったのを発見してそこを素材の放置所にしたという流れだった。
洞穴の入り口に五人で立ち、中を眺める。誰も入ろうとしない。暗くて見えないとかそういうことではない。はっきりと、意味が分からないものが見えていたのだ。
真っ暗のはずの洞窟の中は鈍い朱に照らされ、黒い霧のようなうねうねしたぼやけた何かがはっきりと見えていた。言い間違いではない。ぼやけているのにそこにいるのは明確なのだ。変な音もしている。
「ねえシオン? ゴミを貯めすぎて未知の生物が誕生したことってない?」
ここに魔物の廃棄所産、未知の魔物が爆誕した。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
あと数話で完結です。





