4-12 クラン
魔境の立入を禁止されたシオンは珍しく落ち込んでいる……かに思われたが、町中での生活もそれなりに楽しんでいた。
「聞いたぞ、シオン。お前なんで町中で魔物収集ができるんだよ。謹慎中のやつから素材提供されて、ギルドの職員が驚いてたって聞いたぞ」
「ああ、それか。意外と町中にもいるもんだぞ。木の虚を探したり、道を掘り返したりすると見つかる」
「虫探しかよ」
今日も絶好調にツッコミをするザバック。
「ギルドにはしばらくの間、定期報告に行かなきゃいけなくなったからな。ほんの手土産だ」
「いらないだろ。心配して様子を見に来てやったのに、不要だったな。それと、町中からボーガン撃って魔物をおびき寄せるのもやめろ。ギルマスが激怒してた」
ザバックからの小言は聞き流すことにしているシオンは、武器の手入れを始めた。
場所はゴーシュのアトリエで、当然ゴーシュもそこでお絵描きをしている。
「あと、ギルドから報告を預かっている。今回の誘拐騒ぎは一旦落ち着いたそうだ。犯人もなぜか緑色に染まっていたし、それが『そのまま罪人の証でいいんじゃないか』ってことになったらしい」
「そうか」
被害にあった当本人たちもこんな様子だ。厳罰を望むどころか、すでに二人とも誘拐犯たちに対して興味をなくしてる。
いや、ゴーシュはしばらくの間、緑に染まった犯人たちに「描かせて!」とまとわりついていたが、ギルド職員に注意されて諦めたとも言える。
「とにかく。これから先もこんなことがあると面倒だ。何か対策を立てろ。ゴーシュ周りのセキュリティがあまい」
「確かに。俺もちょこちょこ力ずくで勧誘されたりしていたが、自分なら適当にあしらえた。だがゴーシュを狙われると弱いな」
「僕も魔境に入ってるときは警戒してたけど、さすがに町中は油断してたな〜」
「まあお前ら二人はフリーだら狙われるんだ。どこか適当なクランに入れ。それなら『他クランからFランカーを引き抜く』なんて不名誉なことまでは、どこもしなくなるはずだ」
「そうは言ってもな。肝心なゴーシュのイラスト集が『漏洩にあたる』とかって言う理由で、大抵どこも入れない。規約が緩いところがあればいいんだがな」
「……ゴーシュと離れることは考えてないのか?」
「ない」
逡巡も見せずに言い切るシオン。
「妬ける関係だな」
「ああ。いい関係だ(主に金銭面)」
「本当ならお前とまたバディを組みたかったんだがな」
ザバックが自嘲気味に笑う。
「ならザバック。お前がクランを作ればいい」
「なっ……。簡単に言ってくれるな」
「難しいのか?」
そう問われ、しばし考え込むザバック。「……難しくはある。だが逆に面倒が少なくなるかも? こいつらを管轄下におけば尻拭いをしなくて良くなると考えるとむしろ、楽?」と、独り言を漏らす。
「シオン。クラン設立にはいろいろと要件がある。資本金も必要だ。本気でクランを設立するつもりなら、俺もなんとかかき集める。お前はいくら出せる?」
「ゴーシュ。いくら出せる?」
お絵描きに夢中になって聞いてないと思われたゴーシュだったが、『今後絵を描き続けるために必要な行程』と認識していたのでちゃんと話を聞いていたようだ。
「えっとね、どのくらい必要なの? ああ、それくらいなら出せるよ〜」と、小切手を即切り出した。
小切手を受け取るザバックはしばし固まる。
「この小切手帳……。ギルドに相当金を預けてないと出されないタイプのやつだろ? シオン勧誘よりそのままゴーシュ飼い殺しの方がよっぽどクランの益になるな」
ザバックは深く考えるのをやめ、首を振って仕切り直す。
「それで? 代表は、シオン、お前でいいだろ?」
「よくないだろ。俺はいまだ仮Fランカーだ」
「あれ、この自粛期間で試験に受かったって言ってなかったか?」
「ああ、あれはエアーバイクの試験だ」
「そっちかよ!」
こうして、
【代表】ザバック(Bランク冒険者)
【出資者】ゴーシュ
【メンバー】(ランク順):
武器屋のマスター(Aランク)
ネリア(Cランク)
ローレンス(Eランク)
マリウス他、ムラの子供(Fランク)
シオン(仮Fランク)
という、異色の新生クランが設立された。
魔物情報
【木の虚にいる魔物】
穴に潜むわけではなく、木の中身を吸収して木に擬態している。夜穴を覗き込んだりすると吸い込まれる。
【道を掘り返すと出てくる魔物】
攻撃を受けると一定期間鉱物に擬態する。平らな鰐。
うっかり大通りで擬態したがために、次々と轢かれてなかなか擬態が解けないでいたところを、シオンに掘り出される
次回、2/4 20:00~21:00投稿予定です。





