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魔獣イラストレーターと最強のFランカー  作者: 成若小意
第三章 シオンのスローライフ        (推定累計ポイントD→Bランク)

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3-8  シオンの散歩

 ゴーシュがまたしても出版作業のために故郷に帰るようだ。ここ最近は度々母国に戻っている。こうして彼はお金を稼いできてくれるのだ。心を込めて送り出す。


 イラストに長期取り組んでいる際にも休暇が出されることがある。その際はいつ依頼が再開されるかわからないので、なるべく拠点にいるのだが、今回の場合は期日がわかっているので散策に出かけることにした。喋る魚のとき以来だ。


 目指すのは古龍の巣。こんな異世界に来たのだ。せっかくならドラゴンとか龍とか竜とかに会いたい。違いはよくわからないが。多分東洋か西洋かサイズとかの問題なのだろう。


 そして今回のお相手は、その龍の中でも史実で遡れないほど大昔からいるとされる、古龍。マリウスたちが楽しそうに話していた。


 普通に考えれば、生身の人間が恐竜のような存在に勝てるわけがない。しかし、最近のアクションゲームでは人がモンスターに登ったり、爆発物を使ったりだとかしてなんとか倒しているし、その姿を見ていたらなんとなく自分にもできそうだと思ってしまった。


 そう。思ってしまったのだ。


 そして今、目の前にそのチャンスがころがっている。ならば、試してみない手はない。だから、来たのだ。古龍の巣に。






 そこは砂魚の棲む地域の更に奥。花畑の魔物も越えていく。一日ではたどり着けないので携行食を食べつつ、野宿をしつつ、赤茶けた山肌を踏みしめながら進む。


 果たして、その谷は古龍が穿(うが)ったのか。もしくはたまたまそこにあり、古龍が気に入ったのか。まるで古龍のためのように、山には古龍にちょうどいい幅の道ができていた。


 古龍はとても巨大で、今は尻尾の方に立っているわけだが頭は遥か遠くにあり、全く見えない。背中には頑丈な甲羅のような鱗。ところどころ棘がある。棘すら巨大で、人の子のようなサイズのものから、大人の背丈を遥かに超えるものまである。


 あまりに巨大で、身じろぎ一つしていないようにも見えるが、よく見ると時折地響きとともに一歩前進しているようだ。その動作を見るに、動いたときに近くにいるだけでも擦り潰されそうに思えた。


「ミンチはイヤだな」


 つい、ぼやいてしまう。


 しかし折角ここまで来たのだ。引き返すのはもったいない。古龍にはなんの落ち度もないわけだが、少しばかり遊んでくれてもいいはずだ。


 少し思案し、思い切って山をさらに登っていく。古龍を挟むように左右に山になっているのだ。横から見たら、M字の谷間を古龍が進んでいるといえばいいのか。とにかく、M字の片側、少し高いところまで登って全景を見渡す。


 やはり、でかい。


 ある程度の高さまで登っているはずなのに、頭は遥か遠くにある。しかし、全容はつかめた。


 ……よく見ると頭に丸い耳のようなものがある。何となくあれに似てるな。丈夫な甲羅。ギザギザな節。長いしっぽ。頭に丸い耳。それは()()()()()。そう思うと、少し可愛くなってくる。


 似た生き物で、アルマジロトカゲというのもいたはずだ。そいつはまさに恐竜の小型化みたいな様相をしている。この古龍はアルマジロとアルマジロトカゲの中間のような姿だった。


 とはいえ、姿形がわかったから倒せるというものでも勿論ない。じっと眺めていると、ふと懐かしい匂いがする。ああ、ここにはアイツがいたな。そう思い出す。


 匂いを頼りに進むと、案の定都合のいいやつがいた。







 適当に捕まえた飛竜の足を掴んで、古龍の上まで滑空する。これもやってみたかったことではあるが、初回はやはりうまくいかない。暴れる飛竜に吹き飛ばされて、ぎりぎり古龍の背中に着地した。


 硬い龍の背中に乗ることができて、嬉しい。唐突に動くので振り落とされないように注意しながら、頭の方に行ってみる。


 やはり、頭には丸い耳があった。大きな瞳も見える。爬虫類だからまつ毛はないのか。もう少し良く見ようと思って、一歩踏み出すと、突然身をよじりだす古龍。


 足元を見ると少し柔らかい質感に変わっているようだった。


 ……ああ、なるほど。首に乗ってしまったから、くすぐったいのか。いや、爬虫類にくすぐったいとかあるか?


 そう思いつつも、実際首に乗った途端動きが激しくなる。おそらく硬い甲羅よりも感覚がよく、異物が乗っていることに気がついたのだろう。


 唐突に思いっきり吹き飛ばされる。


 何がどうなったのか。地面に転がっていることはわかるので慌てて体勢を立て直すと、目の前には古龍の鼻面。


「……よお」


 目の前の脅威に動悸がするが、口角は上がらずにはいられない。




 そこから三日三晩闘った。闘ったと言っても、古龍としては鼻先で遊んだだけなのかも知れないが。


 古龍が興奮し始めて突進してきそうになると、とりあえず横の山に登り、また飛竜で滑空して古龍の背に乗る。その繰り返しだ。飛竜の扱いもだいぶ慣れた。


 そこでふと気づく。俺の目的はなんだ……?  


 最初はとにかく古龍見たさにここまで来た。しかし、倒せるのか? そして倒してどうする?


 とりあえずそろそろ古龍にも悪い。せっかくなので鱗の一部だけいただいて、帰ることにした。


 その鱗が剥がしにくい。外側のものはもう古くなった角質のように取れてもよさそうに見えるのだが、取れそうで取れない。じれったい。そしていいところまで来ると、古龍もくすぐったいのかまた身悶えする。


 そこで落ちて、また飛竜で飛び乗る。


 途中からは何となくだが、古龍が頭を下げて動きを止め、乗りやすい様にしてくれているようにも感じ始めた。


 おそらくだが、ワニの背中を掃除する鳥。俺はその立ち位置にいるようだった。






 楽しい古龍との生活も、無事鱗が取れたことでいったん区切りをつける。そろそろゴーシュも帰っていることだろう。


 土産も手に入れたことだし、食料ももはや尽きて、現地で獲ったものばかりになっている。食べ飽きた。さっさと帰りたいところだが、帰りの道中でやたらとちょっかいを出してくる小さな竜がいた。


 山の壁面から飛びかかってくるので、そのたびに上手くからげて投げ飛ばすのだが、飽きもせずまた谷底から戻ってくる。


 先程までの俺も古龍にはこう見えていたのかもしれない。しつこいのはよくない。そう反省した。


 しかし、それにしても大分しつこい。少しイラっとしてしまい、つい退治してしまう。サイズは小さいのだが、竜は竜なのだと、実感。なんだかんだ二日闘い続けた。


 いつもは獲物は置いていくが、こんな立派な魔獣ならゴーシュも喜びそうだ。何とか運べそうなサイズだし、こいつも記念に持ち帰ることにした。古龍の鱗もあるので嵩張ることこの上ないが。


 生身のままひきずっていくのは流石にマナー違反と分かっている。血の道を作っていくのはどうかと思い、台車を作ろうかと思ったが難しい。仕方無しに適当な木を組んできそれに黒竜を乗せ、引きずっていく。


 引きずるのには変わりはないが、道は汚していないからよしとしよう。






 かなり遠出していたので、町が見える場所まで来るのにも苦労した。


 限界まで古龍と闘って(遊んで?)、そのあと黒竜と闘い、この大荷物を持っての帰宅だ。さすがに骨が折れた。


 町まではまだあるが、たまたま町周辺での狩りに出ていた少年たちに会う。マリウスのチームとは違うようだが、顔は見たことがある。


 少年たちは俺の引きずっている黒龍を見て口をハクハクさせていた。驚かせてしまったか。悪いことをした。


「ゴーシュってやつ分かるよな? 町に行ったらついでに伝えてくれないか? シオンが土産持ってくるって」


 とりあえずお駄賃を渡して、無言で首がもげそうなほど激しくうなずくこの少年たちにお使いをしてもらうことにした。せめてゴーシュには町の入口までは出てきてほしい。探すためにこれを町中引きずり回すのはいただけないから。






 ◇◇◇町にて◇◇◇


「ゴーシュどこ!? 大変だ! シオンが」


「はいはーい。僕はここだよ〜。シオンがどうしたの?」


 シオンがまだ町にたどり着かない頃。町の軽食屋にゴーシュはいた。隣にはザバックもおり、


「またやらかしたのか?」となぜかゴーシュ以上に反応がある。


 こくこくと少年たちがうなずき、「化け物……」と

 半泣きで後ろを指差した。


「シオンが化け物を連れてきたの?」


 優しくゴーシュがたずねると、皆首を振り、「シオンが化け物なんだよ」と口々に言う。


「それは知ってたでしょ。とりあえず何があったか説明して!」


 そんなやり取りをしている間に、何やら町の入口のほうが騒がしくなってきた。


「……きっとあれだね」


 そう皆顔を見合わせ、さっさと勘定を済ませて騒ぎの元へ向かった。







「おう、ゴーシュ」


「何やってるの! シオン」


 町の入口には、いつも通りの何くわぬ顔で立っているシオン。しかし、その足元には禍々しい黒い物体が。人だかりもそれを見て近づきたいが近づけないでいる。


「ああ。ちょっと遅くなってしまったからな。土産だ。喜ぶかと思って」


「え〜っと、黒竜の狩りにいってたの?」


 珍しくゴーシュが戸惑いながら尋ねる。


「違う。散歩だ」


「シオンのばかー!!!」


「ばかとはなんだ。」


「またシオンがやらかしたのか?」騒ぎを聞きつけ武器屋の爺さんまで出てきた。


 ゾロゾロと人が集まってくる。


「俺はちゃんとしている。散らかさなかったし、救難信号も出さなかった。人様には迷惑かけていない」


「喜ぶと思ったのに」と心外そうな顔をしながらシオンがやや不貞腐れている。


「こんなことして、僕が喜ぶと思ったの?」


 周囲の者は、ゴーシュの言い分ももっともだと思った。報酬も何も関係なしに、ふらりとついでに魔獣を狩ってくる。そんなの咎められて当然だと。


「何度言ってもわからないんだね! 僕は、生きている魔物が見たいんだって!! 今度はちゃんと僕も連れて行ってね!」


 そうのたまうゴーシュ。


 この二人組、まともに取り合ってはムダだと、人だかりは早々に解散した。



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エンジェライト文庫様より2023/12/23電子書籍化
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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後のゴーシュさん。 最後のゴーシュさんにもっていかれましたー! [気になる点] シオンさん、あれだ、ねこ。 ごっきーとかねずみとかの死骸を、戦利品とばかりに飼い主の枕もとにプレゼントする…
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