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さみだれは晴れ  作者: 冴木甲士
中一 一学期
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001. 彼女はカルシウムが足りないんじゃないかな

 中学一年になる少年、五月雨蓮真(さみだれれんま)は新しい学び舎の門に足を踏み入れる。

 小学校から中学校になるといっても特に面子が大きく変わるわけでもない。蓮真は小学校のときと同じだろうなと思いつつ、暇潰しに校内を散策することにした。

 校内を彩る桜並木を横切りながら第二体育館、プール、校舎と巡っていく。いずれもできてから大分年数が経っているらしく外壁が渋く褪せていた。

 プレハブの辺りまで歩いてきたところで少女の姿が目に入った。その少女はスレンダーな体型で、緩やかにウェーブの掛かった髪が肩まで伸びている。

 少女はこちらに気が付くと声を掛けてきた。

「あ、五月雨じゃん」

「え、何で俺の名前知ってんの怖い」

「つい先月まで同じクラスだったろーが!」

「でも俺はお前のこと知らんぞ」

松田玲(まつだれい)! 少しは思い出せ!」

 松田玲と名乗る少女が怒鳴ってくる。こんな気の短い女子が同じクラスにいただろうかと記憶を辿ったが、思い出せなかった。


「イヤチョットカラカッタダケダヨゴメンネ」

「何その白々しい嘘」

 玲は蓮真を見て怒りを通り越し、ため息をついた。

「で、何してたの」

「校内の建物を見て廻ってた」

「へえ、こんな朝早くに」

「昨日入った店で栄養ドリンク飲み放題コースを注文したら一睡もできなかった」

「ホントに何してたの⁉」

 そんな店どこにあるんだ、とか言いたいことが色々あるが蓮真は会話が飽きたかのように他所へ向かって歩き出した。

「じゃあな、名も知らぬ少女」

「つい今しがた名乗ったわ」

「もう二度と会うことはないだろう」

「この学校で顔合わせるっての」

 蓮真はすたすた歩いて去っていった。

 二人は小学校の頃、特に接点を持っていなかった。たまたま早くに目が覚めてしまい、仕方なく早目に登校して学校の敷地を少し歩いていたら知った顔を見たので興味本位に話しかけてみたらこんなエキセントリックな奴だったとは。

 あんまり同じクラスになりたくないな、と玲は小学校からの友達と一緒になることに期待を掛けた。


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