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守ってあげたい-20

 中川はテニスコート裏に着いて驚いた。十数人の学生が、学生でないやつもいたかもしれないが、たむろして待っていた。さっき叫んでいた男が、驚いている中川の前に立った。

「よぉ、昨日はおれんとこの連中が世話になったらしいな」椎名

「あんたが、椎名か?」中川

「ご存じでしたか。ありがたいことで」椎名

冷たく見つめる目に中川は戦慄を覚えた。どこか無機的な目に、表現しがたい怖さがあった。

 中川が目を逸らすことができず立ち尽くしていると明智が後ろからやって来た。

「よぉ、みゆき。久しぶりだな。メールじゃ、ラチがあかねえからな、こうしてお迎えに来させてもらいましたよ」椎名

明智は中川の後ろに近づきながら、じっと椎名を睨んだ。その視線は、中川には見たことのない厳しさを含んでいた。

「昨日の礼をしておきたいんだが、まぁ、みゆきを渡してくれりゃ、見逃してやってもいい」椎名

「ばかなこと言うな。みゆきちゃんは、物じゃない」中川

「残念だな。みゆきは俺の物なんだ」椎名

「なに?」中川

「みゆきは俺の女なんだ」椎名

 中川が明智を見ると、一瞬だけ目があったが、明智はすぐに逸らしてしまった。俯いたまま唇を噛んでいる明智を見て中川は悔しく思った。

「ガキにはわかんねえかもしれねえけどな」椎名

 椎名はそう言いながら笑った。まわりの連中もうすら笑いを浮かべていた。重苦しい雰囲気が明智を押し潰しそうだった。そんな雰囲気を中川が笑い飛ばした。

「なんだ、どうしたんだ、ガキ」椎名

「間違ったことを言っちゃあいけねえよ。あんたの、彼女だった、んだろ。いまは俺の彼女だ!」中川

 大きく言い切った中川の勢いに椎名は一瞬言葉を噤んだ。驚いて振り向いた明智に向かって中川は、強く頷いた。

「ハハハ、けっこうけっこう。大したもんだ、すぐに新しい男を喰わえ込むとはな。だが、みゆき、おまえのやってきたことをこいつに話したらどうなるかな」椎名

「やめて!」明智


 明智の言葉も虚しく、椎名は明智の過去を語り始めた。折悪く駆けつけた新田らの前で明智は羞恥の生贄にされた。


 沈黙と静寂の中、誰も口をきくことできない状態で、椎名のうす笑いだけが漂っていた。そして、明智が自ら口を開いた。

「そうなの。いま、椎名が言ったことは、全部、本当よ。あたしは、あたしは……」明智

泣き出しそうに震えた声で、しっかりと明智は語り出した。それは、いま椎名が話したことの繰り返しでしかなかったが、一層現実味のある言葉となって響いた。新田も坪井も立花もじっと見ていた。由起子もじっと見ていた。中川は、すぐ横にいるこの健気な少女をただじっと黙って見守るしかなかった。

 明智は話し終わるといままで堪えていた涙をつうと流した。それを見て椎名は笑った。「どうだ、こいつは俺たちの仲間だ」椎名

「違う!」中川

 中川は叫んだ。

「あんたたちの仲間だった、んだ。間違えちゃ困るな。みゆきちゃんは、今は俺たちの仲間だ」中川

にやりと笑って睨む中川と歯を噛みしめて睨む椎名。二人は一気に飛び掛かった。


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