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神授スキル【異世界ショップ】

商人ギルドを出た悠真は、まず最初に宿を探した。


異世界に来た初日。


右も左も分からない状況で、野宿を選ぶ理由はない。


「まずは寝る場所を確保しないとな」


元の世界でも、新しい環境で仕事を始める時は、まず周囲を知ることから始めていた。


生活環境。


人の流れ。


必要とされているもの。


商売を始める前に。


まずは自分自身の基盤を整える。


それが悠真の考え方だった。


街を歩き、見つけた宿屋へ入る。


木製の看板。


温かな明かり。


中からは料理の香りが漂っている。


「いらっしゃいませ」


受付の女性が声をかける。


「一泊お願いできますか?」


料金を確認すると、一泊するだけなら問題ない金額だった。


悠真は王城でもらった袋を確認する。


中には銀貨10枚。


「当面の生活費としては十分か」


部屋へ案内された悠真は、荷物を置く。


簡素な部屋。


しかし、今の自分には十分だった。


「さて……」


悠真はベッドに腰掛ける。


「これからどうするかだな」


商人として生きる。


そう決めた。


だが、肝心の商品がない。


その時。


頭の奥で声が響いた。


【神授スキル】


【起動準備が完了しました】


悠真は顔を上げる。


「……来たか」


目の前に、半透明の画面が浮かび上がる。


【神授スキル】


【異世界ショップ】


「ショップ……?」


表示された画面には、いくつもの項目が並んでいた。


【店舗レベル】


Lv1


【利用可能カテゴリー】


・食品

・飲料

・日用品


悠真が画面に触れる。


すると、詳細な商品一覧が表示された。


【食品】


・おにぎり

・パン

・お菓子


【飲料】


・水

・お茶

・ジュース


【日用品】


・タオル

・バスタオル


「……」


悠真は息を飲む。


そこに並んでいる商品。


それは、元いた世界では当たり前に存在していたものだった。


「日本の商品……」


異世界に来て初めて感じた、元の世界との繋がり。


しかし。


悠真はすぐに冷静になる。


「でも……」


「商品があるだけじゃ商売にはならない」


大切なのは、


誰が必要としているのか。


いくらなら買ってくれるのか。


どう利益を出すのか。


それを考えることが商人の仕事だ。


画面を確認していると、別の項目が表示された。


【ポイント変換】


「ポイント……?」


説明文が浮かび上がる。


【異世界ショップポイント】


商品購入に使用する専用ポイント。


日本円を基準として換算されます。


1ポイント=1円相当。


悠真は王から受け取った袋を取り出した。


中には銀貨10枚。


【銀貨5枚をポイントへ変換しますか?】


【変換後:5000ポイント】


「なるほど」


悠真は頷く。


生活費として残す金。


商売のために使う仕入れ資金。


分けて管理できるわけだ。


「商売をするなら、資金管理は基本だな」


迷わず、銀貨5枚を変換する。


【5000ポイントを獲得しました】


「これで準備はできた」


試しに、一つの商品を選択する。


【商品名】


天然水(500ml)


すると表示が変わる。


【仕入れ価格】


100ポイント


【購入しますか?】


「……」


悠真は笑った。


「ちゃんと仕入れが必要なのか」


無料で手に入る力ではない。


仕入れる。



売る。



利益を出す。


それなら。


これは間違いなく商売の力だ。


【100ポイントを消費します】


【購入しますか?】


選択する。


次の瞬間。


ポンッ。


目の前に一本のペットボトルが現れた。


「……本当に出るのか」


手に取る。


重さ。


感触。


見慣れたラベル。


間違いない。


日本の商品だった。


しかし。


悠真が次に考えたことは別だった。


「これを、いくらで売るか」


商人としての思考が動き始める。


さらに画面を確認する。


すると、一番下に灰色の項目が表示されていた。


【???】


【解放条件:店舗レベル上昇】


「まだ使えないものがあるのか」


現在表示されているのは、ほんの一部。


まだ知らない機能が、この先にある。


【現在店舗レベル】


Lv1


【次のレベルアップ条件】


商人としての信用を獲得すること。


「信用……」


悠真は少し笑った。


「商人らしい条件だな」


強さではない。


魔物を倒した数でもない。


必要なのは。


人から信頼されること。


悠真は商品一覧を見る。


そして。


一つの商品で指を止めた。


【おにぎり】


「まずは……」


悠真は小さく笑う。


「これで、この世界の人達に聞いてみるか」


日本では当たり前だった食べ物。


しかし。


この世界では、きっとまだ誰も知らない。


ハズレ職業と呼ばれた商人。


最初の商品は…


一つのおにぎりから物語は始まる。

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