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海百合中戦徒会活動記録  作者: 如月ケイ
第二章 海百合町襲撃事件編
13/21

第13話 ボスを倒しに行くよ

 5月17日13:24 1₋B教室


 突如として校内に鳴り響いたサイレン音が響き渡った。

 突然のことだったので寝ていた俺は舌を噛みそうになった。そして、頭を軽く小突いて意識を覚醒させながら放送で流れている指示に耳を傾ける。


「千里、すぐに下駄箱に向かうぞ!」

「うん!」


 サイレンに驚いたのか呆然としている千里に声を掛けてすぐに教室を飛び出す。後ろから同じようについてきている千里を横目で見ながら廊下を駆け抜けて下駄箱に向かう。下駄箱に着くとそこには三嶋先輩が立っていた。


「よし、1年B組の2人も来たね。じゃあ君達2人には西船深駅の方に行ってもらう。そこで3年の宝江岳斗(たからえがくと)の指示に従うんだ。じゃあ準備ができたらそこの転送装置に乗ってね。健闘を祈ってるよ」

「はい! 頑張ってきます!」


 そう言って俺と千里は転送装置の上に乗る。すぐに視界が光に包まれ、体が軽い浮遊感に襲われる。光の眩しさに目を瞑るも一瞬でその光は消え去り、視界にはさっきまで居た校庭とは違う光景が現れた。何度か見たことがある景色、すぐにそこが西船深駅の前だと気づいた。

 流石は転送装置、学校からこの駅までは数キロはあるはずだが一瞬で来れてしまった。この技術が普及すれば移動に時間をかけることもなくなるのだが、この技術は最近になって作られたものでまだ長距離の移動はできないし大量生産もできてない。ならなぜ俺たちが使えるのかと言うと、この技術の作成に海百合中(うち)の科学技術部が関わっているかららしい。こんなもの作るなんて海百合中(うち)の科学技術部ヤバくない?

 俺がそんなことを考えていると後ろから近付いてきた1人の男子生徒が話しかけてきた。


「君たちが1年の2人だよね。裕生から話を聞いてるよ。僕は宝江岳斗(たからえがくと)、戦徒会3年で会計を務めている」


 話しかけてきた男子生徒は3年の宝江先輩だった。名前と所属を言われたので俺も挨拶を返さなければ。


「戦徒会1年、武田翔です!」

「同じく戦徒会1年、功刀(くぬぎ)千里です!」


 俺に続いて千里も挨拶した。ピシッと姿勢を良くして元気よく挨拶してる千里も可愛いな。うん、最高。


「武田君に功刀さんね。とりあえず状況説明しようか」


 宝江先輩はそう言うと今の状況を事細かに説明しだした。


「とりあえず市民の半分ほどは避難用の結界に避難できた。でもまだ魔物が残っているからその殲滅を2年主導で行っている。大体こんな感じかな。それでまず、確か功刀さんは回復系の魔法が使えるんだよね?」


 宝江先輩が千里にそう聞くと「使えます!」と千里が元気に答えた。


「なら功刀さんには結界の中に入って怪我人の回復を任せたい。一応1人だけ2年生が中で避難した人の対応してるからわからないことがあったら彼女に聞いてくれ」


 そう言うと宝江先輩は指を軽く振った。すると空中に裂け目ができ、中には人がたくさんいるのが見えた。


「ここから結界の中に入れる。じゃああとは任せたよ」

「了解です!」


 千里はそう言って宝江先輩が開けた裂け目から結界の中に入っていった。


「さて、これで怪我人は大丈夫だね」

「それで先輩、俺は何をすればいいですか?」

「武田君は僕と一緒に魔物の殲滅だ。じゃあついてきて」

「はい!」


 それから数分、俺と宝江先輩は道路を走りながら2年生の先輩が斃し損ねた魔物を探しているのだが、全くと言っていい程いない。魔物のまの字すら見えない。本当に戦いなんて起こっているのかと疑うがそこらで聞こえる銃声が実際に戦いが起きていることを俺に理解させる。


「全然いませんね」

哀川(あいかわ)の奴ちょっと残しとけって言ったのに殲滅しやがったな(小声)」


 宝江先輩が何か言っているが声が小さくてなんて言っているのかは聞き取れない。でもまあ、俺が聞く必要もないんだろう。そんなことを考えながら走っていると。


「グルル……」


 道路の脇から2体のゴブリンが現れた。


「よかった、残ってた」

「よかった?」

「あっいやっ何でもないよ! それより敵に集中して!」

「……」


 焦る宝江先輩の姿を怪しく思いながらも今はそんなことを考えている場合ではないと気持ちを切り替えて目の前の敵に集中する。

 敵はゴブリン2体、身長は俺より少し低い程度、2体とも右手に包丁のような刃物を持っている。ゴブリンはすばしっこい動きが特徴と聞いている。対して俺の武器は刃渡り1.8m程の大剣、大きな剣のため振りが大きく隙も多いが一撃がかなり重い。正直かなり不利だな。隙が多いからヒットアンドアウェイが得意なゴブリンにはかなり攻撃されてしまうだろう。ならば、その弱点は俺の能力で克服すればいい。

 俺の能力は()()の操作。本来なら持てないような重さのこの大剣も身体強化と能力のおかげで持って構えることができている。しかもこの大剣は特注品で見た目以上にかなり重さがある、製作者によると作った中でこの剣が一番重いって言われた。


「ゴブリンの特徴はわかってる?」


 突然そう聞かれたので俺は咄嗟に知っていることだけ口にする。


「すばしっこい動きと群れるとヤバイってやつですよね?」

「そう、よくわかってるね。それじゃあ大剣が不利なことも理解してるよね」

「はい、そうですね」


 的確に俺と敵との相性を伝えてきた。俺自身もそれは理解している。能力で剣を軽くしているおかげで普通の大剣よりは振りが速いが取り回しが悪いのは変わらないままだ。


「でも今回は好きに戦っていいよ。君に当たる攻撃は全て僕が防御する。君に合わせてあげるからやりたいようにその大剣を振りな」

「──はい! わかりました!」


 防御を先輩が全てやってくれる、防御のために剣を振る必要がない、なら、少し不安はあるがやってみるしかない。そう、全ての行動を攻撃に全ブッパしてとにかく相手を斬りに行く。


 足でしっかりと地面を捕らえる。両手で柄をしっかりと握り大剣を右脇に構える。そして、前に向かって駆け抜ける。

 近づいてくる俺に気づいたゴブリンも人ならざる声を出しながら近づいてくる。その勢いのまま衝突する寸前で俺は左足で地面を力強く踏み込み、右脇に構えた大剣を斜め上に向かって斬り上げる。

 ズバッと音を立てながら肉を断つ感触が剣を伝って俺の手に届く。


「1体」


 向かって来ていた2体の内、前を走っていた方のゴブリンは俺の大剣に反応することが間に合わずに斬撃を真正面から受け、上半身と下半身が真っ二つになった。後ろを走っていたゴブリンはギリギリのところで大剣に反応し斬撃を避けた。そして、素早い動きで俺の横に回り込んで包丁を突き立てながら飛び掛かってきた。


「──くっ」


 大剣を勢いよく振ったせいで体が硬直し、頭では回避しなければいけないと分かっていても体が動かない。絶体絶命と言うやつか。しかし、この状況でも俺に死という恐怖は無かった。なぜなら、宝江先輩は言ってくれた。俺に当たる攻撃は()()()()()()()()()ってね。


「はぁ、頼ってくれるのは嬉しいけど無茶は良くないなぁ」


 宝江先輩の声が聞こえたと思った瞬間、飛び掛かってきたゴブリンが空中で動きを止めた。いや、正確には透明な何かにぶつかるようにして動きを止めた。


「はぁっ!」


 俺は動きを止めたその一瞬を逃さずに大剣をゴブリンの腹に突き刺した。腹に大剣を刺されたゴブリンは数秒間ピクピクと動いてから体から力が抜けたようにだらんとなり絶命した。大剣を伝ってゴブリンの赤い血が流れてきたがあんまり血には触れたくないのですぐにゴブリンの腹から大剣を抜いて血を振り払った。

 俺が大剣を鞘にしまうと後ろからコツコツと足音がしたので振り返ると宝江先輩が怖いような笑顔で近づいてきていた。そして宝江先輩は俺に近づいて頭をコツンと拳で叩いた。


「全く、僕を頼りすぎだ。確かに防御は全てやるとは言ったけど、だからって防御を完全に捨てて凸るのは駄目だよ」


 宝江先輩は怒っていた。まぁ確かに作戦なんか考えずに敵を斬ることだけ考えて突撃したのは愚策だった。それは俺も自覚してるから何も言えねぇ。


「すいません。でもマジで防御のタイミング神でした。ありがとうございます!」

「今回は僕がいたからいいが他だったら君死んでたぞ。僕がいない時はあんな無茶は絶対にやるなよ」

「じゃあ先輩がいる時だけにしますね!」

「そういう話じゃ──っ!?」


 突然、大きな爆発音が響いた。花火の大玉なんか比にならないような轟音に俺は咄嗟に耳を塞いだがタイミングが遅かった為、耳鳴り頭の中で響いている。


「──、────」

 

 耳鳴りのせいで上手く聞き取れないが宝江先輩が通信機に向かって何か話しているのが見える。

 耳鳴りが少しずつ落ち着いてきて周りの音がしっかりと聞こえ始めて宝江先輩の通信も聞こえてきた。


「わかった。近いから1年の武田と向かうね」

「どこに向かうんですか?」


 俺がそう質問すると、宝江先輩はニヤッと笑みを浮かべながら……。


「ボスを倒しに行くよ」


 と言った。

 どうもー如月ケイです。

 というわけで第2章も後編に入りました。後編が終われば3章が始まります。正直章のストックは10章分くらいあるんですがそれを文字に起こすのがかなり時間かかるんですよね。

 それと今度9月のコミティアにサークル参加するのでよろしくお願いします。友人との合同誌で俺が書いたのまさか恋愛小説です。ぜひサークルにお越しください。多分売り子してるので。

 では、またの機会に。

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