3章 379話 大バカ三人衆
三章 三百七十九話 「大バカ三人衆 」
俺は学校が夏季休業になったので悠々自適な生活を満喫していた。
「ふぁ〜あ 」
夏休みの俺流過ごし方はというと昼間はゲームして、ゴロゴロしてを繰り返してる。まぁ、そのあとの夜からはちゃんと仲居さんやってるからいいよね。
ちょっとゴロゴロしてるのにも飽きてきたので外の空気吸って来るか。
そう思い立ち少し外へでるとーー
「おう、燈じゃん 」
「兄さん 」
「今日休みか? 」
「うん、今日はシフト入ってない。今から施設へ行って子供達と遊んでくるところ 」
燈は仲居の仕事が休みの日はシスターさんとこで子供達と遊んでる。ちなみに俺もほぼ毎日行ってたりする。
「そっか。あんまし遅くならんうちに帰ってこいよ 」
「わかったーー あっ、そういえば 」
「? 」
「今度友達と遊園地行ってくる 」
「!? 」
なん…… だと!?
落ち着け俺よ、燈は三年生から翠鳴に来た。お友達ちゃんとできてるのかっていつも心配してた。だからこれは兄として、家族として喜ぶべきこと。
しかし、俺の脳裏には実にキモイ疑心が生まれていた。
「じゃあ行ってきます 」
「ま、待て 」
「なに? 」
ドン引きされる覚悟で聞いてみよう。
「そのお友達ってーー そのぉ、なんと言いますかぁ 」
男? 彼氏? そのクソ野郎殺していい?
「友達がなに? 」
「学生? 社会人? 」
学生なら殺す、社会人なら抹殺する。
しかし俺も桜守と恋び…… 恥ずかしいな。
だが燈にはまだ早い! というか俺だけじゃねーぞ、高井さんも支配人も絶対おんなじこと言って阻止するもんね!
「どういう意味? 同じクラスの子と行くんだけど…… 」
「…… 」
そうですよねー!
普通に考えてそうですよねー!
よかったぁ、殺人を犯さずに済んで。
「兄さん? 」
「おぉ、わリィわリィ! なんでもねーよ。気をつけて行ってくんだぞ〜 」
満面の笑みで燈を見送って俺は安堵の中再び惰眠タイムに突入した。
ーー それから数時間後
夕方になって俺は旅館へと向かう。燈が友達とお出かけなんて聞いたから俺はニッコニッコである。
「どした宮田、気持ちわりー顔でうろつきやがって 」
「いやぁ燈がっすね、お友達と出かけるらしいんすよ。友達ができたみたいで安心したんす 」
「お! そりゃあいいな! どこ行くんだ? 」
「遊園地みたいです 」
「そうかそうか、ならたくさん小遣いやらんとな 」
「そうっすね〜 」
いつもの俺なら貰うのは嬉しいけど、あげるのはとことん渋る。だが今回ばかりは本当に嬉しいので喜んで渡すつもりだ。
「珍しく素直じゃねーか。いくらやるん? 」
「せっかくの遊園地っすからね、とりあえず3万くらいはあげようと 」
燈に渡そうとしまっていたお金をポッケから出す。
「3万!? ケチくせぇ野郎だな〜。あんな真面目に仕事やって、愛想もよく接客して、俺ら板場にも懐いてくれてる子に3万だ? 漢ならこれくらいが普通だろうよ 」
そういうと高井さんは財布から5万円出してきた。
「ぐぬっ…… 」
「はっはっは、まーだ宮田にゃあ無理かもな 」
この時の俺はどうかしていたーー
燈に友達がいることを嬉しく思い、燈にいいとこ見せたいと思い、目の前のオッチャンに負けるわけにいかないと意地になってしまったのだ。
「やっだなぁ! 俺がそ〜んなケチなワケないじゃないっすかぁ! 片方のポッケから3万ってことは、もう片方のポッケからも3万出てくるんすよ 」
手品師の才能でも開花したのか、俺は咄嗟にポッケに突っ込んであった財布からなけなしの3万を取り、あたかも用意してたかのように何食わぬ顔で出す。
「お、おぉ!? ばっかおめぇ、俺だって5万なんてちいせぇことしねぇよ。こちとら料理長だぞ? お前を試すのに5万出しただけで、本当はもう5万用意してたんだ 」
「なっ!? 」
俺と高井さんが騒いでると、そこへ支配人が様子を見に来た。
「どうしたの、2人とも 」
「いやそれがっすねーー 」
かくかくしかじかゴックンコで説明する。
「なるほどね、それなら2人ともまだまだ甘いよ 」
2人の争いが3人の争いへ発展。
なぜなら、支配人が懐から財布を出して20万もの大金を置いたからだ。
「にじゅ…… 」
「クソっ! 財布にゃあ13万しかねぇ…… 」
「まだまだ君達2人よりは人生長く生きてるからね 」
そうだった、燈大好き超大好きマジ大好きクラブは俺を含めて3人いたわ。
支配人なんてガチで娘にしようといつも企んでる。溺愛度だけなら負けるかもしれないレベルさ。
「そうだ! 俺ちょいと用事あるんで、コンビニまで走ってきます 」
ダッシュで金おろしてこよう(※アホ)。
「バカめ、俺はタンス貯金だからすぐ持ってくんべ! 」
「ふふふ、君達がどれだけやろうが、僕の燈ちゃんへの愛には勝てまい。なぜなら僕にはコレを出す準備がある 」
支配人は身につけてる腕時計を外して俺達の前に差し出す。
「くっ…… 」
「こんの…… 」
俺も高井さんもこの時計の価値を少しは知ってる。以前、支配人が見せびらかしてきて800万くらいしたと話してた。
「質屋に行けば、まだ600万はいくだろう 」
「い、いや、俺だって手持ちのゲームとカード売ってーー 」
「俺だっておめぇ、刀と着物売ればーー 」
大バカ三人衆が騒いでたら、今度はそれを聞きつけたお嬢さんがやって来た。
「なに騒いでんのよアンタら 」
「いやそれがーー 」
かくかくしかじかコロコロりん。
「全く…… 大の男が揃いも揃って…… 」
事情を聞いたお嬢さんはとても呆れてらっしゃるようだ。
「そんなにもらったって燈ちゃん迷惑するでしょ。これだけあればたくさん 」
そう言うと、お嬢さんはそれぞれのお金の束から一枚ずつ取って机にまとめた。
「3万じゃ少ないんじゃないっすか? 」
「そうだぜお嬢、万が一を考えてだな 」
「うんうん、地震とか何かあった時大変だよ 」
「そのためのケータイでしょうが。それに、たくさんもらいすぎても燈ちゃん困っちゃって、遊園地楽しめなくなったらどうするの? 」
「「「たしかに 」」」
「自分を可愛いがってくれる人達に、それぞれお小遣いもらえたらきっと嬉しいはずよ。だから、"お小遣い程度"にしときなさい 」
「そうっすね、わかったっす 」
お嬢さんの言う通りだ。
燈に友達ができて、しかも遊園地に行くと聞いてはしゃぎすぎちまった。
「ならこの時計は燈ちゃんの式の…… いや、やっぱり許さん 」
「俺もだぜ支配人、式あげるまでに斬っちまう 」
「俺も手伝います 」
「はぁ、ウチの男衆は…… 」




