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第五百二十七話 宇宙(そら)で羊は めえと鳴く


「追加情報が入りました!トム選手と共に戦っているのはウォンジィ選手です」


「なるほど。会敵の時点で巫女に成り代わっていたと」


 解説を聞いて思い出した。冒険者ギルドを訪ねた時にコオリが凍らせた人狼の男。


 海賊のクルーに見覚えのない顔が一人混じっていると思っていたが、彼がそうだったのか。

 あの時はグルダさんの姿をしていたから同一人物だと気付かなかった。


「しっかし変身系の能力被り多くね?」


 うちのたべっこ暴君に猫目マジシャン、キャプテンと人狼に加え予言者が連れていた獣系ボーイ。

 声だけなら俺も成りすまし可能だし、マイケルが使った活動写真の偽装を含めるとキリがない。


「化けの皮ごとボロ切れになりなさい」


 針山のような黒曜石の集合体が甲高い音を立てて渦巻き、獲物を求めて殺到する。

 迎え撃つウォンジィの矢はあっという間に飲み込まれ木屑と化した。


「どけどけ!」


 人狼ミンチを阻止すべく、急行したキャプテンがフォークリフトを乗り捨て突っ込ませた。


 狙いは針山ウェーブの先にいるツインテールの女王様。

 宙を舞う輸送車両を彼女は一瞥する事もなく、ドレスをひるがえすだけの動きで華麗にかわす。


「お返しですわ」


 金の杖の一振りで黒曜石の渦が車両を持ち上げ、二人の方へ投げ返した。


 メタモルフォーゼを使わずとも簡単に対応できる、質量をぶつけるだけの単純な攻撃。

 ところがキャプテンが選んだのは回避でも迎撃でもなく、オーガの装甲を纏っての完全防御。


 両腕で顔を覆い、衝撃を受け止めた彼の横にフレームの歪んだフォークリフトが転がった。


「チッ」


 頑強な皮膚のおかげで怪我はないが、キャプテンの顔には苦々しい表情が浮かんでいる。


「己の策を利用される気分はどうかしら」


 女王様がしたり顔で男達を見下し無様だとあざ笑う。


 一連のやり取りで人狼の変装以外にも仕込みがあるのは分かった。

 ただ外から見ている方には全く伝わらない。当事者以外にも理解できるよう説明してくれ。


「モニターをご覧ください!秘密はあの車両に隠されていたのです」


 種明かし担当、ダークサイド夢川の声でカメラがフォークリフトに注目する。

 大きく映った車両に特におかしな点は見つからない。


「まずはラキチームと最初に接触した場面を確認しましょう」


 画面が切り替わり、イケメン達が搬入口でキャプテンと出会った映像が流れた。


 あそこで二人が脱落してしまったわけだが、よく考えると現場にいたのは本物のラキさんではない。

 眠りの魔法は一体どのタイミングで使われたのか。


「ここです!ここに注目して下さい!」


 映像は車両が二人の横を通過する直前で停止した。


 ボディの側面にはポップな羊のイラストがあるだけで、不自然な点はないように思える。

 しかしそれを目視するなりベンが慌ててコオリを雪の中へ押し込んだ。


 彼は眠りの魔法が発動すると確信して仲間を庇ったのだ。


「そしてケヴィン選手が倒れる前の映像がこちらです」


 次に写ったのがベルトコンベアの荷物をじっと眺める少年の姿だ。

 同じ形のコンテナが一定のリズムで流れる様子を見ていると、ある事に気付いた。


「「あっ!」」


 荷物の一つに先程見た羊のイラストを発見し、俺とさとりは同時に声を上げた。


「もうお分かりですね。あれこそが眠りの魔法の正体、ワン・シープ(羊が一匹)だったのです!」


 な、何だってー!?


「この魔法は羊が横切る姿を目撃する事で効果を発揮します」


「術者がその場にいなくとも遠隔で発動するというわけですな」


 思い返せば前回の試合で空中に放り出された時、ラキさんが魔法で白いモコモコを出していた。

 あれは雲ではなく巨大な羊に乗っていたのか。


「ちなみにカメラの映像は特殊なフィルターを通しているため、我々に影響はありません」


 フォークリフトに乗って対象を追い越す事で車体の羊を強制的に視界に入れる。

 解析魔法を使う巫女を配下に持ち、事前に情報を得ていなければ甚大な被害を出したに違いない。


 秘密を看破されたキャプテンはだからどうしたとふんぞり返った。


「ケッ、せっかく五体満足で負かしてやろうと思ってたのによぉ」


 喋りながらオーガからドラゴンへとメタモルフォーゼする。今回は全身を覆ったパーフェクトフォームだ。


「まとめて丸焼きにしてやるぜ!」


 用済みとなった車両を大きな足で踏み潰すと、通路いっぱいに高温の炎を吐き出す。


 桃太郎様が使役する竜の黒炎とまではいかないが、それでも直撃を食らえば大火傷は必至である。

 ノエミさんが魔法の壁で炎を防ぐも、ドラゴンブレスの余波で周囲の温度が一気に上がった。


「おい!こっちまで巻き込むんじゃねえよ!」


「うるせぇな。我慢しやがれ」


 同じ空間にいるのだから当然相方にも影響は出る。

 毛先を焦がした人狼巫女とドラゴンキャプテンが言い争う中、一陣の風が両者の間を吹き抜けた。


 冷風は温度を下げるだけに留まらず、通路の両側とフォークリフトの残骸を凍りつかせる。


「お待たせしてすみません」


 ダイヤモンドダストと共に現れたのは我らが氷の貴公子。イケメン王子の登場に黄色い声援が飛んだ。


「なっ、テメエいつの間に追いついてきやがった!?」


 人狼の問いには答えず女王様の側で膝をつく。

 どうやらリング状の通路を逆走したらしく、別画面には仲間達を護衛する雪だるまが映っていた。


「ここは引き受けます。お二人はラキさんの元へ」


 炎を吐くドラゴンと遠距離型の人狼。どちらも物理攻撃力が高くコオリとは相性が悪い。


 けれどその手に持つ勇者の木剣・氷結モードを見て考えを改める。

 木剣ブーストがあれば炎属性相手でも不利にならず、二対一でも渡り合えるだろう。


 立ちはだかるイケメンにキャプテンがくつくつと笑い声を上げた。


「全く、ガキは単純だな」


 彼が視線を送ると、巫女にふんしたウォンジィは服の中から何かのスイッチを取り出した。


「俺達が何の対策もしないと思ったか?」


 ボタンを押すと同時にどこかで爆発音が響き、異常事態を知らせる赤いランプが点灯。

 機械音声が現状を告げた。



『緊急事態発生。重力制御装置が破壊されました』



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