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The end of the world online ~不遇職・アイテムマスター戦記~  作者: 三十六計
第六章_タマモ召喚!

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130_エピローグ

 「……さぁ、タマモ、もう少しだ! 自分の下に…、自分の下に来いっ!」 


 ―――主は妾を求めている! 妾の顕在を心待ちにしていらっしゃる!


 自身の呼びかけに対する召喚を望む主の返事を聞き、タマモの心は高揚する。先ほどは★6の召喚獣の召喚に成功したが、それを上回る★7の妾が目前に現れた際に、サモナーギルド職員の女とエメラルドカーバンクルを召喚した小僧はどの様な顔で我が主を見るだろうか? 自身の存在こそが主のサモナーとしての名声を高め、職業が不遇職「アイテムマスター」というだけで軽く扱われていたその評価を覆すことに違いない。それこそ主に対する妾の唯一無二の忠誠の証である―――。タマモは意気揚々と召喚直前の仕上げに取り掛かるが、最後の最後で予期せぬアクシデントに見舞われることになる。


 「あっ…………! 不覚っ!」

 

 「門」の形にその身を合わせている最中、急激に身体の奥底から膨大な魔力が湧き上がる。狼狽したタマモは何とか魔力の暴走を必死に抑えようとするものの、制御が全くきかない。このままでは「門」の形と自身の顕在形の整合がとれず門を崩壊させ、召喚主も無事には済まなくなる。現に召喚主は膝をつき自身が招いた変調に耐えきれなくなっている事態が目の前で展開されていた。


 ―――まずいのじゃ! このままでは主の身に危険が及ぶ。致し方無いがこの方法に頼る他あるまい!

 

 魔力の暴走の詳細は分からないが、おそらく高揚による一瞬の油断が原因である可能性が高い。タマモは自身の行いを呪うが、今は兎に角一秒でも早く召喚を切り上げ、主の負担を取り除かなければならない。彼女が打った手は自らの所持するスキル【擬人化】の発動だった。


 タマモが持つスキル【擬人化】は、人型に擬態して召喚主の魔力(MP)の消費量を大幅に減少させることができるが、その代償として「★」が本来の数より2ランクダウンするものである。ランクダウンによるステータス値の減少は決して軽視できるものでは無く、また、誇り高き高位召喚獣を自負するタマモにとり、その存在価値が大きく揺らぐことになると考えていたが、切迫した状況下において背に腹は代えられない。急ぎスキルを発動し、「門」の通過を目的に意識を集中させるのだった。


 ―――幸いにしてスキル【擬人化】によって魔力の暴走は抑えられ、無事に外の世界に出ることができた。しかし、その余韻に浸る暇は無い。目の前では召喚の影響をもろに受けたアヤセが昏倒していたからだ。

 主の側に寄りその身体を揺すってみるが反応が無い。召喚は無事に済んでいる筈なのにアヤセの意識が戻らないのは何故なのか? タマモにはどうして良いか分からなかった。


 「マルグリット姉さん、危ないですよ!」

 

 不意に部屋の端から声が聞こえる。そして、少年の制止の声を振り切り、覚悟を決めた顔つきの若い女がアヤセのもとに駆け寄ってきた。

 この女は、主に随行しているサモナーギルド職員の女だ。そう認識したタマモは、彼女が目の前に現れた召喚獣と思しき自身が、危険か否かを確かめもせずにすっ飛んできた胆力に感心する。最も、この女は気を失っている主の容体が心配で、居ても立っても居られず無謀を承知で飛び込んできた可能性が高そうだと思い直す。勿論、タマモには主の理解者であるマルグリットに対して危害を加える理由が有るはず無い。

 

 「メグ殿! 主が……、主が!」


 自身の第一声が助けを求めるものであったことに、マルグリットが驚きの表情を見せたのも当然だろう。だが、向こうにとっては初対面であっても、こちらは思念を通してこの者が主と共に召喚に尽力していたことは分かっている。主に関する事だったらこの者は信頼できる。現にマルグリットは、瞬時に自身の心情を理解し、側に駆けつけ手助けに入ったことからもタマモの見立てが正しかったことを証明した。


 「まずはアヤセさんを仰向けに寝かして、頭を膝の上に乗せて楽な姿勢を取らせてください。……そう、それで手を取って優しく呼びかけてみてください。魔力をゆっくりと流し込むイメージで握ってあげてくださいね」

 

 マルグリットの的確な指示に従い、アヤセを膝枕して手を握るタマモ。一方、その真剣な様子を観察していたマルグリットも傍らの人型召喚獣が、アヤセが召喚を待ち望んでいたタマモであることを確信したようだ。アヤセを挟んで二人は相対し、そこにソージも駆け寄って来てマルグリットの隣で膝をついたので全員で経過を見守るかたちになった。


 「タマモさん。何故、あなたは擬人化しているのですか?」

 

 サモナーギルド職員の女は、おそらく自身が思念の価値と★のランクを異にして召喚されたことを何らかの方法で察知して、既に原因についても見当をつけているに違いない。単刀直入に核心をつく問いを投げかけてくることからそれは想像できた。


 「……」

  

 タマモは答えに窮する。この者は妾が誇り高き銀級妖狐でありながらエルミナより劣る★の数を嘲笑うのだろうか、それとも苦労に見合わない召喚に至った結果を、主に代わりなじるのだろうか。この者が主に対して特別な感情を持っていることから、特に後者の行動に出る確率が高いだろうと思う。


 「タマモさん。私は決してあなたを責めているのではありませんよ」

 「なんじゃと……!?」

  

 予想に反したマルグリットの台詞にタマモは戸惑う。


 「あなたが擬人化している、いいえ、しなければならない原因は何となく想像できます。おそらく召喚主が生じさせた不具合で、自分が思い描いていたものと違うかたちで召喚された結果を不満に感じているのでしょう。擬人化の理由は、召喚主を守るためにした必要措置ですから、それで召喚主を責めないで欲しいのです」

 「それは違うのじゃ! これは全て妾のせいなのじゃ!」


 隠し事は無用とばかりにタマモは、マルグリットとソージに今までの経緯と、主に自身の問題のせいで★のランクを落とさざるを得なかった事情とその結果に対するアヤセの反応への不安を吐露した。

どうしてこの二人に重大な秘密を打ち明けたのか分からない。ただ、この者達だったら秘密を誰かに漏らしたり、主を窮地に陥れたりするような真似はしないだろうと直感したからもしれない。実際に二人は話を聞き驚きはしたけれどもその後は、アヤセとタマモを気遣う様子を見せた。


 「封印の影響で、擬人化をする必要に迫られるという話は聞いたことがありません」

 「擬人化で召喚獣と話ができることはメリットがあると思いますけど……。でもアヤセ兄さんやタマモさんに悪いことがなければいいのですが」

 「その点は様子を見なければ分かりませんね。魔力の暴走もアヤセさん……、いやもうこの際だからアーヤと言いますが、アーヤとの親密度と本人の基礎レベルや技能レベルを上げれば改善されるかもしれません」

 「それだったらいいのですけど、親密度はどのくらいあるのですか?」

 「アーヤと彼女との親密度は64です」

 「えっ、64? 召喚直後でそんなにあるのですか!?」

 「私がスキル【鑑定】で確かめましたので間違いありません。この親密度も擬人化を安定させる作用があるのでしょう。アーヤの日頃からの声掛けが結果に表われましたね」

 「声掛けって……。召喚獣の親密度を上げるそんな方法があるなんて知りませんでした。それにしても、親密度高すぎですよ!」

 「ええ、アーヤのもう一体の召喚獣、チーちゃんの親密度も高いですから、アーヤが召喚獣に対していかに誠実に向き合っているか良く分かります。……だから、もう一つの点も考えるだけ取り越し苦労だと言えますね」

 「アヤセ兄さんがタマモさんにがっかりするはず無いですよね!」

 「いや、しかし、妾の存在は戦闘で活躍してこそじゃ。おそらく主もその点のみ期待しているに違いなかろう。妾の不甲斐無さに主に失望されるのが怖いのじゃ……」

 「タ、マ、モちゃんっ!」


 マルグリットが大きな声でタマモを呼ぶ。不意を衝かれたことと、くだけた調子で自身の名前を呼ばれたことに、ソージと一緒にタマモ本人も面食らってしまった。


 「タ、タマモちゃん!? なんじゃ急に!」

 「はい、先ほど私のことを『メグ』って呼びましたから、もう私達は友人同士です。私のことをそう呼んだのは、今までアーヤや私達がどの様なことをしていたか思念の中から見てきたからでしょう? ですけど、あなたは何も分かっていません。あれほど召喚を楽しみにしていたアーヤがこのくらいのことでタマモちゃんを見限ったりしますか? このひとはそういう方です。私のことだって見捨てなかった……」

 「……」

 

 タマモは目をアヤセの手を握っている目に落とす。アヤセの手からは、召喚時に手繰り寄せられた際に感じた同じ魔力の波紋が伝わってくる。それは彼女にとってかけがえのない繋がりを証明するかのようだった。この繋がりは簡単に失いたくはない。主を信じたい。


 「まだ信じられないなら、本人に聞いてみてください。もう、意識が戻りますから」

 「えっ!?」

 「さあ、アーヤに呼びかけて! 今度はタマモちゃんが主を引き上げてください!」


 苦悶に歪んだ顔のアヤセが瞼を動かしている。タマモは慌てつつもアヤセの手をしっかりと握りしめ、マルグリットの指示に従い力強く呼びかける。


 「主……、主……!」

 「アーヤ、しっかりしてください!」

 「アヤセ兄さん大丈夫ですか!?」


 皆の声に導かれるようにアヤセがゆっくりと目を開ける。さまようアヤセの視線がタマモに向くと彼女は狼狽して、手を放し、そして目も逸らしてしまうのだった。

 

 ―――その後、マルグリットの言ったことが正しかったのをタマモが実感したのは先の顛末を見てのとおりである。


 チーちゃんや他の召喚獣達からも召喚獣だけで交わされる念話を通して祝福される中、感涙しつつ口にしたアヤセの心がこもった茹で芋は、数百年ぶりに食べる食材としては少し塩味が多く感じられるのだった。


長いあとがき


第六章も本話をもって終了です。ここまで掲載を続けることができたのも、ひとえに皆様の温かい応援の賜物であると痛感しています。誠にありがとうございます。


タマモはもっと早く物語に登場させたかったのですが、レアリティの高い召喚獣で入手が困難なこと(タマモが特別な存在であること)を強調させたかったのと、エスメラルダ達との対決をサブテーマに置いたことからこのようなかたちになってしまいました。作者的にもお気に入りのキャラクターの一人である彼女の活躍を本章で取り上げることができず残念ですが、運命的な出会いをした主・アヤセとどの様な冒険を繰り広げるかは次章を御期待ください。


ちなみに、タマモの他にもシクリッド、アイ、マルグリットが作者のお気に入りです。三人の共通点は「キャラが勝手に動く」ところにあります。例えば、シクリッドが「召喚獣はね、大好きなの。あなたみたいなおせっかいな人が」という台詞を言ったり、アイがアヤセと一緒に何百本も真っ向を振り続けたり、マルグリットが講和派への対抗手段として、また、サモナーとしてアヤセに惹かれ、関係を深めることを望んで「アーヤ」と呼んだり、タマモを「タマモちゃん」と呼んで距離を一気に詰めたり「このキャラクターなら、この時こうするだろう」というイメージが執筆をしている中で自然に出てきました。これは、それだけ三人のキャラクターがしっかりかつ魅力的に確立されているからだ、と自分自身では分析しています(自画自賛ですね(笑))

また、三人以外にも新旧キャラクターが本章にも登場しましたが、今後、彼・彼女らがどの様なかたちで物語を織りなしていくのか、作者も楽しみです。


最後に報告と御礼を一点させていただきます。

本作が1月29日、30日にランキング「注目度 - 連載中」で6 位に入りました!

「小説家になろう」のトップページに本作の題名が載ったのは嬉しかったですし、何よりページビュー数が一時激増したのは強く衝撃を受けました(露出の有無でこうまで数が変わるものなのかを実感させられました)。

ランキングに載った原因をコパイロット君に聞いてみたところ、「注目度のランキングは週間のブックマーク数とその数日前くらいのユニークアクセス数で決まるらしい。いずれにしてもブクマつけてくれる読者いてのランクインであるのは変わりないから、その点を忘れずに感謝しろよお前(超意訳)」という回答でした。ランクインの結果は、上述の数値の化学反応が生んだ偶然の産物であると思いますが、ブックマークを付けてくださった読者の皆様の応援があってこそというのは、コパイロット君の言うとおりだと思います。以前も「作品を楽しんでくださる方がいるのは作者冥利に尽きる」ということを述べた気がしますが、改めてそれを実感させられた貴重な体験でした。繰り返しになりますが、皆様の温かい応援の賜物です。重ねて御礼申し上げます。


次章も現在鋭意作成中です。既存の章のてにおはを修正しつつ、できるだけ早くお届けしたいと思っています(いつも、いつそう言っているが……)ので、いましばらくお時間をください。


なお、本作の感想等も大歓迎です。どの様なものでも作者のモチベーションが上がりますのでどうぞお気軽にお寄せください。


今後も御愛読のほどよろしくお願いいたします。


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