後編
侯爵領に戻って事の経緯を両親に告げ、公爵閣下からの手紙を渡した。王太子殿下のあまりにも理不尽な蛮行に、父は激怒し、母は涙を流した。
俺はただ巻き込まれた側ではあるが、こうなることを薄々予想していただけに、両親に余計な心配をかけてしまって申し訳なく思ってしまう。
その後、俺は日常へと戻った。領軍の兵士たちに混ざり、魔物の討伐を主な生業とする日々だ。
魔物退治を100%冒険者ギルドに委託すると、高位の魔獣が出現した際などに莫大な予算がかかってしまう。 だが、俺が動けばタダだ。そのうえ、手に入れた魔石や素材はちょっとした小遣い稼ぎにもなる。
これだって、容姿を気にせず分け隔てなく育ててくれた両親や、領民たちへの恩に報いるための、俺なりの親孝行のつもりだった。
まあ、これが俺の生きる道なのだろう。
前世でもそうだったが、俺は「孤独死」をそれほど悲惨なものだとは考えていない。 誰にも看取られず、一人で生きて一人で死んでいった人間など、歴史上いくらでもいる。その生き様すべてが悲惨なわけではないのだ。俺の容姿も然り。物事はすべて、捉え方ひとつで良くも悪くも変わるのである。
そうして慌ただしく時が過ぎ、夏休みに入ると、弟と妹が王都から侯爵領へと戻ってきた。 驚いたことに、そこにはアンジェリカ嬢の姿もあった。
弟妹は彼女を「お姉様!」と呼んで懐いており、完全に陥落していた。
「ご無沙汰しております、アースラン様」
アンジェリカ嬢は俺の姿を認めるなり、深く頭を下げて礼をした。
「公爵令嬢にそんなに頭を下げられたら恐縮してしまいます。どうか普通にしてください」
王都にいた頃とは違い、今回は視線を逸らさずにまっすぐ俺を見てくるので、どうにも照れくさい。
基本、母と妹以外の女性からは、目を逸らされるか、秒速で視界から消え去られるかの二択なので、こうして正面から見つめられると、無駄に緊張してしまう。
さらに弟の婚約者である伯爵令嬢や、妹の婚約者である親友の伯爵子息も我が家にやってきて、今年の夏休みはかつてないほど賑やかなものとなった。
親友と山に魔物狩りへ出かけ、泥を撥ね散らしながら館へ戻ると、玄関には必ずアンジェリカ嬢が出迎えてくれるようになっていた。
……いや、これってどういうことだ? 公爵閣下は、本気でアンジェリカ嬢を俺に嫁がせるつもりなのだろうか。いやいや、いくらなんでもそれは彼女が可哀想すぎる。
晩餐が終わり、それぞれが自室へと戻った頃合いを見計らい、俺は父の書斎に足を運んで単刀直入に尋ねた。
「父上。アンジェリカ嬢のことですが、何か公爵閣下から具体的なお話があったのですか?」
「ああ。お互いの相性を見て、今後どうするかを決めよう、ということになっているよ」
父は実になだらかな笑顔で言った。
「本当に、とても出来たお嬢さんだ。母さんなんて、嬉しくて毎日泣いているよ」
母なら泣くだろうな、とは思う。とはいえ、冷静に考えてやはり無謀ではないだろうか。
「アンジェリカ嬢は二度と社交界に戻れなくなるかもしれませんよ。彼女は元・王太子の婚約者です。当然、感情の制御にも長けている。俺たちに嫌な顔を見せないことくらい、お手の物でしょう。相性云々以前に、実家を追われて行き場がないから耐えているだけかもしれない。彼女に無理を強いるのは、あまりにも酷です」
それに、母や弟妹たちに無駄な期待を持たせるのも良くない。ダメだった時の失望感は計り知れないだろう。
「お前の育ってきた環境を考えれば、そうやって予防線を張りたくなる気持ちも分からんでもないがね。それでもな、アースラン。最後に決めるのはアンジェリカ嬢であって、お前が勝手に決めつけることではないよ」
父は笑いながら、やれやれと首を振った。
「お前、わかっていないのか?いつものお前じゃないぞ。他人に何を言われようが放っておけ、自分を本当に理解してくれる奴とだけ付き合えばいい。評価するのは他人であり、己ではない――それがお前のスタンスだったはずだろう?」
「――あ」
言われてみて、ハッとした。胸を突かれたような衝撃があった。言われてみれば、なんか違うかもしれない。
「ふふふ。なんだか嬉しいよ。その体躯のせいか、お前は物心つく前から妙に達観していてね。一人で勝手に自分の生き様を決めて、ある日ふっと何処かへ消えてしまいそうな危うさがあった。そんなお前が、ようやく年相応に足掻いている姿を見られてな」
父に優しく微笑まれ、急に顔がカッと熱くなった。隠していたエロ本を親に見つけられ、真面目なトーンで感想を言われた時のような、言葉にできない気恥ずかしさが全身を駆け巡る。
「まずは一度、アンジェリカ嬢と普通に向き合って話をしてみなさい。決めるのはそれからでも遅くはないだろう」
父の温かい言葉に、俺は頭をごしごしと掻きむしりながら、「……あー、分かりました」とぶっきらぼうに返事をして書斎を後にした。 確かに、俺は「俺と結婚すること=彼女にとっての不幸」だと端から決めつけていた。
しかし……。
こんなオークのような豚に、自ら嫁ごうなんていう奇特な女性が、果たしてこの世に存在するのだろうか。やっぱり何かの罰ゲーム、あるいは高度な政治的取引なのでは? そんな疑念を抱きつつも、あの、しっかりと俺の目を見て挨拶をしてくれたアンジェリカ嬢の透き通るような瞳が、脳裏に焼き付いて離れなかった。
夏休みも終盤に差し掛かり、弟妹たちが王都の学園に戻る時期が近づいたある日、俺は母に呼び出された。 要件は、「アンジェリカ嬢を領都案内してあげなさい」というものだった。
隣にいたアンジェリカ嬢も、「よろしくお願いしますわ」と可憐に微笑みかけてくる。
「いや、ですが……」と俺は一瞬ためらい、それならお互いの婚約者が来ている弟妹たちに任せた方がいいのでは、と提案した。だが、すかさず母から「あの子たちはそれぞれ二人きりの時間を楽しんでいるのですから、邪魔をしてはいけません!」と鋭いお叱りを受け、結局、俺が彼女をエスコートすることになってしまった。
父に指摘されて自覚した。アンジェリカ嬢への対応は、どう考えてもいつもの俺じゃない。
これは「もしかして自分に気があるのでは?」などと意識してしまった、童貞豚の哀れな勘違いなのか。いやいや、前世の記憶を合わせれば俺の精神年齢は立派な大人のはずだ。
むむむ、どうにも落ち着かない。俺はもっと、ハードボイルドでクールな「渋いイケオジ豚」を目指しているはずなのに。
邸の前に馬車を用意して待っていると、簡素ながらも非常に品のある仕立てのワンピースを纏ったアンジェリカ嬢が現れた。
――可愛い。
それは、男として一切の否定ができない率直な感想だった。 どこまでも気品が高く、美しく、そして愛らしい。あの暗愚な王太子は、この子のいったい何が不満だったのか、本当に理解に苦しむ。
アンジェリカ嬢がスッと白い手を差し出してきたので、俺はその手を取り、そっとエスコートして馬車の中へと誘導した。
対面に座ると、馬車がゆっくりと走り出す。 どういうわけか、アンジェリカ嬢は俺から一切目を逸らさず、じっと見つめてくる。居心地が悪くてそわそわしてしまうが、こちらから目を逸らすのも男が廃る気がして、結局お互いに見つめ合う形になってしまった。
すると、彼女が「ふふっ」と小さく吹き出した。
「こちらの侯爵領に伺うまで、貴方の弟妹から、ずっと貴方のお話を聞かせていただいていました。そしてここに来てからは、ご両親や伯爵令息、令嬢の皆様からも」
俺は「はぁ……」と、困惑混じりの生返事を返す。
「誰もが、貴方のことを口々に褒めるのです。公平で、公正で、とても優しくて、頼りがいのある紳士であると。弟君の婚約者様などは、『アースラン様に助けていただいた際、私があまりにも失礼な態度(気絶)をとってしまったのに、我が家の弟の婚約者になってくれて嬉しいと言ってくださった。本当に感動しました』と、涙ぐんでいらっしゃいましたよ」
なに?この褒め殺しは…勘弁してほしい。いったい何の公開処刑だ。恥ずかしすぎて、今すぐ馬車の床を突き破って逃げ出したい。
「わたくしも、心から感謝しているのです。あのパーティー会場で、たった一人で奈落に突き落とされ、絶望していた時……貴方がとても紳士的に接してくださり、手を差し伸べてくださった。本当に救われました」
「……まあ、あの時は状況がよく見えていなかっただけですから。そう言っていただけるのなら、こちらの身勝手な行動も無駄ではなかったようで、ホッとしています」
そこまで真っ直ぐにお礼を言われると、流石に照れくさい。だが、俺がとった行動が彼女の救いになっていたのなら、素直に喜ぶべきだろう。
「……伺ったのですが。あの夜、わたくしを送り届けるために公爵邸へ向かった後、貴方は邸に戻らずに野宿をされたとか。なぜ、そのような無理をなさったのですか?」
執事の奴め、余計なことを。
「いやぁ、宿に泊まるつもりだったんですけどね! 俺のこの体格に耐えられる頑丈なベッドがないって、軒並み断られちゃいまして! あははは!」
と豪快に笑い飛ばしてみたのだが、アンジェリカ嬢の表情は曇ったままで、一向に笑ってくれない。いや、そこは「そんな理由ですか」と笑い飛ばすところですよ、頼むから笑ってくれ(涙)。
「どうして……どうしてそこまで、わたくしに心を砕いてくださるのですか? わたくしは王太子殿下から泥を塗られ、婚約破棄された女です。あの時、貴方がわたくしをどのように扱おうと、周囲から文句を言われる筋合いはなかったはずなのに」
その言葉を聞いた瞬間、頭を掻く手が止まった。少しだけ、腹の底が冷たくなるのを感じた。
「……いかように扱おうと、ですか。もし俺がその言葉に甘えて、あなたを好きなように扱っていたら、それこそ俺は『本物の化け物』になっていたでしょうね。あの王太子たちが望んだ通りの、品性下劣な醜い化け物に。
そんなの、まっぴらごめんです。俺には、俺としての誇りがある。他人が俺をどう評価しようが勝手ですが、俺自身が、俺と、俺を信じてくれる仲間たちを裏切るような真似は絶対にしない。俺の矜持を、安易に安売りしないでいただきたい」
アンジェリカ嬢は息を呑み、丸くした目で俺を見つめた。
心地よい馬車の揺れと沈黙がしばらく続いた後、彼女はぽつりと、今度は噛み締めるように呟いた。
「……今にして思えば、わたくし自身、自分の『矜持』というものを見失っていたのかもしれません。公爵家のため、国のため、完璧な王太子妃となるべく、自らを押し殺して行動してきました。そこに『己がどうありたいか』という意思は介在していなかった」
俺はただ、静かに彼女の独白に耳を傾けた。
「ですが……誰かのためではなく、自分自身がどうありたいか、自分の足で道を選び、進まねばならなかったのですね」
アンジェリカ嬢は、救いを求めるような真剣な目で俺に同意を求めてくる。だが、いや待ってほしい。俺はそんな崇高な思想を語ったつもりは全くないのだ。急に話のスケールが大きくなって冷や汗が出てくる。
「いや、本当に……そんな立派な話じゃないですよ。単純に『自分らしく生きる方が、後々都合が良い』というだけの話です」
俺は、前世からの経験を思い返しながら言葉を紡いだ。
「他人に言われるがままに行動して失敗するとね、人間ってどうしても『あいつの言う通りにしたせいで失敗した!』って、他人に責任をなすりつけたくなるんです。だけど、最初から自分でやると決めて動いていれば、その結果はすべて自分の責任になる。他人のせいにできない分、後悔をだらだらと引きずらずに済むし、その経験を糧にして次に進める。ただ、それだけのことですよ」
アンジェリカ嬢は一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、すぐに「クスッ」と、今日一番の柔らかい笑顔を見せた。
「……後悔すること自体は、変わらないのですね」
「そりゃあ、人生で一度も後悔したことがない人間なんて、私は見たことがありませんから」
出会った当初の張り詰めた空気は完全に霧散し、実に穏やかな雰囲気のまま、馬車は領都へと到着した。
――が、馬車の扉を開けた瞬間、たちまち大騒ぎになった。 原因は言うまでもない。この俺が、隣にとびきり美しいお嬢様を伴って現れたからだ。
「嘘だろ!? 俺を差し置いて、坊ちゃんに彼女ができたってのか!?」
「しかも、めちゃくちゃ可愛いぞ!」
「おい、どこから攫ってきたんだ!?」
「まあまあ、落ち着けって!」
「ついに……ついに坊ちゃんにも春が来たんだな……グスッ」
「おい見ろ、明日は槍でも降るんじゃねぇか?」
「誰か冒険者を呼んでこい! オーク・エンペラーから美女を救出するんだ!」
「バカ言え! 自分で突撃しろ、俺は死にたくねぇ!」
「奇跡だ……俺は今、歴史的な奇跡を目撃している!」
「おい、今日は宴会だ! 仕事なんてやってる場合じゃねぇ!」
一瞬にして俺たちの周りには二重、三重の人だかりができ、お祭り騒ぎの喧騒に包まれる。
「ええい、やかましい! 散れ、散れ! この暇人どもめ、さっさと仕事に戻れ!」
俺が野太い声で一喝すると、領民たちは「わぁーっ!」と楽しそうに歓声を上げながら散り散りになっていく。近所の子供たちにいたっては「オーク・エンペラーが怒ったぞ!」「逃げろー!」とケラケラ笑いながら走り去っていった。
ふと隣を見ると、アンジェリカ嬢は俯き、肩を小刻みに震わせていた。
やばい、流石にこの野蛮なノリは怖がらせてしまったか、と肝を冷やした次の瞬間。
「うふ、うふふ……ふふふ、あはははは!」
彼女は、お腹を抱えるようにして鈴を転がすような声で笑い出した。 ひとしきり笑い転げた後、アンジェリカ嬢は目元に浮かんだ涙を指先で拭いながら、俺を見上げて言った。
「本当に……領民の皆様に愛されていらっしゃるのですね」
「ただの、からかい半分のおもちゃですよ」
「そうかしら? 皆様、貴方のことを心から慕って、安心して冗談を言い合える『身内』として受け入れているように見えましたわ。……あまり、貴族らしくはありませんけれどね」
そう言って、彼女は嬉しそうにクスクスと笑った。
その後も領都を周り、店に立ち寄るたびにいろんな奴から声をかけられ、頼んでもいない食べ物や小物をこれでもかと押し付けられた。お世辞にも「落ち着いたデート」とは言えない珍道中だったが、アンジェリカ嬢の顔から笑顔が消えることはなかった。
「今日は本当に、楽しく過ごせました」
「……そりゃあ、何よりです」
アンジェリカ嬢の、混じり気のない眩しい笑顔を向けられ、俺はぶっきらぼうに答えることしかできなかった。
うん、これは非常にマズい。完全に意識してしまっている。
相手は社交界という魔境で育った、百戦錬磨の公爵令嬢だ。微笑みなど彼女たちの最大の武器に決まっている。クールになれ、俺。頬を朱に染めるデブな豚など、この世界のどこを探しても需要はないのだ。
――そう自分に言い聞かせるものの、彼女が見せる、飾り気のない無邪気な笑顔に、どうしても心を奪われてしまう自分を否定できなかった。
片手で顔を覆い、必死に動揺を隠そうとするが、一度上がってしまった顔の熱はなかなか下がってくれなかった。
やがて、弟妹たちが王都へと戻る時期が近づき、アンジェリカ嬢との別れの日も迫ってくると、胸を締め付けるような寂しさと同時に、どこか安堵している自分がいた。
これ以上、彼女が近くにいたら、俺は本当に、引き返せなくなってしまう。
そんな、諦めにも似た心地を抱えていたある日のこと。 弟妹たちの婚約者たちも帰郷し、侯爵家の家族全員とアンジェリカ嬢を交えた最後の晩餐を終えた時、彼女が静かに口を開いた。
「わたくしは……このまま、フランベル領に残りたいと思っております。今後もこちらへの滞在をお許しいただけないでしょうか?」
その突然の言葉に、弟妹たちは手を取り合って歓声を上げ、母は両手を叩いて大歓迎の意を示した。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! それは流石にマズいだろう!」
俺が慌てて割って入ると、アンジェリカ嬢は極めて真剣な表情で、俺をまっすぐに見つめ返してきた。
「何が、マズいのですか?」
「何がって……アンジェリカ嬢の評判だよ!」
「わたくしの評判など、王太子殿下から一方的に婚約破棄を突きつけられた時点で、とうに底まで落ちていますわ」
「いや、底には底があるんだって! 大体、あなたがこの領地に残るということは、つまり……そういうことだろう!?」
「『そういうこと』とは、具体的にどういうことでしょうか?」
「……っ」
涼しげな表情で紅茶を啜る、完璧に落ち着き払った公爵令嬢。片や、大きな体を縮こまらせて、みっともなく取り乱しているオーク・エンペラー。 勝負は、戦う前から完全に決していた。
「もう一度伺います。『そういうこと』とは?」
アンジェリカ嬢は、じりじりと容赦なく追い詰めてくる。
「お、……あ、あなたと……」
「あなたと?」
「け、け、け……」
「け?」
俺はあまりの恥ずかしさに耐えかねて、机にゴッと音を立てて額をぶつけた。
「……結婚するってことになる!」
「はい、結婚します」
――は?
俺は勢いよく顔を上げ、アンジェリカ嬢を見た。彼女はいたって澄ました、しかしどこか悪戯っぽい微笑みを浮かべていた。
「お父様はすでに承知しております。貴方のご両親も、弟妹の皆様も、すべて承知の上ですわ」
――え?
アンジェリカ嬢は、ひときわ優しくニコリと微笑んだ。
「あとは、貴方だけです」
「え……?」
「あとは、貴方が承知してくだされば、正式に婚約が成立いたします」
「な、なんでだよ……。俺のような容姿の男だぞ?」
「貴方が、誰よりも紳士的で、優しくて、包容力があって、頼もしいお方だからです」
「だけど、俺は豚だぞ……。オーク・エンペラーだぞ……」
「これから、とってもクールで素敵な『イケオジの豚さん』になられるのでしょう?」
情けない話だが、視界がじんわりと涙で滲んできた。 だって、俺はこんな……丸々と太って醜い、化け物のような男なのに。
涙をポロポロと流す俺の姿を見て、アンジェリカ嬢はそっと席を立ち、自身のハンカチを手にこちらへ歩み寄ってきた。そして、優しく俺の涙を拭いながら、耳元で囁いた。
「ふふ、泣き顔も可愛いですね」
降参だ。こんなの、男前すぎて惚れないわけがない。俺の完敗だった。
「……結婚、します」
もし奇跡的に子供が授かって、将来「お父様とお母様の馴れ初めは?」と聞かれても、恥ずかしすぎて絶対に答えることはできないだろう。 こうして、俺とアンジェリカ嬢の、世界で一番奇妙で、世界で一番温かい婚約が結ばれたのだった。
一旦おしまい。
閑話として、
アンジェリカと弟妹の王都での1年間。
アースランとアンジェリカの婚約式と王家とのあれこれ
結婚あたりのエピソードを追加できればと思っています。
評価・レビュー等は受け付けておりますが、返信できない場合が多いので、ご承知おきくださいmm
本作はAI(Gemini)を利用し、校正を行っています。
基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。




