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[毎日更新中]転生したら錬金術が得意な貴族家の女の子でした  作者: 双葉アリア
第二章 アトリエ開業編

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99話 理想具現、建設着工

なんとかなった.....

病院ってなんで予約した時間の意味をなさないんだろw

まだまだ暑さの残る日々が続いていた。


 照りつける日差しは容赦なく、石畳はじんわりと熱を帯び、風は吹いても生ぬるい。


 立っているだけで、じわりと汗が滲む。


 ――そんな中でも。


 計画は、止まらなかった。


 セレスティア家の屋敷では、朝早くから職人たちが出入りし、普段は静かな庭に次々と資材が運び込まれていく。


 未使用だった区画には杭が打たれ、縄が張られ、測量の声が飛び交う。


 やがて響き始める金属音と木槌の音。


 整えられていく地面。


 ここに、水生植物用の小川が新たに造られる予定だ。


「思っていたより……本格的ですね」


 その光景を見つめながら、思わず呟く。


「当然だ。中途半端なものは作らん」


 隣で腕を組むお父様が、いつもの調子で言い切った。


「むしろ、これでも抑えている方だ」


「……抑えて、ですか」


 思わず聞き返す。


「本来なら、もう一段規模を広げてもいい」


 さらりと言われて、言葉に詰まる。


(これで抑えてるって……)


 内心でため息をつきつつも、視線を庭へ戻す。


 人の動きに無駄はなく、作業は淀みなく進んでいる。


 必要な人員が、必要な場所で、正確に動く。


 その光景は、まるで一つの完成された仕組みのようだった。


「エレノア様、日差しが強うございます」


 使用人に声をかけられ、軒下へと移動する。


 日陰に入るだけで、体への負担がぐっと軽くなる。


「ありがとうございます」


 差し出された水を受け取り、一口。


 冷えた感触が、喉を通っていく。


「……生き返る」


 思わず本音が漏れた。


 小さく笑い声が返る。


 その間にも、庭では工事が進み続けていた。


 ――確かに、ここでも“始まっている”。


 けれど。


(アトリエの方は……どうなってるんだろう)


 ふと、そんなことを思う。


 同じ計画でも、あちらは“本体”とも言える場所。


 きっと、規模も熱量も――


 ここ以上だ。


 一方その頃――


 王都の一角、アトリエ建設予定地。


 そこには、想像を上回る光景が広がっていた。


 広大な敷地。


 積み上げられた資材の山。


 絶え間なく出入りする馬車。


 そして、あちこちで飛び交う怒号と指示。


 現場はすでに、一つの戦場のような熱気に包まれていた。


「……すごいね、これ」


 メルが呟く。


「ああ」


 カイルも短く頷いた。


「ここまでとは思っていなかった」


 地面は区画ごとに整理され、作業は段階ごとに分けられている。


 無駄のない動き。


 止まらない流れ。


 それは明らかに、通常の工事のそれではない。


「王族案件だからな」


 カイルが続ける。


「人も資材も、最優先で回されている」


「……納得」


 メルが小さく息を吐く。


 そのとき、


「お二人とも」


 現場責任者が歩み寄り、一礼した。


「お越しいただきありがとうございます。現在、予定通り基礎工事へ移行する段階です」


「順調、ということでいいのかな?」


「はい。問題はございません。本日中に整地を完了し、明日より本格施工へ入ります」


「……早いですね」


「人員が揃っておりますので」


 さらりとした返答。


 だが、その“揃っている”規模が異常なのは、一目で分かる。


「エレノア様の計画に支障が出ぬよう、万全を期しております」


 その言葉に、メルは柔らかく微笑んだ。


「ありがとうございます! よろしくお願いします!」


「はっ」


 責任者は一礼し、すぐに持ち場へ戻る。


 その背を見送りながら――


「……十分だね」


 メルが呟く。


「ああ」


 カイルも同意する。


「これ以上は、現場の邪魔になるだけだ」


「うん。それに――」


 メルは軽く振り返る。


「エレノア様に、ちゃんと伝えたいしね」


「屋敷に戻るか」


 短く決まり、二人はその場を後にした。


 背後では、変わらず作業の音が響き続けている。


 その熱気を背に、馬車へと乗り込んだ。


 しばらくして――


 セレスティア家の屋敷。


 庭では相変わらず工事が続いている。


 その軒下で。


 私は変わらず、作業の様子を眺めていた。


「エレノア様」


 聞き慣れた声に振り向く。


「あ、メル。カイルも」


「ただいま戻りました」


 二人が軽く頭を下げる。


「おかえりなさい。どうだった?」


 問いかけると、


「……想像以上でした」


 メルが少し苦笑しながら答えた。


「規模も、人も、全部が一段上って感じ」


「王命の重みだな」


 カイルが淡々と補足する。


「本日中に整地完了、明日から本格施工だそうだ」


「……早いね」


 思わず呟く。


 こちらも十分早いと思っていたのに、それ以上。


「でも、問題はなさそうでしたよ」


 メルが続ける。


「むしろ順調すぎるくらいです」


「そっか……」


 胸の奥に、じんわりと安堵が広がる。


 庭へと視線を戻す。


「こっちも順調。小川の区画は、もう形が見えてきてる」


「もうそこまでか」


 カイルがわずかに目を細めた。


「……なんだか」


 メルがくすっと笑う。


「どっちも、すごいことになってるね」


「……うん」


 否定はできない。


 屋敷と、アトリエ。


 離れた場所で、同時に進む大規模工事。


 その中心にあるのは――自分の計画だ。


(……本当に、始まったんだ)


 改めて実感する。


 汗ばむ空気の中、


 響き続ける作業音を聞きながら――


 私は静かに息を吐いた。


 この流れは、もう止まらない。


 そしてきっと、


 想像していたよりもずっと早く――


 “完成”へと近づいていくのだろう。


――工事開始から、一週間。


 夏の暑さは相変わらずだが、状況は大きく変わっていた。


 セレスティア家の屋敷。


 庭の整地はすでに終わり、小川の輪郭ははっきりと形になっている。


 水路の基礎は組み上がり、流れを制御するための設備も設置が進んでいた。


「……早い」


 思わず呟く。


 ほんの数日前まで、更地に近かった場所とは思えない。


 視界の中で、職人たちは休むことなく動き続けている。


 無駄のない動き。


 途切れない作業。


 その密度の高さが、そのまま進捗の速さに繋がっていた。


「アトリエの方も、かなり進んでいるみたいですよ」


 隣でメルが報告する。


「基礎はほぼ完成。もう一部は骨組みに入ってるそうです。」


「……それ、一週間でやる速度じゃないよね」


「王族案件ですからね……」


 少し苦笑しながらメルが返す。


 カイルも小さく頷いた。


「人員も資材も、最優先で回されている。止まる理由がない」


「……なるほど」


 納得はする。


 するけれど、やっぱりどこか現実味がない。


「順調なのはいいこと、なんだけど……」


 そこまで言いかけて、


 ――ガンッ!!


 すぐ近くで、大きな音が響いた。


「……っ!?」


 思わず肩が跳ねる。


「す、すみません! 内部改修の作業です!」


 職人の一人が慌てて頭を下げた。


「……内部?」


 聞き返すと、


「はい! 本日より屋敷内の改修にも入っております!」


 ――その瞬間。


 嫌な予感がした。


 そして。


 数時間後。


 屋敷の中は――


 完全に“工事現場”と化していた。


 ガンッ! ドンッ! ギィィィン!!


 壁の向こうから響く衝撃音。


 床を伝ってくる振動。


 時折混じる金属音。


「……」


 私は、部屋の中で静かに座っていた。


 けれど。


 落ち着けるはずがない。


「……無理」


 ぽつりと呟く。


 次の瞬間、


 ――ドゴンッ!!


「ひっ……!?」


 思わず肩が跳ねる。


「エレノア様、大丈夫ですか?」


 メルが苦笑混じりに声をかけてくる。


「大丈夫じゃないかも……」


 即答だった。


「これは……なかなかだな」


 カイルもさすがに少し顔をしかめている。


「庭だけじゃなかったの……?」


「むしろ本番はこっちだろうな」


 淡々とした返答。


 否定できないのがつらい。


 水路を通す以上、内部の工事は避けられない。


 分かってはいるけれど――


 ――ガガガガガガッ!!


「……っ!!」


 今度は連続音。


 もはや逃げ場がない。


 屋敷のどこにいても、音が追いかけてくる。


「……ねえ」


 私はそっと二人を見る。


「これ、いつまで続くの?」


「しばらくは続くだろうな」


 カイルが即答する。


「内部改修が終わるまでは、この調子だ」


「……」


 沈黙。


 そして――


 ――ガンッ!!


 追撃。


 私はゆっくりと天井を見上げた。


(……ゆっくりできない)


 心の底から、そう思った。


 計画は順調。


 むしろ順調すぎるくらい。


 けれど――


 その代償は、


 想像以上に騒がしかった。


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