決勝戦第一試合(2)
デケンが煽ったことでフェブルの闘志に火が付く。普段の冷静な彼とは違い、復讐心に囚われているようだ。
そしてはじめに仕掛けたのはフェブルだった。さっきまでの緊張感漂う空気は消え、一気に試合特有の喧騒が会場を包む。大鎌がデケンに無数の切り傷をつくったかと思えば、モーニングスターがフェブルを殴りつけた。
力でねじ伏せるデケンと素早い身のこなしで相手を翻弄するフェブルは互角の戦いを繰り広げる。それぞれの武器が交わる度に傷が増え、血が流れていく。
「……デケンさん……」
あまりの激しい戦いに畏怖してしまい、イェナの脇腹にしがみついた。イェナは私の背中をさする。
「……無理そう?倒れる前に言いなよ。見たくないなら見なくていいから」
リング上の二人からは目を逸らさずにそう気遣ってくれる。だけど私も決して目を離さなかった。
フェブルは毒の使い手だ。あの大鎌の先にも毒が塗られているはず。だがデケンは毒が効かない体質だということが明かされフェブルは苦戦する。
「勝負あったかなあ?」
押され始めたフェブルを見て、アロが退屈だと息を吐いた。
デケンが有利なはずなのに──私は何故だかとても嫌な予感がする。それは私の記憶の奥底で何かが警告しているかのように。
思い出せ、と自分に言い聞かせる。私が覚えているのはイェナが負けてしまうこと。主人公パーティーがこの大会で優勝すること。その二つだ。
──待って。じゃあ他の人たちの試合は?
イウリスチームが勝ったということは、アロチームは五人中三人が負けたということ。イェナの生死にばかり気を取られていたけれど──この試合はどちらが勝った?デケンはどれほどの怪我をした?思い出せなくて頭を抱える。イェナが心配そうに顔を覗き込んでいるが、私はそれどころではなかった。
デケンの渾身の一撃に耐えきれずフェブルが膝をつく。その隙にデケンはとどめの攻撃しようとして──ピタリと動きを止めた。
「──!?」
何かに気付いたように、フェブルを睨む。ここからでは何が起きているのかよく分からない。それはアロやイェナも同じようで怪訝な顔をしている。
「──かかったな」
大量に出血する腹部を押さえながら、フェブルは笑った。
──ダメだ、ダメ。
隣のイェナにすら聞こえないほどの小さな声が漏れる。
漫画なら……ここからフェブルが全てをひっくり返す。そんなフラグが立ってしまった。
「お前のデカい体に、やっと俺の毒が回ったようだ」
デケンに毒は効かない。効かないはずなのに、どうして彼は自信ありげに笑っているのだろう。
怖くて、自分の手と吐いた息が震える。




