ログインボーナス320日目 アトラトル
ハピバ
久しぶりにひとりで寝てひとりで起きた。
起きたら隣に配達員さんがいないかなと一抹の希望を抱いていたが、そんなことはなかった。
寂しさという感情がどんどん自分の中で膨れ上がって行って今にも泣いてしまいそうだった。
現に涙はもう目の端から零れ落ちてしまいそうだ。
ふと視線を上げると、窓ガラスが普段より大きく見えて、薄く反射した自分の姿は女児くらいになっていた。
いつもよりさらに小さい。
そして頭から生えたふたつの蒼い角と蒼い尻尾がどんどんと辺りを蒼く染め上げていく。
布団なんておしっこが黄色く染みばんでいくように蒼い。
もうどうなるのだろうと思うと、勢いよくリビングのドアが開き配達員さんが抱き着いてきた。
「▢▢▢」
「はい、貴女の▢▢▢ですよ。もう大丈夫ですからね。大丈夫ですからね」
配達員さんは色が全て収まるまで大丈夫、大丈夫と背中を撫でていてくれた。
いつものサイズに戻れると、配達員さんとふたりで朝ご飯を食べた。
そしていつものように
「今日のログインボーナスはアトラトルです」
「なんですかこれ靴ベラ?」
「古代の男女平等器具ですね、槍を飛ばすものです」
さらにログインボーナスなんてどうでもいいかのように配達員さんは箱を机の上に置いた。
脇にドーナッツと書かれている。
ドーナッツ……
「あ、今日はバレンタインでしたか」
「そうですよ蒼井さん、ハッピーバレンタインです」
箱の中には9個紅いドーナッツが入っていた。
紅っか、なんだこれ、まあいいか。
「配達員さんハッピーバレンタインです」
私はそう言って彼女にリンゴを模ったボトルのブランデーを贈った。




