side 信志
「……うん、やっぱり大丈夫そうだ。」
自分で生やしたトマトはやはり、ちゃんと食べ物になっていた。
ふぅ……。
実は話を聞いて、自分でも怪しんでいた。というのは、内緒にしておこう……。
そのあと、状況は目まぐるしく変わった。
すぐさまボクはアイリスやナルメアさんに連れられ、部屋を出る。
たどり着いた場所は、中庭の一角にある、小さな畑。
なんでも、趣味で園芸をする人がいるのだとか。
今はちょうど成長の時期なのか、青々とした葉っぱがたくさん見える。
「椿さま、今度はもう一つの能力をお願いできますか?」
「もう一つ……?ああ、なるほど。『グローリー』!」
手を畑に向けて唱えると、光が葉を包み込む。
そして。
季節を早送りにするような速度で、葉から実へ成長し、色づいた。
ナスやトマト、きゅうりにはてはトウモロコシまで。
時期を少しばかり無視した畑が、そこに出来上がった。
そこから、さらに状況は加速していった。
ついには城を飛び出し、街へ。
街の至る所で、『スプラウション』や『グローリー』を使い続けた。
そんな日から、4日。
能力を使うたびに、「ありがとう」なんて言われるもんだから、調子に乗ったボクが能力を使いすぎて倒れたりと、小さなトラブルはあったものの、復興はありえないぐらいの速度で進んでいった。
城壁など、防衛面ではまだまだ終わりが見えないが、街の活気はほぼ元通りになった。
ボクのことも周囲に広く伝わったらしく、街の至る所で声をかけてもらえる。
「お、勇者さまじゃねぇですか。」
「本当だ、昨日はありがとうございました。」
「いえ、役に立ててよかったです。」
少し気恥ずかしくなって足早になってしまうのも、もはや日常。
なにせ、元いた場所では目立つこともなかったからね。
注目される事に慣れているわけもないのだ。
返事もそこそこに、早歩きで城へ戻っていく。
城に戻れば、天野くんや、間くん。
ナルメアさんに、テトさん。
そして、アイリスが迎えてくれる。
ボクが街で復興を手伝っている間、天野くんと間くんは街の外で、実際に獣なんかと剣を交えるそうだ。
二人共、どんどん強くなっていっている、らしい。
ボクは彼らのように、華々しく活躍する事は出来ないけど。
与えられた役割でも、惜しまずに使っていこうと思う。
……なんて話を、夜の廊下でアイリスと話す。
もう、二人で話すことも日常だねと、笑いあう。
まだまだ問題は山積みだし、不安もあるけれど、なんとかなるのでは、と根拠もなくその日は思った。
こんばんは、Whoです。
短い上に早足ですが、これで1章、というかプロローグが完了です。
次からは2章という名の本編1章が始まる予定です。
章題は「幻の都編(予定)」。
ここから主人公に色々と起こっていくので面白くなる、はずです。
いえ、面白くしていきます。
そして次回と次次回の更新は設定などの裏話になります。
2章を練る期間と、一応Whoさんも学生の身なので、テスト期間に突入します。
お楽しみにしていただけるのならば、今しばらくお待ちください。
ではでは。




