side アイリス
「……それは本当ですか?」
「え?は、はい。」
ナルメア姉様の声が少し硬いものになります。
それほど信志さんの発言は驚くものでした。
「え、えーと、そんなに驚くことなの?これ。」
「そうですね、俺も知りたいです。」
信志さんと天野さんが揃って首をかしげます。
「野菜も草の一種だし、そこまで驚くことでもないと思うんだけど……。」
「わかりました。詳しくお話ししますね。」
そう言って姉様は席を立ちます。
……えっと?
「私は操草師の方を呼んでくるわ。その間に、アイリス、説明をお願いできる?」
「あ、はい。」
「では少し、説明させていただきますね。」
ナルメア姉様が部屋を出たので、私が口火を切ります。
「まず、操草師は、天野さんの魔法剣士のような、珍しい役割ではありません。」
「うんうん。」
「この国にも、たくさんの操草師の方がいらっしゃいます。でも、彼らが野菜などの食べ物を作ることはありません。」
「そうなの?」
「はい。一応、生やすことはできるみたいなんですが……。」
「生やすことはできる、ってことは、何か他に問題があるんですか?」
「その通りです。操草師の方が能力を使う際には体内の魔力と大地の力を消費します。
つまり、生えてくる草も魔力の塊で、本来食べられるものではないんです。」
「うお……、マジか。確かにそんな役に立たない役割なら、ナルメアさんやテトさんも微妙な顔をするわけだ……。」
ああ……、信志さんがショックを……。
「ん?ならなんで椿のは、食べることができたんでしょうか。」
「!なるほど確かに。」
天野さんの疑問に信志さんが立ち直ります。
私も頷いて、
「そうです、そこが姉様と私が驚いたところだったんです。」
ガチャ。
私の説明がひと段落したところで、ナルメア姉様が帰ってきました。
「お待たせしました、アイリスもありがとう。」
「いえ、大丈夫です。……それでそちらが……?」
「ええ。城の中にもいたみたいで、思ったより早く見つかったわ。」
姉様の後ろの人が無言で敬礼をします。
「では、お願いします。」
「はい。『スプラウション』!」
操草師の方が唱えた呪文で、部屋の隅に草が生えてきます。
「おお、結構美味しそう。」
先端に実った赤い実、トマトをもぎ取り、持ってきていたナイフで切ってもらいます。
「……なるほど、確かにこれでは……。」
外から見れば完全にトマトなのですが、その内では青い光が渦巻いていました。
「ご覧のように、私たちが知る操草師では、作ることはできても食べることができませんでした。
食べ物を作ることができるようになれば、復興はかなり前進します。
ですので、一度椿さまのものを、確認させてもらってもよろしいですか?」
「うん、いいよ。『スプラウション』!」
信志さんの声で先ほどと同じようにトマトが出来上がります。
それをナイフで切ってみると。
「……うん、やっぱり大丈夫そうだ。」
綺麗に切られた「普通の」トマトがそこにはありました。
こんばんは、Whoです
「side アイリス」は書き慣れないのか、ついつい短めにプロットを作ってしまいます。
「side 信志」の方は結構書けたりするんですけど……。
これは由々しき事態です。なんとかしなければ。
まぁそれはさておき。
次回かその次ぐらいで1章の終わりを迎えると思います。
「章」、というには短めですが、少し長めのプロローグ、ぐらいの感じで思っていただければ。
そのあとは1週か2週ほど設定集などを乗せて(実質本編はお休み)、2章に突入するつもりです。
それではまた来週。




