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花屋は商魂たくましい  作者: Who
三途の河編
108/159

side ネロ

懐かしい夢を見た。

私がまだ……だったころの夢。

妹と二人、貧しくても楽しく暮らしていた。

…………。

そんな生活を、どうしてなくしてしまったんだっけ?


「ーーー!!」


あぁ、そうか。

私が……だったからだ。



◇◆◇◆◇◆



初めに目に入ってきたのは、見たことのない屋根だった。

……?

見たことのない、はずなのにどこか見覚えがあるような。


「……ここは?」


頭の片隅でそんなことを思いながら、起き上がる。

起き上がって、それができる事に気がついた。


「……あ。」


その拍子に、上半身を支えていた腕から力が抜けてしまう。

ぼふっと言う音とともに、頭から布団へ逆戻りしてしまった。

けれど、それで頭が回り始めたのか、だんだんと記憶が蘇ってくる。

ちょうどその時だった。


「あ、起きましたか、ネロさん。」

「……アイリス。」


もう一度起き上がる前に、そう声をかけられる。

体を起こさないまま振り向けば、ちょうどアイリスが部屋に入って来るところだった。


「調子はどうですか?」

「……ん、大丈夫。……けど、ダメ。……全然力が入らない。」

「そう、ですか。」


手を広げたり握ったりして見るが、全然力が入らない。

当然といえば当然だ。

私はボロネーゼに力を奪われてしまったのだから。

しかも、そのまま気を失ってしまった。


「……ん。……それで、ここは?」


最後にいた場所は街の地下。

いや、朧気だけど、最後は開けた場所にいたようにも思う。

なのに今はこうして、どこかの部屋で寝かされている。

なぜだかしょんぼりとしてしまっているアイリスだけど、それをあまり気にせずに話しかける。

今は、聞いて、それから言わなくてはいけないことがある。

あるはずだ。


「ここは、ロットの故郷の村なんだってさ。」

「おや、お目覚めっすか?」


質問の答えは、別の声でやってきた。

視線を、アイリスから少し後ろに移すと。


「……信志。」


それから、ロット、と言ったか。

その二人が部屋へ入って来たところだった。

どうやら話しているのが聞こえていたらしい。


「……ちょうどよかった。……入って。」

「ちょうど?」

「よかった、っすか?」


首を傾げながらも、素直に二人は入って来る。

私は頷いてから、二人にも同じようにこれまでの事を尋ねた。

二人にも、言うべきだと思ったから。

言いたかったから。



◇◆◇◆◇◆



「…………。」


私が気絶している間の事。

大まかな話を聞いた私の、初めの反応はそんな沈黙だった。

まさか二回もボロネーゼによって飛ばされていたとは。

それと、1度目の時に現れたというアマテ。

そんなことがあってもなお、やっぱりこの三人は私を見捨てたりはしなかった。

そうすることもできたはずなのに。


「……ごめん、なさい。」


だから、その言葉は自然に出て来た。

三人とは敵対していたのに、助けてもらった。

助けてもらって、よかったなどと自分勝手に思ってしまった。

心のどこかで、それでも信志とアイリスなら助けてくれると、自分勝手に思ってしまっていた。

だから。


「……ごめんなさい。」


どうか、そんな私を許してほしい。

自分勝手にわがままに、自分の期待ばかりをかけていた。

だから。


「……ごめんなさ、む」

「落ち着いてください、ネロさん。」


もう一度、もう一度と。

何度でも続けようと思った時、そんな言葉と一緒に抱きとめられた。

出すはずだった言葉は、文字通り潰れて何かわからないものになってしまった。


「……アイリス?」

「大丈夫です。大丈夫ですから……。」

「……ん。」


柔らかくてあったかくて。

おまけに頭を撫でてもらいながら、大丈夫、と言ってもらえる。

そんな突然の状況に目を白黒させてしまったけれど、少しずつ落ち着くことができた。

落ち着いて、それが少し、いや結構恥ずかしい状態ということにも気づいてしまったけれど。



◇◆◇◆◇◆



驚いて恥ずかしくなって、その恥ずかしさも少しだけ慣れた頃。

私はやっと顔を上げることができた。


「落ち着きましたか?」

「……ん、大丈夫。」


まだ少し残っている顔の熱を、ふるふると追い払う。

それが終わってようやく前を、目の前の三人に向かい合った。


「まず初めに言っておくね。」


その三人が一瞬だけ視線を交えてから。

初めに口を開いたのは信志だった。


「ネロがどう思っているかはともかく、ボクらは助けたいと思ったから助けたんだ。」

「はい。ネロさんを置いていくなんて考えもしませんでした。」

「……ま、自分もそうっすね。」


三者三様。

言葉は違っても、同じことを言ってくれる。

けれどやっぱりそれが、私には申し訳なく思えて。


「……ごーーー」

「だから。」


謝ろうとした。

許してもらうためではなく、気持ちを伝えるために。

けれど、それすらも信志は止めた。


「だから、謝ることなんてないんだ。」


信志はそこで口をつぐむ。

もっと他に言葉があるだろう?

それも、なぜかそういう意味に聞こえて。

…………。

あぁ、わかった。

けれど、これを口にしていいのだろうか。

もう一度信志を見る。

頷いてくれた。

……あぁ、本当に。


「……助けてくれて、ありがとう。」


本当にこの人は。

私を仲間だと、言ってくれているのだと、ようやく思えた。

こんばんは、Whoです。


長かった。

二章で初登場してようやく、ネロが仲間入りです。

おめでとう!(自画自賛)


ネロの過去についてはまだもう少しかかります。

気長にお待ちください。


ではでは。

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