side ネロ
懐かしい夢を見た。
私がまだ……だったころの夢。
妹と二人、貧しくても楽しく暮らしていた。
…………。
そんな生活を、どうしてなくしてしまったんだっけ?
「ーーー!!」
あぁ、そうか。
私が……だったからだ。
◇◆◇◆◇◆
初めに目に入ってきたのは、見たことのない屋根だった。
……?
見たことのない、はずなのにどこか見覚えがあるような。
「……ここは?」
頭の片隅でそんなことを思いながら、起き上がる。
起き上がって、それができる事に気がついた。
「……あ。」
その拍子に、上半身を支えていた腕から力が抜けてしまう。
ぼふっと言う音とともに、頭から布団へ逆戻りしてしまった。
けれど、それで頭が回り始めたのか、だんだんと記憶が蘇ってくる。
ちょうどその時だった。
「あ、起きましたか、ネロさん。」
「……アイリス。」
もう一度起き上がる前に、そう声をかけられる。
体を起こさないまま振り向けば、ちょうどアイリスが部屋に入って来るところだった。
「調子はどうですか?」
「……ん、大丈夫。……けど、ダメ。……全然力が入らない。」
「そう、ですか。」
手を広げたり握ったりして見るが、全然力が入らない。
当然といえば当然だ。
私はボロネーゼに力を奪われてしまったのだから。
しかも、そのまま気を失ってしまった。
「……ん。……それで、ここは?」
最後にいた場所は街の地下。
いや、朧気だけど、最後は開けた場所にいたようにも思う。
なのに今はこうして、どこかの部屋で寝かされている。
なぜだかしょんぼりとしてしまっているアイリスだけど、それをあまり気にせずに話しかける。
今は、聞いて、それから言わなくてはいけないことがある。
あるはずだ。
「ここは、ロットの故郷の村なんだってさ。」
「おや、お目覚めっすか?」
質問の答えは、別の声でやってきた。
視線を、アイリスから少し後ろに移すと。
「……信志。」
それから、ロット、と言ったか。
その二人が部屋へ入って来たところだった。
どうやら話しているのが聞こえていたらしい。
「……ちょうどよかった。……入って。」
「ちょうど?」
「よかった、っすか?」
首を傾げながらも、素直に二人は入って来る。
私は頷いてから、二人にも同じようにこれまでの事を尋ねた。
二人にも、言うべきだと思ったから。
言いたかったから。
◇◆◇◆◇◆
「…………。」
私が気絶している間の事。
大まかな話を聞いた私の、初めの反応はそんな沈黙だった。
まさか二回もボロネーゼによって飛ばされていたとは。
それと、1度目の時に現れたというアマテ。
そんなことがあってもなお、やっぱりこの三人は私を見捨てたりはしなかった。
そうすることもできたはずなのに。
「……ごめん、なさい。」
だから、その言葉は自然に出て来た。
三人とは敵対していたのに、助けてもらった。
助けてもらって、よかったなどと自分勝手に思ってしまった。
心のどこかで、それでも信志とアイリスなら助けてくれると、自分勝手に思ってしまっていた。
だから。
「……ごめんなさい。」
どうか、そんな私を許してほしい。
自分勝手にわがままに、自分の期待ばかりをかけていた。
だから。
「……ごめんなさ、む」
「落ち着いてください、ネロさん。」
もう一度、もう一度と。
何度でも続けようと思った時、そんな言葉と一緒に抱きとめられた。
出すはずだった言葉は、文字通り潰れて何かわからないものになってしまった。
「……アイリス?」
「大丈夫です。大丈夫ですから……。」
「……ん。」
柔らかくてあったかくて。
おまけに頭を撫でてもらいながら、大丈夫、と言ってもらえる。
そんな突然の状況に目を白黒させてしまったけれど、少しずつ落ち着くことができた。
落ち着いて、それが少し、いや結構恥ずかしい状態ということにも気づいてしまったけれど。
◇◆◇◆◇◆
驚いて恥ずかしくなって、その恥ずかしさも少しだけ慣れた頃。
私はやっと顔を上げることができた。
「落ち着きましたか?」
「……ん、大丈夫。」
まだ少し残っている顔の熱を、ふるふると追い払う。
それが終わってようやく前を、目の前の三人に向かい合った。
「まず初めに言っておくね。」
その三人が一瞬だけ視線を交えてから。
初めに口を開いたのは信志だった。
「ネロがどう思っているかはともかく、ボクらは助けたいと思ったから助けたんだ。」
「はい。ネロさんを置いていくなんて考えもしませんでした。」
「……ま、自分もそうっすね。」
三者三様。
言葉は違っても、同じことを言ってくれる。
けれどやっぱりそれが、私には申し訳なく思えて。
「……ごーーー」
「だから。」
謝ろうとした。
許してもらうためではなく、気持ちを伝えるために。
けれど、それすらも信志は止めた。
「だから、謝ることなんてないんだ。」
信志はそこで口をつぐむ。
もっと他に言葉があるだろう?
それも、なぜかそういう意味に聞こえて。
…………。
あぁ、わかった。
けれど、これを口にしていいのだろうか。
もう一度信志を見る。
頷いてくれた。
……あぁ、本当に。
「……助けてくれて、ありがとう。」
本当にこの人は。
私を仲間だと、言ってくれているのだと、ようやく思えた。
こんばんは、Whoです。
長かった。
二章で初登場してようやく、ネロが仲間入りです。
おめでとう!(自画自賛)
ネロの過去についてはまだもう少しかかります。
気長にお待ちください。
ではでは。




