第7話 「灼熱のガーゴイル戦 中」 エリア:石切り場(大広間)
なぜ、絶対魔法耐性を持っている俺に魔法を使うことができたのか。
俺はルーシーに問いかけていた。
「ルーシー、どうして俺に魔法を使うことができたんだ?」
「それはですね……私は絶対魔神法という特殊な能力を持っているからです」
「絶対魔神法?」
「はい。ユウさんは魔法の概念をご存知ですか?」
「いいえ、まったく、微塵も」
「ですよね知ってました」
酷いよルーシー、知ってて聞いたのね。
「ではまず魔法の概念を説明しますね。魔法というのは自らが持ち合わせる魔力と知識、さらに世界に存在する属性を掛け合わして使用します。属性は炎、水、風、大地、大空、光、闇、無、幻想、時、空間などがあります」
「つまり、魔法は自分の持っている魔力と知識を属性……すなわち世界と混ぜ合わせて使用する技術ってことか」
「理解が早くて助かります。絶対魔神法とはこの世界ではなく、神界いう世界の属性と混ぜ合わせて魔法を使用するのです」
「神界……」
「今我々がいる人間界より上位の世界、それが神界です。ここまで言ってしまえばわかると思いますが、絶対魔法耐性はあくまでこの世界の属性を混ぜ合わせた魔法に耐性があるだけでしかありません。神界の属性を混ぜ合わせた絶対魔神法への耐性は皆無です」
「……」
「結論を言ってしまうと、絶対魔神法とはこの世界に存在するすべての物質の特殊能力や特殊効果に関係なく魔法を使用できる能力なのです」
「それ本当なの?」
「本当です。ちなみに、特殊能力などではなく単に魔法に強い耐性を持っている物質なども同様です」
何だよその能力……
最強すぎるだろ……
「なんでルーシーがそんなチート能力持ってるんだよ!! あれか? ルーシーは神か天使か、あるいは悪魔なのか!!」
ルーシーは一瞬躰をビクつかせた。
神、天使、悪魔って単語に反応したな。
もしかして本当に――
「ち、違います! 私は決して神や天使、愚かな悪魔などではありません!!」
ルーシーはゆでだこのように顔を真っ赤に、俺に反論してきた。
「どうしてそんな酷いことを言うんですか!!」
両手を上下にバンバンと振り、頬をぷっくら膨らませながら怒りをあらわにするルーシーは何とも言い難い可愛さに満ちていた。
たぶん、いつものお姉さんオーラを醸し出すルーシーとのギャップが原因だろう。
「す、すまん! 悪気はないんだ!」
激おこぷんぷん丸のルーシーに俺は頭を下げて謝罪をする。
今までの経験からしてルーシーは謝罪に弱い。
ここでしっかり謝っておけば――
「だったら時間稼ぎをしてください」
「時間稼ぎ?」
てっきり許してもらえると思っていた俺は、予想外の返答に驚いていた。
「ユウさんのせいでガーゴイルを倒し切れていません。そろそろインフェルノで与えたダメージが回復してしまいます」
「ちょ!? ダメージ回復するってなんで!?」
「ガーゴイルは躰の中心部にあるコア、人間でいう心臓を破壊しないと何度でも自己修復魔法を発動して傷を回復させてしまいます」
はあー!?
「なんでそんな大事なこと言ってくれなかったの!」
「いえ、ユウさんに絶対魔神法の説明をしていたので」
「いやいやいや!」
絶対魔神法の説明よりも大事なことだわ!
そう心が叫びたがったがやめておいた。
なんかルーシーさん物凄く機嫌が悪いんだもん。
下手なことしてまたインフェルノされるのも嫌だし。
グギアァァァッ……!
そんなことを考えていると、地面に突っ伏していた黒焦げガーゴイルが躰を起こし始めた。
「ほらユウさん、ガーゴイルが起きてしまいますよ? 時間稼ぎよろしくお願いしますね」
「冗談ですよね? てか、さっきインフェルノ使ったときは時間稼ぎとか無かったじゃん!」
そうなのだ、先程ルーシーは瞬間的にインフェルノを使用していた。
ならば他の魔法も……
「先程は高速詠唱を使っていたからです」
「だったら……!」
「ガーゴイル諸共インフェルノで焼きますよ?」
「精一杯時間稼ぎを行わさせていただきます!」
グルアァァァッ!
「うわぁっ! ホンマに来よった!」
こうして俺とガーゴイルの追いかけっこが始まったのだった。