第16話 「魂のDOGEZA」 エリア:貿易都市サウザン(ギルド:輝ける星々)
「まだ金の準備ができてないとか言わないよなぁ?」
ヤクザみたいな兄さんが放った言葉で、一瞬で辺りが静寂に包み込まれる。
金の準備ってなんのことですかね?
このギルド何やからしてるですか?
なんでヤクザみたいなお兄さんに金せがまれてんだよ!
もう帰りたい……
「おいおい黙り込んでんじゃねえよ! どうなんだよ! 金の準備はできてんのかよぉ!」
静寂から一転、今度は怒号によって辺りが騒々しくなる。
お兄さんの声が大きすぎて鼓膜が裂けそう。
「ま……だ……」
シルフィーがガタガタと震えながら、小さな声で何かを呟いている。
嫌な予感がする。
非常に嫌な予感がする。
「あん? 聞こえねえな! ハッキリ言えや、ゴラァッ!」
「ひっ……!」
目をギュッと瞑るシルフィーの顔にお兄さんの唾液がべちゃべちゃとかかる。
「早く答えろや!」
「まだ……まだ準備できてない……」
「あんだと!? 準備できてねえだと!?」
なんとなく察しがついた。
このギルド、お兄さんに借金してるな。
「金貨1000枚、さっさと返せよゴラァッ!!」
怒号がさらに大きくなる。
この声外にも響いてるんじゃね?
これは明らかに近所迷惑ですね。
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
ついさっきまで俺に突っかかってきたときのルーシは、もうこの場にはいなかった。
目の前の野獣に震える小鹿。
俺には目の前の光景がそんな感じに見えた。
「それじゃあ仕方ないよな……お前ら5人はこれから俺たちの奴隷だなぁ!」
ヘヘッ……!
お兄さんとその仲間たちがジリジリと5人の少女に近づいていく。
「助けて……誰か助けて……」
掠れた……今にも消えそうな灯火のように弱々しい声が耳に入ってくる。
あれ?
いつからエロゲルートに入った?
「さあ、一緒に来い! お前らは俺たちの物だ!!」
今にもお兄さんたちはルーシたちに飛びつきそうだ。
そろそろ狩りの時間が訪れるのだろう。
そて、どうするか……
「あのー」
「ああんっ?」
ずっと黙り込んでいた俺が、ついに口を開く。
こ、怖かったわけじゃないからな!
「金貨ならここに500枚あります」
俺は発光石を売っぱらい手にした金貨500枚が入った袋をお兄さんに見せる。
「金貨500枚かぁ……全然足りねえなぁ!」
ですよねー。
さっき金貨1000枚って言ってましたもんねー。
でも引き下がれない。
頭のイカれた少女であろうと見捨てることはできない。
一応、俺も男だからな。
「残りの金貨500枚は……二週間、二週間で払い切ります! だから今回は見逃してください!」
DOGEZAをして頼み込む。
木製の床に両手に付け、額を地面にめり込みそうになるまで押し付ける。
これが俺のなせる最高のDOGEZA……魂のDOGEZAだ!
お兄さんは数秒間じっと俺を見つめるとため息を吐いた。
「……わーったよ、テメエの覚悟に免じて二週間だけ時間をやる」
俺が持っていた金貨500枚の入った袋をお兄さんに手渡す。
「二週間を過ぎたら……今度こそ奴隷だ、わかったな! おいお前ら、ズラかるぞ!」
俺の魂のDOGEZAが効いたのか、お兄さんたちはギルドを去っていった。




