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異世界×あたし  作者: 葉山
【第二章】ようこそ、勇者様
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02.後回しにはツケが付いてくる【Side彼】


 ディーも、契約破棄を望んでる。

 ぐるぐると、その言葉が頭の中を回る。何回も、何回も。

 契約者ができたからって、浮かれてた。ディーがあっちの世界から戻ってきたからって、完全に安心してた。

 これでディーは俺のもので、それはウヌディビティバルドゥ以外に断ち切れないようなものなんだって。そう、思ってた。

 馬鹿じゃねぇの。契約を結んだときだって、その場の勢いとかでディーは結んだって言うのに。それに、あいつは契約がなんなのかを知らない。それ以上に、この世界がなんなのかですら知らない。

 いや、知らないって言うか、知らないままでいたいと思っているような節がある。それだけディーの中ではこの世界とは線引きされていて、これ以上関わらないようにしているようにしているのかもしれない。

 明確に引かれた、ディーの境界線。

 それは俺も含めこの世界には馴染まない。慣れあうつもりはないと思ってるかのようで、自分の勝手な思い込みに涙が出てきそうだ。

 何安心してんだよ、俺。本当に、馬鹿だ。


「……おい、大丈夫か」


 鉄格子越しに、見張りの奴が訝しげに声をかけてきた。それだけ、俺は沈んでいるように見えるのか。当然だろうな、自己嫌悪に陥りすぎて、動く気力ですら起きない。

 ここから脱出する気ですら起きない。ディーに会いに行こうとか、そんなことですら思えない。むしろ会わせる顔がねぇ。

 あぁ、護るとか言ったのも迷惑だったんだろうな。

 こうしてまた顔を合わせてしまったことですら嫌だったんだろうな。

 家出をしようとしたくらいに、俺のそばにいたくなかったんだろうな。

 スバルだけを連れて行ったのは、ウヌディビディバルドゥに会うためだったんだろうな。

 だって、あいつの帰る場所は、ここじゃないから。

 あの子と同じように、ちきゅうとか言う場所だから。

 三度目の奇跡は、起きない。次は、本当に、永遠の別れになるんだろう。

 ディーは律儀だから、俺のためだとか言って契約を破棄して後腐れのないように戻ろうとしてんじゃないか。


「本当に、俺、ダメじゃん……」


 他の魔族から契約者を護ることが重要だ? そんなバカなこと考えるよりも前に、他にももっとあるだろ。これなら、思考支配して契約している奴らと同じだろうが。

 これで次期地方領主になろうとか、なれるわけねぇじゃん。たった一人の人間の気持ちですら思いやってやれないのに、それで領民の声を聴くとか、治めるとかできるわけねぇじゃん。

 どうすっかな。このまま人間の手によって裁かれちまおうか。たかだか人間になんたる体たらくとか、親父たちはブチ切れそうだけど。

 それでもいいと思ってしまうくらいに、俺は立ち直れそうにもないらしい。


「ぎゃああああおおおおおぅぅぅううっ!!」

「っ!?」


 床に倒れ伏せていた俺だったけど、びりびりと空気を震わせる咆哮に飛び上がって立ち上がった。ついでに条件反射で縄を引きちぎり、低く構える。

 どっちだ? 何が起こった?

 いや、待てよ。この声、聞き間違いじゃなければ……


「アズラス! ここだ!」

「っ、お前……!!」


 見張りの奴が慌てて鉄格子に近づいてくる。けど、馬鹿! 今はダメだっ!


「近づくな!」


 慌てて叫んだけど、きっと止まってくれないだろうから強硬手段をとろうとしたんだけど、くっそ! 魔力が集まらない……!


『魔法対策もしっかりしていますので、無駄な抵抗はなさらないように』


 あ、そう言えばそんなこと言ってたっけ……! 今気づくとか俺馬鹿じゃねぇの!?

 あぁ、くそ! 色々考えすぎて頭爆発しそうになっていると、アズラスの一撃が天井をぶち壊してここに光を射し込ませる。それと同時にもうもうと湧き上がる土埃。落ちる破片。

 み、耳が壊れんだろ……少しは加減してくれよ、アズラス容赦ねぇな。

 鼓膜が痛い。わんわんと響く耳鳴りを耐えながら、魔力の流れが正常に戻るのを感じる。

 大丈夫かな、あの見張りの奴。このチャンスを逃すわけにはいかないけど、それくらいの時間はあるだろ。


《我が身に宿りしもの。オルドビスの名において、かの者を癒せ》


 ぐん、と駆け巡る魔力の流れ。伝わる、動揺。

 契約者から直接魔力の供給を受けるから、その感情の振れが分かる。どこにいても、どれだけ離れていても。

 ……たとえ、嫌われていても。

 混乱してる。戸惑ってる。どうしてそうなってんのかですら分からない。それを知ることですら許されてないのかもしれないけれど。

 ズキン、と痛んだ胸は見なかったことにして、唱える。


《回復魔法・聖者祈祷》


 伸ばした指先から白く浄化した光が放たれ、見張りの奴がいた方向へと弾け飛ぶ。

 これで、まぁ、大丈夫だろ。

 頭はまだ混乱している。これでいいのか、それすら分からない。分からないけど、それでも。

 今のままでディーには会えない。

 俺はアズラスが覗き込んでいる巨大な穴から外へと飛び出し、この場所から……ディーがいるこの場所から逃げ出した。


ビスの大脱走劇。

彼はこう見えて意外と悩める乙女です。うじうじと悩みます。

いや、たぶん。おばあちゃんの時もこうしてうじうじとしていたのでしょう。


……アズラス、グッジョブ☆

さて、次はアズラスの活躍ですねー。

今から楽しみです!アズラスのセリフが特に楽しみです!!(超イイ笑顔)

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