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異世界×あたし  作者: 葉山
【第二章】ようこそ、勇者様
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05.場の空気を読みすぎるのも考えもの【Side彼】


 なんか近くの壁にもたれかかって項垂れているディー。ぽん、と見張り番に肩叩かれて同情されてらぁ。

 一緒に入ってきた人間の女が、キャーキャー言いながらバシバシスバルの肩を叩いてる。痛そうだな、あれ。

 いや、そんなことよか。いい加減縄解いてもらえねぇかな。そろそろ痛ぇんだけど。むしろ自分で解いてもいい……よな?


「さて、趣味に走るのはこの辺にさせて頂きますわね」


 すすす、とスカートを持ち上げて、俺の前に移動してくる。しゃがみこむと、ふわりとスソが目の前に広がった。つか、見えねぇ。

 背筋を使って思いっきりのけぞって、ようやく顔が見れる感じ。こ、この体制は思ったよりも辛いぞ。


「ふふふ、魔族の方はやはり美しいお顔をされているのですのね」

「触んな」

「契約者にしか触れさせないと言うのなら、それはそれでとても美味しく頂けるのですが、それはさておき。貴方に聞きたいことがございますの」


 つ、と顎にあてられた指から逃れるように、さらに上半身を持ち上げてみた。

 うっ、腹の方の縄がひっぱられて苦しい……けど、顔にはださねぇようにしてみる。

 これ以上人間に侮られてたまるかっつーの!


「貴方は《月薔薇の悪魔》でしょうか?」

「は? つきバラ?」


 なんだそれ? ばら肉の親戚か何かか?

 意味が分からなくて、力が抜けた。ってことはつまり床に倒れ伏せるってことで……。いいや、疲れた。このままでいよう。


「オルドビスは一介の地方魔族の子息だ。そんなたいそれたものじゃない」

「あら、でも地主さまですのね。わたくしと同じでしたの」

「……ここは境目のはず。地主がいるはずがない」


 スバルが不思議そうに首を傾げていた……けど、あのさ。本当にいい加減これ外してもらえねぇの?

 あっちでは、なんかディーと見張り番だった奴の間に通じるものがあったみてぇで、ただ黙って頷きあっている。何やってんだあいつら。


「ですから、でした、と申しました」


 ふふふ、と頬に手をそえて笑ったそいつは、そっと左手を持ち上げて、そでをめくった。


「わたくしも、契約される前は地主の娘でしたの」


 そこには、手首にしっかりとつけられた……貼り付けられたって言った方がいいのかもな。幅の広い黒の“契約の証”があった。

 でもおかしくねぇか? それならなんでここに契約者の魔族がいねぇんだ?


「不思議そうなお顔をされてますわね。それでもうふふ、そうやって床に這いつくばっていても、美しいものは美しいですわ」

「つか、お前契約者はどうしたんだよ」

「逃げ出してまいりましたの」

「……は?」


 あれ? 今なんて言った?


「ですから、逃げ出して参りましたの」


 ゆっくりと、繰り返される。

 逃げ出した。

 契約者の魔族から。

 でも、こいつは、目の前の女は限りなくBランクに近い人間だ。そう簡単に逃げ出させるようなレベルの人間じゃねぇぞ。


「従者さまにも改めてお伝えいたしましょう。お聞きになって」

「何を……」

「ここは、契約破棄を望む人間たちの隠れ里」


 “契約破棄を望む人間たちの隠れ里”


 頭に、言葉が刷り込まれていく。

 なんて言葉だっけ? 契約破棄ヲ望ム?

 誰が? 人間が。


「生まれ育った故郷にも帰れない、人間達の逃げ場でもありますの」


 そこに、ディーもやってきた?

 それはつまり……


「魔族はお呼びではありません。ただで開放されるとお思いにならないことですわ」






 ディーも、契約破棄を望んでる……?






「魔法対策もしっかりしていますので、無駄な抵抗はなさらないようにすることですわ」


 では、失礼。

 目の前からスカートのすそが消える。立ち去るいくつもの足音。

 それを止めることもできなくて、俺はただその場に倒れ伏せているだけだった。


次の章で色々と不足部分を書いていく予定です。あくまでも、予定ですが。

魔族と悪魔の違いとか、上位ランクの希少具合とか、人間との確執とかその辺りを色々と。


世界背景説明とかね、いまさらとかね! それはあえて言わないお約束で(笑)

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