03.場の空気を読みすぎるのも考えもの【Side彼】
……やっちまった。
アズラスに昔から、もっと周りを見るようになんて小言よく言われてたのに、うぉぉおなんで今ここでやっちまうかな!
「うわあああ、許されることなら一時間前に戻りてぇえっ!」
贅沢言うなら、ディーがいなくなる前くらいに戻りてぇっ!
ごろごろごろーと床を転がりまわってみたけど、うん痛いだけだった。畜生、この床固いぞ! カーペットくらい敷け!
「おい、大人しく静かにしていろ!」
「す、スミマセン」
ほら、怒られた。
いや、なんで怒られたから素直に謝ってんだろ。……条件反射だと思うけど。
「あのさー」
「何だ?」
「悪ぃけど、これ解いてくれねぇ? 逃げないから」
「ダメだ、魔族は信用ならん!」
「いや、でも、今思いっきり頭をかきむしって自己嫌悪に陥りたいんだけど!」
「そんなの一人でひっそりとやってろ」
「酷ぇ!」
それさえも許されねぇってか! 意外と縛りが多いんだな畜生。
えー…、そろそろ俺の状況を説明するな。めっちゃ簡単にだけど。
まず、俺は魔族の集団を追いかけてた。集団で何かを追いかけてたからな、ディーだったら助けなくちゃだろ?
「そこまでは良かったんだよなー…はぁ」
で、追いかけてたんだけど、それを更に追いかけていた人間に捕まっちまったんだ。そう、俺が。
魔族の俺が人間なんかに捕まっちまったんだようわあああ末代までの恥だ!
むしろこれ知られたら、兄貴にこれでもかってくらい笑われてからかわれて、しばらくこれネタにされ続けられるに違いねぇな! うわ最悪だ……!
「うわああああぁ帰りたくねぇえええっ!」
「静かにしてろと言っただろっ!」
「あ、スミマセン」
ま、また怒られた。
そんなこんなで、今、簀巻きにされて捕まってる状況。しかもご丁寧に牢屋に入れてくれちゃってまぁ、素晴らしい囚人生活気分満喫中だよ。こんな満喫したくねぇ!
「はぁああー…」
本当は、出ようと思えばすぐに出られる。
魔法でも一発ぶっぱなしちまえば、こんな簀巻きロープも鉄格子も見張り番の奴も、軽くいなせるんだよ。
それでもなんで大人しくしてるかって、そりゃ決まってるだろ。
「あいつの気配っぽいんだよなー…」
近くで、ディーとスバルの気配がするから。
それだったら、大人しくしてた方がいいだろ。俺だってたまには考えるっつーの。
「はぁああー…」
「お前、さっきからなんなんだ」
「あんたの言うとおり、一人でひっそりと自己嫌悪中」
「……お前、変な魔族だな」
あれ? なんか、可哀想な子でも見るような目で見られてるような気がするんだけど。俺、人間の見張り番に同情されてる?
ごろん、と仰向けになって見上げた景色は遥かに高いけど……って、お?
いくつかの足音が震動となって伝わってくる。誰かくんのか?
ばっと、見張りの人間が立ち上がって扉を開ける。鉄製の重そうな扉が、ぎぃぃと音を立てて開いた先にいたのは……
「ディー?」
「……ビス、そこでなにやってんの」
「一人でひっそりと自己嫌悪中」
傍から見ても間抜けなやりとりに、ディーの傍にいたスバルが不思議そうな顔で首を傾げていた。
ビスはどこにいってもビスです。
どうしようもないです、たまに頭を使って考えても、結局こうなります。
あふぉな子ほど可愛いですが、これでも必死にシリアスにしようとしているのをぶち壊さないで欲しいと筆者的には思います。
どうせだから、いっそ遊んでみるかな……




