プロローグ
once upon a time…
これは、『昔々』から始まる1人の女の子とその家族にまつわる物語り。
彼女の幸せと苦悩、家族の愛と懺悔の物語。
ページの一枚目にあるのは女の子の手紙だった。
『大好きなエメンタール家の皆様へ
お義父様、お義母様、3人のお義兄様方、そして本当の娘であるステラ義姉様へ最後の贈り物を記します。
私、スピカを18歳になるまで育てて慈しんで愛してくださり本当にありがとう御座いました。
皆様の家族として過ごした時間は私にとってかけがえのない宝物です。
とても心苦しいのですが家族の皆様から頂いた御恩と愛に報えるものを私は私自身しか持ち合わせておりません。
ですので私は私の意志で皆様にご恩返しをさせて頂きたいと存じます。
まず、当主であらせられるお義父様と次期当主のカインお義兄様へ
結界の乙女としての役割を頂戴したく思います。
勝手な事では御座いますが、当代様のお力も弱くなってきてしまっているとお嘆きのお二人のお力になりたいのです。
次にお義母様へ
お義母様が褒めて下さっていたので何点かお義母様用のドレスと宝石をデザインさせて頂きました。気に入らないかもしれませんが今後の仕立ての際に思い出して頂ければ嬉しいです。あと、お義母様用のお茶のブレンドは調理長と侍女長のマリサに伝えてあります。不調の際にはお飲み下さい。
アレクお義兄様へ
私の魔眼をお譲りします。もっと早く差し上げなかった非礼をお許しください。これからはお義兄様が私の目を通して世界を見てくれるのですから寂しくはありません。
フレットお義兄様へ
フレットお義兄様は私の拙い作品をいつも褒めて下さいましたので、剣につける房飾りと私の聖石をお渡しします。
最後に
ステラ義姉様へ
私の大切な家族です。私のものではなかった本当の家族を義姉様にお返しします。本当にごめんなさい。
スピカ・フォン・エメンタール』
手紙の文字は震え、涙で所々滲んでいた。




