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大森林再び

 それから二日経って、俺達はノーデン大森林に戻ってきていた。この辺りまでくると気温も落ち着くから、防寒具とはおさらばだな。といっても、もう少しで秋になりそうだからまた世話になると思うけど。

 森の中を歩きながら、ふと気になったことをレイスに投げかけてみる。


「レイスって森にいた頃はずっとあのエルフと話してるって言ってただろ? どうやって出会ったんだ?」

「それを知ってどうする」

「いやあ、ただ気になって。だってエルフってあまり人前に姿を出さないらしいじゃんか」

「お前もエルフだろう」

「そうだけど、なんか俺って普通のエルフじゃないっぽいしさ。らしくないってよく言われたし」


 お、食べられそうな木の実発見。たしかピュルテ皇国で見かけたやつだ。取っておこう。

 ちょっとみんなに待ってもらって、木の上に登った。下でケイトがカゴを持って待機している。


「で、どうなんだ? 話したくなければ話さなくてもいいけどさ」

「奴がドラゴンに襲われていたところを助けたのが始まりだった。向こうもこちらを知っていたようで、それから細々と交流し助け合う仲だ」

「へえ。向こうは知ってたんだ? なんで?」

「森に住み着いた私のことを警戒していたらしい」

「ふーん……警戒心強そうだもんな。あいつがっていうよりはエルフ全般な気がするけど」


 ピンク色の木の実を取っては下に落とす。ケイトが器用に木の実をキャッチしていた。全部取るのはまずいだろうし、これくらいにしておくかな。手から少し甘い匂いがする。すん、と嗅いでから木を降りた。


「甘そうだし、今夜のデザートにするか」

「いいな! 砂糖で煮ても美味しそうだぞ。たしかピュルテ皇国のレシピにあった気がする!」

「あま〜い木の実、楽しみだなあ!」


 木の実をカゴごと収納鞄に入れて、再び森の中を歩き始める。度々現れるキノコの魔物はリーファが焼き尽くしていった。うっかり木々に燃え移らないか少し心配だな。

 昼食も摂りつつ森を進んでいく。またドラゴンが来るんじゃないかと一瞬頭を過ぎることもあったけど、なんとか遭遇せずに進めている。

 もっとも、他の魔物はじゃんじゃん出るんだけどな。キノコとか、オークとか。あとレッドボアも。

 大体レイスが足止めして、そこをリーファとケイトとオリヴィエでボコボコにしている。俺は後ろから矢を射つ係だ。楽でいいといえばいいんだけどな。


「このメンバーでの戦いも慣れたものだなあ。前衛三人は相変わらず強いし、レイスのおかげで足止めできるのがデカい」

「この程度、実に容易い」

「頼りになるよ。ありがとうな、レイス」

「……礼を言われるほどのことではない」


 レイスはさっさと先へ行こうとしてしまう。せっかくのレッドボアだ、ちゃんと血抜きして美味しい肉にしたい。ビッグボアと違ってちゃんと魔物だから魔力抜きの処理もしないといけないし。


「解体できるまで待ってくれよ〜」


 レイスは無言で立ち止まった。あ、ちゃんと待ってくれるんだ。

 最初は愚か者とか馬鹿者とか言われるしトゲトゲしかったからビックリしたけど、こうして一緒にいるとその優しさが分かってくる。最近は言葉遣いにも少し気を遣おうとしてるみたいだし、この間のお絵描き大会の時なんて彼なりにみんなを褒めようとしていたし。

 ニマニマとレイスを見ていたら睨まれた。こわ。


 それから数日森を進んで、ノーデン大森林を抜ける。ここからどうしようかな。このまま皇都に向かおうとするとリーファが連れ去られたあの町、ルルパスにぶつかるな。まあ外側を回ればいいだけだけど……せっかくなら、オリヴィエの故郷プリュームに寄ってくか。


「なあ、みんな。皇都にいく前にプリュームに寄ろうと思うんだけど、いいかな」

「オリヴィエさんの故郷だよね? いいと思う!」

「わたくしは嬉しいですが……いいのですか?」


 首を傾げるオリヴィエに頷く。嬉しいって言ってくれるのが嬉しいよ、俺は。


「ああ。ほんの少しの遠回りだしな。それに、そこで依頼を受けたっていいし」

「そうだね、またオリーブの枝のみんなに会いにいってもいいし!」

「オイラもあいつらと遊んでやらなくもないぞ!」

「好きにすればいい。どの道ランクが上がるまでは足踏みの状態だからな」

「皆さん……ありがとうございます」


 ふわりと微笑んだオリヴィエは、小さく頷いた。


「では、プリュームに行きましょう」

「決まりだな」


 施設長のタンドレーさんにオリヴィエのことも報告したいしな。少しずつだけど彼女は良い方に向かってますって。

 ほとんどリーファとケイトのおかげな気がするけど。でも俺だってお絵描き大会したし……みんなで料理しようって提案したし。俺なりに考えた結果だしな。あれが少しでもいい影響を与えられていたらいいんだけど。


「それじゃあ、プリュームに向かってしゅっぱーつ!」

「おー!」


 リーファとケイトが笑顔で腕を上げる。他の四つのダンジョンはもう攻略し終わったし、あとはランク上げだけだから……少しゆっくりできるかな。また観光するのも悪くないかもしれない。

 そう思っていたから、だろうか?


「……あの」


 遠くに見えるプリュームの町を見て、オリヴィエが震える声で呟く。


「町から上がっている、あの黒い煙は……なんでしょうか」

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