表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/192

スクロール作成見学

 みんなでの調理は思ったより順調に進んだ。


「リーファ、切るときの手はこうだぞ」

「こう?」

「そうそう! その調子だ!」


 料理初心者のリーファにはケイトがつきっきりで教えてあげている。オリヴィエは慣れた手つきで食材の下処理をしているし、レイスは根菜を煮込んでいる。あっちは大丈夫そうだな。


「俺も頑張らないと」


 肉に切れ目を入れてハーブをまぶす。こうすると臭みが取れるし風味も良くなるんだ。


「よし、食材の処理は終わったな。野菜はスープにするから、どんどん鍋に入れてくれ。肉はオイラが焼くぞ!」


 ふわりと食欲をそそる匂いが漂う。みんなで作ったスープとステーキはとても美味しくて、こんがり炙ったパンも香ばしくて食べる手が止まらない。

 いつもケイトに任せっきりだったけど、たまにはこうしてみんなで料理するのもいいな。なんだか楽しいや。


「あ! このニンジン、お花の形だ! かわいいねえ」

「ふふ、こうすると子供達が喜んでくれるんです」

「まるで花畑みたいだ!」


 見た目でも美味しいスープが出来上がったわけだ。心なしかレイスもいつもよりゆっくり味わって食べている気がする。


「みんなで料理するの楽しいねえ」


 スープを飲んだリーファがふにゃりとした笑顔で言う。

 ああ、みんなと出会えて良かったなあ。心からそう思える。

 初めは俺にパーティが組めるなんて思わなかったけど、それが今じゃ四人もの仲間がいてくれる。とても心強い。

 ……やっぱり、忘却ノ迷宮に挑戦する前に一度トーガ村に戻ってみようかな。みんなのことを紹介したいし。

 きっと村のみんなも仲間達を気に入ってくれると思う。レイスは……少し時間がかかるかもしれないけど。ほら、初対面だと彼の優しさは分かりにくいし。

 でもまずはピュルテ皇国まで戻らないとな。


「食べ終わったら出発しよう。明日……いや、明後日くらいにはノーデン大森林まで戻れると思う」

「そうだな、パパッと戻っちゃおうぜ」


 最後の一口を食べ終え、立ち上がる。今日は俺が後片付けをしよう。




 時に魔物と戦いながらも長い道のりを歩き、夜になった。リーファは別の絵本をオリヴィエに読み聞かせているようだ。焚き火の前に座った二人は寄り添って絵本を覗き込んでいる。二人とも真剣だな。

 レイスは今夜もスクロールを作っているようだ。今日はレイスの方を集中して見ていようかな。スススッと彼の隣に近づく。


「……なんだ」

「スクロールってどうやって作るのかなって思って。見てていい?」

「好きにしろ」


 レイスは青いインク壺に杖をつけ、羊皮紙に円を描いている。うわ、綺麗な丸だなあ。今度は中に細かい文字のようなものを描きこみ始めた。これひとつひとつに意味があるんだろうか? じっと見ていると目が痛くなりそうなくらい細かい。


「これって何の魔法が使えるやつなんだ?」

「……アブソリュート・ゼロ」

「あ、それってアレだろ? 出会った時にドラゴンを凍らせたすごい魔法!」


 あれは本当に凄かったな。だって、あんなデカいドラゴンを一瞬で凍らせてしまったんだから。

 俺も魔法、使えるようになりたいなあ。


「レイスはどうしてスクロールを使うんだ? 直接使えばいいのに」

「私は保有魔力量が少ない。直接この魔法を使うと魔力欠乏を起こす」

「スクロールだと大丈夫なのか?」

「何度かに分けて魔力を注いで書き上げるからな。食事前や睡眠前に書くのが好ましい」

「へ〜、すごいなあ。こんなに細かいもの、書くだけでも大変だろうに全部覚えてるんだろ?」

「ああ」


 少しでもズレたら発動しないって言ってたし、相当集中しないとだよな。あれ、俺話しかけてるの邪魔になってるんじゃないか?


「あ、ごめん。話しかけてると邪魔になるよな」

「構わん。好きにしろと言ったからな」

「それは見てていいかって質問への返答だから、話しかけていいかどうかには関係ないと思うけど……でも、ありがとな。勉強になるよ」


 レイスは手を止めると、こちらをチラリと見た。相変わらず感情が読みにくいな。


「見て覚えられると思っているのか」

「え? いやあ、流石に覚えきれるとは思わないけど……でも、こういう風に作るんだなっていうのはわかるからさ。それも勉強になるって言えるんじゃないかなあ」

「……ああ、そうか。それもそうだな、間違ってはいないだろう」


 彼は再び羊皮紙に視線を落とす。何度もインク壺に杖先をつけては書いてを繰り返し、円の四分の一が埋まったあたりで手を止めた。


「今日はここで終わり?」

「ああ。続きは明日だ」

「こんなに作るのに時間がかかる魔法を使わせたのかあ。今思うとなんか悪いなあ」


 レイスは使っていたテーブルセットを折りたたみ、収納鞄に入れていた。やっぱりそこに入ってたんだな。どこでもスクロールを書けるように持ってきたんだろうか。

 レイスはメガネを指先で押さえると、目を閉じた。


「気にするな。目の前で死なれても寝覚が悪いからな」

「レイス……やっぱり優しいなあ。ありがとう、あの時助けてくれて」


 笑ってお礼を言うと、レイスは鼻を鳴らしてケイトの方へ向かっていった。お、料理できたな。俺も行かなきゃ。

 リーファとオリヴィエもちょうど絵本を読み終えたらしい。オリヴィエが目元を指先で拭っていたけど……まさか涙を流したのか? あのいつも微笑んでるオリヴィエが?

 上手い具合に感情を呼び戻してるみたいだ。この調子で彼女が表情も心も豊かになればいいと思う。


 そういえば……スクロールって、鑑定のスクロールしか見たことなかったんだよな。レイスはどうやってあんなすごい魔法のスクロールの作り方を知ったんだろう。

 まさか自分で考えたとか? はは、まさかな。

 ……でも、レイスって魔法の研究してるって言ってたしな。もしかして本当に自分で考えてるのかもしれないよな。


 食べている途中も気になったので、結局食べ終えてから聞いてみた。

 やっぱり自分で考えたらしい。さすが研究してるって言ってるだけあった。

 いつか教えてもらえないかなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ