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ルルパス

 翌朝、俺達はタンドレーと子供達に見送られて旅立つことになった。

 あれからケイトは子供達と仲良くなったようで、子供達にもみくちゃにされながらも笑ってやりかえしている。みんな頭がボサボサになってしまった。

 うんうん、小さいもの同士のじゃれあいはかわいいな。


「それでは皆さん、お気をつけて」

「行ってきます」

「行ってきまーす!」


 小さくお辞儀をするオリヴィエに、大きく手を振るリーファ……って、お前が行ってきますって言うのはなんか違くないか?

 子供達の中から逃げだしたケイトに、子供達が小さな手を大きく振る。


「また来てね、オリヴィエお姉ちゃん!」

「ネズミさんも来てね!」

「オイラはケイト・ラットだい!」

「あははっ、ケイトちゃん人気者だ〜!」


 ケイト達がわちゃわちゃしている姿を見守る。微笑ましいなあ。

 ふと、タンドレーの青い瞳と目が合う。小さく頷いた彼に、俺も頷き返した。お前の娘さんは、俺達がしっかり支えるよ。

 昨晩のことは、リーファにもケイトにもまだ話していない。いや、話すつもりがないというのが正直なところだ。

 だって、こんな重たい話……彼女達には背負わせられない。だから、情報を選んで話すつもりだ。

 感情が希薄なこと、味覚がないこと。この二つだけ、機を見て伝えることにした。


 孤児院を離れた後は、もう一つ行きたい場所があると言われ案内された。オリヴィエが所属していた教会だそうだ。白い壁に緑色の植物がよく映えている綺麗な教会。


「挨拶だけしておこうと思いまして。皆さんは……そうですね、ただ待つのも退屈でしょうから、見学でもしていてください」

「ああ、分かった。中を見させてもらうよ」


 途中まで一緒に行こうということで、中を案内される。たくさんの椅子が用意された、色とりどりのガラスが美しい大きな窓が見える部屋だ。


「ここで待っていてください」


 オリヴィエは少しばかり早足で、しかし淑やかに歩いて行った。すごいな、急いでいても気品がある。

 それにしても……と、大きな窓を見る。これがステンドグラスってやつか。

 描かれた模様は……赤い服の男? 髪にあたる部分が白、赤、水色、緑、黄の五色で構成されている。教会で描かれてる存在なんて、英雄か大賢者のどちらかだろうな。たしか英雄はみんな黒い髪に黒い目だと言っていたから……あれは大賢者か。

 ぼんやりとステンドグラスを眺める。リーファとケイトも壮大な光景を楽しんでいるようだ。


 大賢者……大賢者かあ。ふと皇都で見た像を思い出して、ステンドグラスの配色と重ねてみる。

 真っ赤な服、カラフルな髪……大賢者って、中々奇抜な格好をしてたんだな。髪は染めていたんだろうか?

 ぼんやりしていると結構時間が経っていたみたいで、オリヴィエが帰ってきた。


「お待たせしました。それでは皆さん、出発しましょうか」

「おう」

「退屈でしたか……?」

「いや、いい景色を楽しめたよ」


 リーファとケイトもこくりと頷く。


「教会によって大賢者様の絵って違うんだね! 綺麗だったなあ」

「オイラが見たことあるのとも違かったぞ」


 へえ、教会ごとにステンドグラスって違うのか。凝ってるなあ。

 四人で外に出て、そのまま門まで歩く。


「ここからまた暫く歩いて、次はルルパスって町で休憩だな。一日あれば着くと思うぞ」

「じゃあ急がなくちゃね! 夜になっちゃう前に行かないと!」

「そうだな。でもあまり急ぎすぎて転ぶなよ」

「はあい」


 門を出る時にまた少しやり取りをして、プリュームを離れた。聞けばあの門番も孤児院出身らしい。それでオリヴィエと顔馴染みだったんだな。


「よしっ、出発だ!」




 何度か魔物の襲撃がありながらも、なんとか次の町へ辿り着いた。

 それにしても、本当に魔物って活発化してるんだなあ。特にピュルテ皇国付近に来てから多い気がする。

 門番にギルド証を渡すと、こそっとオススメの宿を教えてくれた。お、ここもいい町か? 期待値が上がるなあ。


「わ、ここもカラフルな町だね」

「やっぱりピュルテ皇国の特色なんだな」


 黄色やオレンジの建物が多い。あちこちから美味しそうな匂いが漂ってくる。

 どうやらここは美食の町と言われているらしい。さっきの門番がそう言っていた。


「もう日も暮れてきたし、早速教えてもらった宿に行こうか」

「そうだね、美食の町っていうくらいだしきっとすっごく美味しいごはんがでてくるよ!」

「楽しみだなあ。研究しないと!」


 ワクワクしている様子の二人を連れて宿に向かう。たしか名前は……クロッシュ。


「ここかな?」


 銀のトレイと蓋が看板に描かれている。綺麗な宿だ。

 中に入れば、にこやかな受付嬢が出迎える。


「ようこそ、クロッシュへ。宿泊ですか? お食事はどうされますか?」

「宿泊で。食事もここでとるよ」

「かしこまりました。お食事は部屋へお持ちします。浴場もありますので、どうぞごゆっくり」


 浴場! 旅の汚れをごっそり落とすいい機会だ。さっそく使わせてもらおう。

 あ、でも俺は後にしておこう。先に女性陣から入ってもらおうかな。ゆっくりしたいし。


「じゃ、俺は部屋で待ってるからさ。三人で先に入っておいでよ」

「うんっ、そうするね! 行こう、ケイトちゃん、オリヴィエさんっ」

「お、オイラはやめておくよ……毛がぺしょぺしょになっちまう」

「え〜? せっかくの機会だよ?」


 リーファに手を繋がれたケイトは、ぐいぐいと引っ張られていく。


「わかった、わかったから引っ張るなああ! オイラひとりで入るから!!」


 さて、俺はのんびり部屋で待ってよう。誰かが呼びにきてくれるだろ……多分。




 ゆっくりと風呂に入って、美味しい料理を食べて、ぐっすり眠る。一人一部屋を広々と使えて、この設備で、良心的なお値段。こりゃそうとう良い宿だ。意外と穴場なのかな? 他の客は見かけなかったけど。

 もったいないなあ、こんな良い宿、もっと人気になっていいと思うんだけど。でも、そのおかげで俺達がゆっくりできてるわけだから、まあいっか。


 なんだか寝足りなくてベッドの上でごろごろ二度寝をかましていた俺は、目を覚ましてから町中を走り回ることになるとは思っていなかった。

 休憩スペースに集まった仲間は二人。あと一人足りない。


「……あれ? リーファはまだ来てないのか?」

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