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英雄像

 衝撃の皇国料理を楽しみ、ふかふかのベッドで休んだ翌日。

 俺達は皇都を観光するべく街を歩いていた。街並みを見ているだけで少し楽しくなってくる。異国の街並みってなんだか面白いな。


「それにしても朝食もすごかったな」


 ケイトが呟く。朝食も三品の料理で、どれもとても美味しいものだった。

 なんか魚と野菜が四角く固められた美味しいやつ。肉と野菜、きのこを(ケイト曰く)生クリームで煮込んだ美味しいやつ。カップに入って出された、茶色い焦げ目がついた黄色くて柔らかい美味しいやつ。


「アタシ、白いスープ……生クリーム? で煮込んだお肉が好きだったなあ。すっごく美味しかった!」

「俺はデザートの黄色くて柔らかいやつ。あれ香ばしくて良い香りがして美味しかったな」


 もう一回食べたいな。うん、決めた。レシピがまとめられた本を買って、ケイトに作ってもらおう。そうしよう。

 俺達の朝食談義をオリヴィエはにこやかに聞いている。


「ねえねえ、オリヴィエさんは? どの料理が一番好き?」

「えっ? ええと……そうですね、今日のものだとテリーヌが見た目鮮やかで好きです」

「テリーヌ?」

「ああ……魚と野菜を四角くまとめて焼いたものです」

「あれかあ!」


 へえ、あれテリーヌっていうんだ。やっぱり皇国の人ってだけあって知ってるんだな。

 道を歩いている途中、本が並んだ店を見つけて足を止める。


「ごめん、ちょっと待ってて」


 店に入って皇国料理のレシピが載った本がないか聞いてみた。店員は少し嫌そうな顔をしたが、ちゃんと見つけてくれた。中々の分厚さの本だ。……値段は、見なかったことにした。

 買った本を持って戻る。皆は不思議そうにしていた。


「何の本を買ってきたの?」

「レシピ本だよ。はい、ケイト」

「えっ、いいのか?」


 ケイトは目を丸くして本を受け取った。まじまじと本を見つめ、ページをめくる。


「ああ。これでまた美味しい料理を作ってくれ」

「もちろんだ! オイラに任せてくれっ!」


 ケイトはウキウキしながらリュックに本を納めた。きっと今日、宿に戻ったら読み込むのだろう。

 さて、本来の目的……フォワクール大聖堂に行こう。広場がすごいってオリヴィエが言ってたからな。どういう風にすごいのか、ぜひ一度見てみたい。

 オリヴィエの案内で街を進む。皇国一の聖堂というだけあって街の中央にあるらしい。


「あそこです」


 とても大きな建物だ。真っ白な壁が眩しい。細かな装飾が壁に施されている。さすが皇国一だな、なんて軽い感想しか出てこないけど……こんなに美しい建物は初めて見た。

 その前の広場には噴水を囲むように七つの白い石像が並んでいる。


「この石像は?」

「大賢者様と英雄様方です」

「へえ……」


 聞けば、リエロス教はかつて世界に平和をもたらした大賢者を神として崇めているらしい。そして英雄は使者として、こちらも相当に敬われているそうだ。

 大賢者と言われる像を見てみる。肩ほどまでの髪、シュッとしたスーツ。にっこりと笑っていて、その瞳は見えない。なんとも優しそうな顔をした人だな。それにとても若く見える。

 大賢者っていうくらいだから、こう……いかにも知識が豊富ですって感じのおじいさんかと思った。


「見て見て! この像、エスカくんに似てるよ!」

「俺に?」


 リーファが見ている像に近づく。うーん、言われてみれば……? 髪型が似ているといえば似ているな。でもその耳は丸い。ここの像、全部イノセンスなんだよな。


「そちらは最後に降臨された英雄様ですね。大体五百年ほど前だそうです。石像は色がないので分かりづらいですが、英雄様は皆黒い髪と瞳を持っていたそうですよ」


 隣にやってきたオリヴィエが説明してくれる。へえ、黒い髪に黒い瞳ねえ。ふと心境ノ鏡館で見た、俺と似たイノセンスの姿が浮かんだ。ズキ、と頭が痛む。

 ……駄目だ、この像を見ていると頭が痛む。噴水の方を見て深く呼吸した。


 リーファとケイトはオリヴィエにいろんな像のことを聞いている。流石リエロス教のシスター、すらすらと説明しているな。

 それにしても英雄、か。大賢者のことといい、俺はこの世界の歴史を全然知らない。記憶を失った時にその辺も全部吹っ飛んだんだろうなあ……世間知らずもいいところだ。


「ありがとう、オリヴィエさんっ!」

「分かりやすかったぞ!」

「お役に立てたようで何よりです」


 どうやら紹介が終わったらしい。石像を見て回ってきた三人に近づく。


「良い場所だな、ここ。空気が澄んでる感じがするよ」

「ふふ、そうでしょう? 何しろここは皇国一の大聖堂。最も神聖な場所ですから」


 オリヴィエはにっこりと微笑んで大聖堂を見上げた。


「あの中には英雄様方を描いた絵画もあるのですが……大聖堂はいつも大勢の人が集まっています。流石に大聖堂で教義に反した言動をする方はいないと思いたいですが……」


 オリヴィエの言いたいことがなんとなく分かった。あのギルドの時のようなことが起こらないか心配なんだな。

 それなら入るのはやめておこう。


「分かった。ありがとう、オリヴィエ。それじゃあ広場の観光はこれくらいにして……いいレストランは知ってる? そろそろ昼食にしよう」

「はい。わたくしもあまり皇都に詳しいわけではありませんが……オススメのお店でしたら人伝いに聞いたことがあります。案内しますよ」


 オリヴィエおすすめの店はいい店だったとだけ言っておこう。

 にしてもピュルテ皇国のレストランってすごい数の料理を出してくるな。七皿出てきたぞ。

 ホテルでの品数は少ない方だったんだな。学びになった一件だった。


 それからぐるっと皇都を回って観光を終えた俺達はホテルに戻って夕食を楽しんだ。綺麗な景色も楽しめたし、料理は美味しかったし、いい息抜きになったな。

 さ、明日からはまたダンジョン巡りだ。頑張らないとな。

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