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探し人

 俺、完全復活。

 ポーション飲んで三日ゆっくりと休んだおかげで、もう痛みも感じない。

 ……というわけで、次に向かうはピュルテ皇国だ。そこには二つダンジョンがある。

 一つは最終目標でもある忘却ノ迷宮。もう一つは心境ノ鏡館というダンジョンだ。俺達が目指すのは後者の方。忘却ノ迷宮に行くにはまだ前提条件を満たしていないからな。


「ピュルテ皇国……どんな所なんだろうな」

「いい場所だといいなぁ」

「だなー」


 ネグロを出てソシエゴ中央街に戻った俺達は、西を目指して歩いていた。この街、やっぱりデカいよなあ。端から端まで行くのに徒歩だとかなりかかる。

 あ、ちなみにポーションは買ったぞ。低級と中級を五つずつ。さすがに高級ポーションは手を出せなかった。高すぎるんだよなあ。一つで十万ピアだって。

 高級ポーションはそれ一つでちぎれた腕だって治るっていうんだからすごいよな。そりゃ高くもなるわけだ。


「ピュルテ皇国っていうとリエロス教の本拠地って聞いたぞ」

「リエロス教かあ、しばらく教会行ってないなあ」

「教会か……」


 村には教会なんてなかったし、行ったこともないな。

 そもそもリエロス教っていうのをよく知らない。知らなくても生きていけたからっていうのが大きい。


「それってどういうものなんだ?」

「唯一公に認められてる宗教だぞ。世界に平和をもたらした始まりの大賢者と歴代の英雄を崇めてるんだ」

「へえ、大賢者と英雄ねえ……」


 そういえば俺、歴史とか全然知らないな。一度調べてみるのもいいかもしれないけど……記憶を取り戻せばその辺りの知識も戻ってくるんだろうか?

 街を歩きながらリーファが何かを思い出そうとするように空を見上げる。


「教会のステンドグラスすごいんだよ。大賢者様の姿が描いてあってね。すっごくキラキラしてるの!」

「ふーん。大賢者ってどんな人?」

「髪の毛がいろんな色でね、赤い服を着てるんだって!」


 なんか随分と奇抜な風貌だな。昔の人だからか? いや、そんなことはないか。やっぱあれか? 偉人って変な人が多かったりするのか?


「オイラも見たことあるぞ。カラフルな髪だった」

「そんなにか? 俺も一回見てみようかな」


 それからは暫くリエロス教の話をしていた。イノセンスと亜人の平等をうたっているらしい。教育支援や保護が実施されてるそうだ。


「まあオイラが聞いた風のウワサだけどな」

「それじゃあピュルテ皇国はきっといい場所だね!」

「平等かあ……そういうところなら、やたらジロジロ見られることもなくなるかな」


 そう思うとなんだか楽しみになってきた。視線が気にならなくなってきたのは本当だけど、ないに越したことはないし。

 街の西側にたどり着いた頃には空が暗くなり始めていた。結構歩いたなあ。

 馬車でも利用すればいいんだろうけど、端から端までって結構かかりそうだしな。歩けばタダだ。疲れはするけど。


「エスカとリーファ?」


 ふと声がかけられて振り返る。ボロボロになった黒髪の獣人がベンチに座って手を振っていた。


「マオ! どうしたんだ、ボロボロじゃないか」

「もしかして、また森に行ってたの?」

「ああ。オレのことはいい。二人はダンジョンに行ったんだよね。あの子を見かけなかった?」


 そうだ、マオは拾ったっていう子供をずっと探してるんだ。白と黒の髪をもった犬系獣人の子供……でも、いままで歩いてきてそれらしい子は見かけていない。

 首を振ると、マオは少し俯いて「そうか」と呟いた。耳もぺたんと寝てしまっている。よっぽど堪えてるらしいな。

 俺とマオを交互に見たケイトが首を傾げる。


「知り合いか?」

「ああ、紹介するよ。ナーダの森で合流して一緒に街まで来たマオだ」

「よろしく」

「オイラは料理人のケイト・ラットだ! よろしく、マオ!」


 獣人同士打ち解けやすいのだろうか? 二人は軽く握手を交わした。

 ……元の動物を考えると天敵じゃないかって思うけど、問題はないだろ。多分。


「アンタ達は今からどこに行くんだ?」

「今日は宿で休んで、明日ナーダの森に行くつもりだ」

「次はピュルテ皇国に行くんだよ!」

「そうか……」


 立ち上がったマオは少し顔を歪めた。足を痛めているのかもしれない。


「オレも連れて行ってくれない? まだナーダの森を調査しきれてないんだ」


 落ち着いてる声だけど少し震えている。平気そうにしてるけど、本当は体が痛いんじゃないか。

 この状態の彼女を連れて行っていいものか……でも連れていけないと言ったら彼女一人で行ってしまいそうだ。そしたらどうなるか分からないな。


「……分かった。それじゃあ明日の朝、七つの鐘が鳴る頃に西門で待ち合わせだ」

「ありがとう。お荷物になるつもりはないから、安心して」


 正直、安心できないな。明日の朝会った時にまだ痛そうにしていたら低級ポーションを渡すか。もし嫌がっても飲ませるんだ。


 と、そういうことでマオとは一旦別れた。今日はゆっくり休むことにしよう。

 今日の宿はそれなりにいい宿だ。料理も美味いし、ベッドもふかふか。ソシエゴ獣王国、いいところだなぁ。

 そろそろ寝ようとしたところで扉がノックされる。


「エスカー、入っていいかー?」

「ああ、今開ける」


 鍵を開けるとケイトが中に入ってきた。高い椅子に飛び乗って座る。


「今日会った、あのマオって子のことなんだけど」

「何か気になることでもあったのか?」

「ああ。あの子も探し人がいるんだろ? その……手伝ってやれないか?」


 ケイトは少しおずおずと言い出した。探し人がいる者同士、思うところがあるらしい。


「その、エスカの目標は大事だし、優先しなくちゃっていうのも分かってる。でも、オイラ放っておけないよ」

「俺もそのつもりだよ。魔物が活性化してるって噂もあるし、あのまま放っておいたら大変なことになりそうだからな。ナーダの森を探すくらいは手伝ってやろうと思ってる」

「ほんとかっ!?」


 顔を上げたケイトの耳がピンと立つ。よっぽど嬉しいんだろうか。


「ああ。だから安心してくれ」

「わかった。ありがとう、エスカ。エスカは優しいな!」

「そうか? ケイトの方が優しいと思うけどな」


 それから少しだけ話をして、別れた。

 さあ、明日にそなえてぐっすり寝よう。一日中森を歩き回ることになりそうだからな。

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