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耐熱薬

 翌日、俺達はギルドの前で待ち合わせをした。ケイトの加入申請のためだ。

 この街のギルドはどんなところなんだろう。今までギルドにいい印象なかったから(主にそこにいる冒険者達のせいだけど)少し不安だな。


 朝の街は少し涼しい。人通りもそこまで多くないな。

 少し小ぢんまりとしたギルドの前でリーファと一緒に待つこと十数分。


「おまたせ、エスカ! リーファ!」


 大きなリュックと、これまた大きな肉切り包丁を背負ったケイトが手を振りながら走ってきた。体に対してリュックが大き過ぎると思うけど、よく転ばないな。


「おはよう、ケイトちゃん! そんなに待ってないよ〜!」

「ああ、おはよう!」

「おはよう。それじゃあ揃ったことだし、早速登録するか」


 ギルドの中も人は少ない。朝一番に来たからだろうか? それでもちらほらと人はいて、やはり獣人が多い。そして俺とリーファをチラッと見ている。

 でも他のギルドと比べるとそこまで気にならないな。少し警戒されてる気もするけど。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」

「パーティ加入の登録をしにきました」

「ではギルド証をお渡しください」


 言われた通りに三人のギルド証を出す。ケイトはカウンターに届かず背伸びしていた。なんかかわいいなあ。

 これでケイトも追憶ノ探求者の一人だ。

 カードを返してもらったところで、ふと気になったことを聞いてみた。


「あの、ダンジョン内で得た物の鑑定ってできますか?」

「鑑定はそちらのスクロールでできます。一枚五百ピアです」


 受付嬢が指した先には箱に入れられたスクロール……魔法陣が描かれた羊皮紙があった。

 たっか。しかも多分一枚につき一回きりだ。

 でもなあ、せっかくの戦利品をそのまま腐らせておくのももったいないしなあ。


「それじゃあ一枚ください」


 五百ピア払って一枚のスクロールを受け取る。あまり他の冒険者もいないし、このままここで使ってしまおう。

 隅の方のテーブルに座って、背負っていた袋から青い石を取り出す。さて、これの正体は何だろなっと。


「あ、それは凍氷石だな」

「ケイト、知ってるのか?」

「ああ。耐熱薬の材料になる石だ。この大きさなら結構な値段で売れると思うぞ? 多分だけどな!」


 へえ、これをねえ。っていうか、これ飲んで大丈夫なんだ? 少量なら平気なのかなあ。


「へえ〜、そういう石だったんだ!」

「ありがとうな、ケイト。おかげでコレを使わずにすんだよ」

「へへっ」


 ケイトは両手を頭の後ろで組んで照れくさそうに笑う。

 せっかく買ったスクロールだけど、出番は暫く後になりそうだ。持ってて損な物でもないし、まあいいだろ。

 しかし、どうしようかな。大きさもそうだし、見た目相応の重さもある……ずっと持ち運ぶわけにもいかないなあ。


「耐熱薬の屋台で買い取ってもらってる冒険者をよく見るぞ」

「それじゃあ売っちゃおうか」

「売っちゃうの? ひんやりしててキレイなのになぁ」

「せっかく初めて見つけた宝箱の中身だし、取っておきたい気持ちは分かるけど……持ち運ぶわけにもいかないからな」

「それじゃあ仕方ないね……分かった、売りに行こう!」


 リーファは納得したようだ。もし小さいサイズだったら記念に残しておいてよかったかもしれないな。

 ギルドを出てダンジョンの方へ向かう。


「そういえば、なんで二人は忘却ノ迷宮を目指すんだ? やっぱり冒険者の憧れみたいなものなのか?」

「エスカくんは記憶喪失なの。だから忘却ノ迷宮を攻略して、記憶を取り戻すんだって!」

「ま、そういうこと。手掛かりになればと思ってな」

「記憶喪失? なんだか大変そうだなあ」


 大変と言えば大変だけど、もう慣れたものだ。それでもやっぱり取り戻せるなら取り戻したい。


「ケイトはお姉さんを探してるんだよな? どんな人なんだ?」

「すっごく料理が上手いんだ。それにすっごく優しい。母ちゃんがやってる小鼠の食卓っていう店で一緒に修行してたんだ」

「小鼠の食卓かあ。ケイトちゃんがいたお店ってことは、きっとすっごく美味しいんだろうなぁ!」


 リーファの言葉に、ケイトの頬が緩む。にんまりと笑ったケイトは、自慢気に胸を張った。


「もちろん! オイラの母ちゃんの料理はすっごく美味しいんだ。ペルシュワールにだって負けないぜっ!」

「それなら灼熱ノ渓谷を攻略し終わったら行ってみようかな」

「……オイラ、姉ちゃんを見つけるまで帰らないって言っちまったんだ。だから行くなら二人だけで行ってくれないか?」


 先程までの得意気な様子とは一転、しょんぼりと肩を落とす。そういうことなら俺達二人だけで行くのも気が引けるな。


「それならお姉さんが見つかってからにするよ」

「いいのか?」

「仲間を置いて美味しいもの食べるなんて申し訳ないからなあ」

「そうだね、みんなで食べた方が美味しいもんっ!」

「……そっか。うん、それじゃあ姉ちゃんが見つかったら皆で小鼠の食卓に行こう!」


 どんなメニューがあるのかを聞きながらダンジョン前まで歩く。そして耐熱薬がある屋台を探して向かった。どうやら決まってダンジョンの入り口近くに出しているらしい。

 屋台の店員は羊の獣人だ。あのもふもふの毛……暑くないんだろうか。


「凍氷石を売りたいんだ」

「わ、これは大物だね〜。このサイズなら……うん、二千ピアでいいよ〜」

「じゃあそれで。それと耐熱薬を……そうだな、九つください」

「は〜い、千八百ピアだよ〜」


 うーん、これも中々の値段だな。一本二百ピアか。

 でも攻略に必須だっていうなら仕方ない。耐熱薬を一人三本ずつに分ける。一本で三十分の効果があるみたいだから、三本で一時間半だ。それだけあれば攻略できるだろう……多分な。


「よし、それじゃあリベンジするぞ!」

「「おー!」」


 三人揃って石の門をくぐる。今度こそ攻略してみせるぞ!

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