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追憶ノ探求者

 翌朝。気づいたら机に突っ伏して寝ていた俺は、無事に体をバキバキに痛めた。首を回すとボキボキと音がする。


「ご、ごめんね、エスカくん! アタシ、安心したら眠たくなっちゃって……!」

「いいよ、俺がやりたくてやったことだし」

「アタシの部屋で寝てくれたらよかったのに……」

「いやー、それはそうなんだけどさ。少し外を眺めてたらいつの間にか寝ちゃってて」


 たはは、と笑いながら頭を掻く。

 さて、今日の朝食は何かな。階段を降りながら、漂ってくる美味しそうな匂いに胸が躍る。ここの料理は美味かったから楽しみだな。

 リーファはすっかり元通りで、今日も元気いっぱいだ。テーブルにつくなり、用意されたパンを口いっぱいに頬張っている。


「おいひー!」

「いいパンだな。ふかふかしてる」


 焼きたてなのだろう。ふわふわの白パンはほんのり温かい。

 肉たっぷりのシチューと一緒に食べると尚更おいしく感じる。あー、幸せだ。味があるって素晴らしい!

 村に拾われてすぐの頃は味覚がなかったんだよなあ。でも今はこんなに食事を楽しめる。


「あ、そうだ。昨日渡し損ねてたんだけどさ」

「うん? なになに?」

「魔導論理学の本をダンジョンで拾ったんだよ。初級だし、リーファにピッタリだと思ってさ」

「えっ、本……?」


 リーファの顔が少しひきつる。


「うう……本はあまり読めないの。あんなに文字がぎっちぎちなの、頭が痛くなっちゃうよ。ただでさえ文字を読むのニガテだから」

「……そうか」

「ごめんね、アタシあまり頭よくないの」


 しゅんとしてしまった。しまった、そんな顔させたかったわけじゃないのに。


「大丈夫だよ。なんだったら俺が読んで教えるっていうのもアリだしさ」

「えっ、いいの?」

「まあ俺の勉強にもなるしな。実は魔法って少し憧れがあるんだ。もし使えるようになるなら願ったり叶ったりだよ」


 リーファの顔が明るくなってホッとする。もう彼女の涙は見たくないな……喜びの涙なら別だけど。


「ありがとう、エスカくんっ! アタシがんばるね!」

「ああ、一緒に頑張ろう。でもその前に、これを食べたらまずギルドに行かなくちゃな」

「ギルド?」

「ああ。パーティの正式な申請をしなきゃだろ?」

「あ、そっか! そういえばそうだったね!」


 ただ、問題は名前をどうするかなんだよなあ。名前なくても申請ってできるのかな。でもせっかくならカッコイイ名前をつけたいよなあ。


「それで……パーティ名なんだけど、どうする?」

「ん〜……あっ、そうだ! ダンジョンクリアし隊なんてどうかなっ?」

「えっ、あっ、う〜ん……他の案がいいかな、うん」

「じゃあ、弓と魔法のピカピカ隊! エスカくんの矢もアタシの炎も光ってるでしょ?」


 だめだ、リーファらしいといえばらしいけど少し恥ずかしい。っていうかなんで隊にこだわるんだ?

 とはいっても、俺もいい案が浮かぶわけじゃないからなあ。


「それも素敵な名前だと思うけど、まずこのチームの目的から考えよう」

「チームの目的?」

「一応、俺は記憶を取り戻すためにダンジョンを攻略してるんだ。そこから名付けるのはどうだ? ……っていうか、リーファには俺の目的に付き合わせることになるけど、そこは大丈夫か?」

「うん、いいよ!」


 思っていたよりすぐに返事が返ってきた。それもハッキリと。


「嬉しいけど、無理はしなくていいからな」

「アタシね、エスカくんが受け入れてくれたこと、すっごく嬉しかったの! だから記憶を取り戻すのをお手伝いしたいなって思うんだ」


 リーファは肘をついた両手に顔を乗せてニコニコと笑っている。手伝いがしたいとまで言ってくれるなんて……ありがたいなあ。


「それじゃあ記憶を取り戻すっていうところから名前をつけよう」

「記憶……記憶? うーん、記憶を探す……探求する?」

「記憶、思い出、追憶……追憶ノ探求者?」


 ぽつりと呟いた言葉に、リーファはガタンと立ち上がった。


「すっごくカッコイイ! それにしようよ、エスカくんっ!」

「そ、そうかな? それじゃあこれにしようか。俺達のパーティ名は『追憶ノ探求者』だ」


 パーティ名が決まって朝食も終えたことだし、さっそくギルドに行こう。……せっかく考えた名前だし、他のパーティと被ってなければいいなあ。


 そんなわけでギルドに向かったわけだけど、やっぱりここでも入った途端に視線が集まる。そろそろ慣れてきたけど、リーファはどうなんだろう。

 ちらりと隣を見る。リーファもこの視線には慣れてるみたいだ。そういえば他のパーティに入れてもらったりする内に目立ってたって言ってたな。それでか。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」

「パーティの登録をお願いします」

「はい、かしこまりました。ギルド証をお渡しください」


 俺とリーファそれぞれのギルド証を渡す。


「パーティ名はお決まりですか?」

「『追憶ノ探求者』でお願いっ!」

「では、そのように登録させていただきます」


 受付嬢はギルド証を魔道具に通し、何やら操作する。返却されたギルド証には名前の下に新たな行が追加されていた。


「ご確認ください」


 ギルド証に書かれたパーティ名は『追憶ノ探求者』……間違いない。


「はい、大丈夫です」

「メンバーの加入、脱退があれば都度更新をお願いいたします」


 加入かあ。増える気はしないけどなあ。

 でもいつか入ってもいいって言ってくれる人と会えるかもしれないし、気に留めておこう。


「さて、パーティの申請も終わったし……これからどうする?」

「うーん、次のダンジョンを目指すとか?」

「やっぱりそれがいいかな。うん、そうしよう」


 この街にきてまだ二日目だけど、移動するにも時間はかかるしな。

 よし、思い立ったが吉日だ。昼前には出立しよう。

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