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(13)




 ジェドとビクターは、表面が溶け出すブロックに暫し呆気に取られていると、その女性が木製バケツを突き出した。

見慣れたそれはおそらく、手製のものだろう。




「随分な騒ぎね……

呼ばれてると思って来たけど……」



「………もしかして、あんたがライリー?」




しかし彼女は、ビクターの問い掛けに応じないまま去ってしまう。

2人は、彼女の膝下まである丈夫そうな履物にもまた、目を奪われた。




「これじゃ足りねぇんだ。その子、人魚なんだ」




彼女は足を止め、表情だけで驚くも何も言わない。

そしてふと、近くに転がる別のタンクを拾い上げると静かに差し出した。




「俺達の仲間の足、治してくれないか?」



「足を縫うって、んな事できんのか?

布じゃねぇのに」




ビクターとジェドは言いながら、寡黙な彼女の後を追う。




 フィオ程ではないが、同じ長い黒髪をしており、一纏めに上げて留めている。

何だか脆いロープで肩から荷物を提げているが、何が入っているのだろう。

薄汚れた瓶を手にしており、中には透明の液体が揺れている。




 静かに進む最中、3人は視界に飛び込んだ光の輪を観測した。

じわじわと白銀の布のような幕を見せながら浮上していくそれに合わせ、空を仰ぐ。

シャンディアの魔法だと呟くビクターの横で、ジェドは浜に踵を返した。




「壁を張ってるなら安全だろ。これに汲んでくる」




挿絵(By みてみん)




 その場は暫し、奇妙な女性とビクターだけになる。




「……随分な怪我をしたのね」



「人魚の爪で引っかかれた。

毒があったけど、それはどうにか抜けた」



「……不思議な事を言うわね……消毒は……」



モグワートで凌いでる。どうにかできるか?」



「……まぁ……でも、条件がある……」




のろのろと重い声で言われた最後の言葉に、ビクターの足がつい止まった。

何か欲しいのだろうかと考えるが、見合うようなものなんて持っていない。






 早くも後方から、忙しないジェドの足音がした。

渡されたタンクは容量が大きく、ビクターは運搬に手を貸す。




 先々進む彼女との距離が自然に開いていく。

1歩踏み込む度に感じる凹凸の感触。

白や灰色の砕けたブロックの他、ペコペコと音がする容器も沢山あるが、ここは一体どういう地なのか。

白く細かい砂塵が舞い続ける不思議な地面。

浜の砂ではない事は分かる。

2人はどうも、この島に美しいという印象を抱けなかった。




 前を進む彼女は、辺りで起きる現象にずっと目を奪われている。

鏡の帳は下りたのだろうが、外側との境界は一切捉えられない。




「なぁ、条件ってなんだ?お医者さん。薬草か?」




ビクターは、背中を向けたままの昏い彼女に問う。

何の事かと疑問を浮かべるジェドだが、黙って返答を待った。




「……いいえ……あと……私は医者じゃない……」








蓬:よもぎ(英:モグワート)です

怪我したら ばあちゃんによく擦りつけられました



代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


9月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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