(14)
ジェドとビクターは眉を顰める。
スタンリーが言っていた通りの事を、彼女はそのまま口にした。
先程からずっと、目も合わせようとしない。
シャンディアの魔法には驚いていたようだが、他の大人と違って寡黙で、感情が見えない。
進む度に舞う塵のようなものが、途中の篝火を僅かに受けて瞬いている。
先を見れば、間もなく皆が集まる中央の建屋に到着する頃だ。
そこではフィオとシェナが、こちらに気付いて手を振っている。
2人はジェドとビクターが追いつくよりも先に、目前まで来た昏い女性を凝視する。
シェナは無言でじっくり目を這わせた。
髪で顔があまり見えず、表情が分からない不気味な容姿に、少々身を引いてしまう。
まじまじと見られる事には慣れたものか。
彼女はシェナを一切気にせず真っ直ぐ突っ切ると、コンクリートの建屋に消える。
壁の亀裂が目立つそこは、この島で最も大きく、ほとんどの柱が頑丈に保たれているようだ。
後にグレンとカイルが、シャンディアを抱えて合流する。
彼女は鏡の帳を下ろすなり、歩行困難に陥っていた。
ジェドとビクターは、汲んできた海水を手で掬い、急いで湿らせてやる。
屋内では火が隅々に置かれ、煌々と揺れていた。
レックスは支えられて漸く、ベンチに腰を下ろす。
大人達は、互いの容姿や島の違いを口々に話し続けていたが、その勢いはまるで水が溢れる程だ。
普段とはまた違う騒々しさを見せる大人達に、4人は穴が開くほど見入ってしまう。
「おお来たか!頼む、見てやってくれ」
スタンリーは、例の彼女を見るなり表情を明るくさせた。
彼女に皆の視線が集まるも、やはり一言も放たない。
「お医者さん?」
フィオがジェドとビクターに訊ねても、2人は間を空けてから首を横に振る。
何せ彼女は、医者ではないと言ったのだから。
彼女が灯の傍までくると、姿がより明確になる。
長い真っ黒な羽織は、白い砂埃で汚れていた。
ジェドはそれを見て、ここへ来るまでに舞っていた埃のようなものと重ねる。
人集りの前の方まで移動したビクターは、彼女の横顔を覗いた。
医者ではない医者は、どうしてそんなに元気がなく、具合が悪そうにしているのか。
「なんか不思議な人。でも凄いんでしょ?」
シェナもまたビクターの傍に寄ると、興味津々で彼女を見上げる。
細身で背が高い彼女の肌にも、自分達と同じように、誰しもにある島暮らしなりの汚れやくすみがある。
しかし比較的綺麗な色白で、滑らかな頬や手に、つい触れてみたくなるのをどうにか抑えた。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
9月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




