(5)
「おーい、わしじゃ! 帰ったぞー!」
スタンリーの叫びに振り向く人々は声を失い、青褪める。
嗄れ声で張り上げる彼が間違いなく仲間だと気付いているようだが、返答は予想外だ。
「おいおいどうなってやがる……幽霊だ!」
騒ぎが増し、南の人々は姿を消してしまう。
訪れた東の者達は、出方に苦しむ一方だった。
「じいさん。あんた死んだと思われてんぞ」
マージェスの発言に、スタンリーは船縁から身を乗り出す。
「失礼な!
何をすっとぼけとるんじゃあいつ等は!」
しかし勘違いもするだろう。
彼は行方不明になった親子を探すべく、たった1人でボートで沖へ出たきり、今まで不在にしていた。
仲間は彼までいなくなった事に身の危険を案じ、捜査に出るのを躊躇っていた。
そこへ海賊と思しき船に本人の影まで現れ、困惑している。
気を取られている場合ではないと、漁師達が碇を下ろす支度にかかる。
ジェドは忙しなく海を覗き込んだ。
その様子から3人は察する。
またそれを追うように、シャンディアが島の奥に眼を剥いた。
「離れて!」
海にとにかく近付くなと人々に叫ぶ彼女が捉える先には、呪われた人魚。
匍匐前進し、身を高く跳ね上げながら人々に喰いつこうとしている。
救助の叫びに、東の者達はいても立ってもいられない。
「先に行く!」
陸に飛び移るのに十分な距離だと見越したカイルは、係留ロープを手に船縁に登る。
それを見たグレンも続こうとする横で、真っ先に船縁をロープも無しに軽快に飛び下りたのは
「ジェド気を付けろ!シャンディアの仲間だ!」
レックスが先行するジェドの背に放つ。
ビクターは追いつこうとロープを引くと、シェナが引き抜いた槍を咥えて同行しようとする。
彼はその腕を慌てて掴んだ。
「ここにいろ!」
「あたしも行く!」
「フィオといろ!シャンディアだけじゃマズい!」
シェナは激しく肩を掴まれると、怒号に身震いする。
「あいつ等も隙を狙う。
襲われる前に、お前があん時みたいにぶっ飛ばせ!」
そう言い残すとビクターは、ロープで船体の真ん中まで下降し、2度目の反動で着地。
そのままカイルとグレンと共に、島の奥へ消えてしまう。
シェナは暫し目を尖らせて先行する彼等を見送っては、今は任せるべきだと切り替えた。
マージェスと共に、残る仲間を下の階へ誘導していく。
船体の横扉から出るつもりだが、先に出るのは自分だと、施錠を速やかに解く。
真下から人魚の襲撃がこようものなら、槍で引っ叩いて大声を放ってやる。
ビクターが意味するのは空島に着いた時だ。
呪われた女王リヴィアに襲われる直前、突風で彼女を宙返りさせ、攻撃を阻止した。
次も引き起こせるかもしれない。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
9月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




