(4)
その時、シャンディアが皆の間を割って出るや否や、慌ただしく辺りを見渡す。
これまで感じなかった妙な気配がしてならない。
力の衰えから、感知の鈍さに焦る。
震える肩に、誰かが触れた。
振り返ると、フィオが接近する陸と海を目だけで往復する。
そして、シャンディアの代わりを務めるように、恐れていた長く目を閉じる事を試した。
瞼の奥に、徐々に水が揺れるような感覚を得る。
これは空島で、城とその場所が浮かんだ時や、人魚に襲撃される直前に影を見た時と同じ現象だ。
何か映らないだろうかと心で願いながら、闇の中で景色を探し続ける。
すると、黒く蠢くものを捉えた。
それは振動をもたらし、目を擽る。
フィオの動揺に震える息は、一気に手まで伝わる。
押し寄せる恐怖は波のように瞼を打つと、目を大きく見開いた。
「影よシャンディア!漁船を襲った時と同じ!」
周囲は咄嗟に船の真下を覗くが、どこにも人魚はいない。
「あそこ!」
フィオは、直ぐそこまで接近する南の陸を指差した。
そこから騒ぎ声が立ち始めたかと思うと、覆い被さるように人の甲高い悲鳴が聞こえる。
「まさか陸に上がってるんじゃ!?」
フィオは更に状況を見ようとするが、もう何も捉えられなかった。
漁師達は船を停める準備に取りかかる。
辿り着いた船着場はコンクリートで、そこには点々と細長く立つ篝火が、住処が集まるであろう奥まで並んでいる。
その灯によって、木々や崩れたブロック塀などが垣間見えた。
崩落した建屋の間から、数名が船着場に向かって叫び声を上げながら逃げて来る。
だが、突然視界に飛び込んだ見た事もない船に彼等は足を止め、半ば体を仰け反らせては仰天し
「か、海賊だ!戻れ!来るな!」
後から駆けて来る仲間達に引き返すよう放つではないか。
人々は、民家が集まる奥で勃発する異常事態から逃げて来たというのに、一斉に引き返してしまう。
悲鳴は更に飛び交い、物陰に隠れながら用心する者や、松明を雑に振る者が相次いだ。
「待て、違う!戻って来い!」
グレンが咄嗟に呼び止めようとする傍ら、スタンリーが前のめりになり、落ち着くよう仲間に叫んだ。
しかし、そう直ぐに誤解は解けない。
「やれやれ……お前さん達最近、自分の姿やこの船が浮かぶところを見たか?
言ったろう、どう見ても海賊なんじゃよ」
「ちげぇ!」
ジェドが食ってかかる。
そのおとぎ話なら知っていた。
そんな良い者達ばかりではない彼等と同じにされるなど、言語道断である。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
9月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




